中学合唱曲としておなじみの「カリブ 夢の旅」を解説
合唱曲『カリブ 夢の旅』は、多くの中学校の合唱曲や唱歌を手がけてきた作詞家の平野祐香里と作曲家の橋本祥路が制作し、1989年に発表されました。
タイトルに「カリブ」とあることからも分かる通り、楽曲の舞台はカリブ海です。
トレジャーハンターの少年を主人公に、冒険の旅へと想いを馳せる歌となっています。
前半はゆっくりとしたテンポの穏やかなメロディですが、後半はテンポの速い明るいメロディに切り替わり、船乗りの気持ちの高まりを感じられる点が印象的です。
どのような想いを歌っているのか、歌詞の意味を考察していきましょう。
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カリブに眠る夢たち
目を覚ませ 時が来た
永遠の眠りの中 きらめくエメラルド
僕は行く 何よりも
君の夢 見つけたい
ときめく冒険の旅 夢の海へ
≪カリブ 夢の旅 歌詞より抜粋≫
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カリブ海と聞くと、海賊をイメージする方は多いのではないでしょうか?
実際に16世紀頃からカリブ海には海賊が現れ、船や島を襲撃して莫大な富を得ていました。
「カリブに眠る夢たち」というフレーズは、そんな海賊たちが得てきた夢のような財宝のことを指しているのでしょう。
当時の海賊たちが「永遠の眠り」についた今、海の底にはきっと目を見張るような財宝が眠っていて、誰かに発見される瞬間を待っているに違いありません。
「きらめくエメラルド」という言葉は、エメラルドグリーンに輝く海を見た少年が、その宝石のようなきらめきから本当のエメラルドがそこにあるのではないかと期待している気持ちを表していると解釈できます。
そして少年は「君の夢 見つけたい」と歌っていて、誰かの夢のために冒険に出かけようとしていることが窺えます。
夢への熱い想いを持って旅に出る
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カリブの島の夢たち
目を覚ませ 時が来た
夕陽浴び燃える海に 輝くエメラルド
僕は行く 何よりも
僕の夢 見つけたい
果てない冒険の旅 夢の海へ
≪カリブ 夢の旅 歌詞より抜粋≫
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海の向こうにはカリブの島が見えているのでしょう。
カリブ海にいた海賊たちは、18世紀初めにヨーロッパや北アメリカの国々が海賊に対する戦争を始めた頃を境に消えていきました。
それから長い時を経た20世紀、少年はかつての海賊たちの姿に想いを馳せながら「目を覚ませ」と呼びかけています。
誰にも見つからないまま眠ってしまった「カリブの島の夢たち」を自分が見つけるのだという熱い想いが感じられますね。
少年には「夕日浴び燃える海」の中に、すでに「輝くエメラルド」が見えているかのようです。
「果てない冒険の旅」はどのようなものになるか分かりません。
それでも少年は「何よりも僕の夢 見つけたい」と強く願っています。
夢のために躊躇わず行動しようとする純粋で力強い姿に、子どもだけでなく大人も心を奮い立たされるのではないでしょうか。
キャプテンキッドの夢を目指して
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キャプテン キッド
君の夢を つかまえに僕は行くさ
キャプテン キッド
待っていろよ 果てしなく青い空
キャプテン キッド
聞こえるのか 僕の声君に届け
キャプテン キッド
君のもとへ 船出する青い空
≪カリブ 夢の旅 歌詞より抜粋≫
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「キャプテンキッド」とは、17世紀末に実在した海賊の船長ウィリアム・キッドの別名として知られています。
彼は乗組員の裏切りによって政府に捕らえられ絞首刑となってしまいましたが、死の間際に「自分はある場所に財宝を隠している」と叫びました。
しかしその場所を明かそうとしたところで命が尽きてしまい、真相は不明です。
ちなみに“日本最後の秘境”といわれる鹿児島のトカラ列島の宝島が財宝の在り処だとされ、かつて国内外から多くの探検家や賞金稼ぎが訪れたそうです。
しかし、世界のどこでもまだキャプテンキッドの財宝は見つかっていません。
このことから、主人公はキャプテンキッドの伝説を知り、彼の財宝を見つけるために旅に出ようとしていることがわかります。
「君の夢をつかまえに僕は行くさ」という表現にも、その点がはっきりと表れていますね。
財宝の在り処を告げようとしたということは、キャプテンキッドは誰かに財宝を見つけてほしいと思っていたのかもしれません。
少年はその気持ちを汲み、「キャプテンキッド 待っていろよ」と威勢よく呼びかけています。
「僕の声君に届け」や「君のもとへ船出する」のフレーズを見ると、財宝がある場所にキャプテンキッドがいると考えていることが読み取れます。
つまり少年はただ財宝を見つけようとしているのではなく、志半ばで亡くなってしまったキャプテンキッドの心そのものを掬い上げるために旅立つのです。
夢を追う素晴らしさを教えてくれる!
合唱曲の『カリブ 夢の旅』の歌詞には、トレジャーハンターの少年がどこかで眠り続けるキャプテンキッドの財宝を目指して旅を始める様子が綴られていました。どんな夢を持っているにしても、困難を物ともせず強い想いで進んで行くことが大切だというメッセージが伝わってきます。
伸びやかな音楽のリズムに乗りながら、自分自身の夢へ向けた明るい気持ちを持って歌いたい楽曲です。