牧場の民謡でなぜすいかがモチーフに?
暑い夏といえば、水分をたっぷりと含んだジューシーなすいかが美味しい季節ですよね。
すいかの曲と聞いてまず思い浮かぶのは、童謡の『すいかのめいさんち』ではないでしょうか。
明るくポップなメロディが楽しい雰囲気の『すいかのめいさんち』は、元々はアメリカの民謡『ゆかいな牧場(Old MacDonald Had a Farm:マクドナルド爺さんの牧場)』が原曲です。
『ゆかいな牧場』の歌詞を見ると、マクドナルド爺さんの牧場で動物たちが飼われている様子とその鳴き声が聞こえてくるだけのシンプルな構成であることが分かります。
このメロディを用いて『すいかのめいさんち』を作ったのは、作詞家で『メリーさんのひつじ』や『ロンドン橋』など欧米の民謡の訳詞も多く手がけた高田三九三です。
原曲は牧場が舞台になっていてすいかが登場しない点を考えると、上坂茂男から作詞の依頼を受けた高田三九三のオリジナルのアイディアだったのかもしれません。
しかし、なぜすいかがモチーフだったのか、またすいかの名産地がどこのことなのかは不明です。
また、高田三九三が訳詞をしたほかの童謡は原曲に忠実だったことから、実はアメリカのどこかの地域で『ゆかいな牧場』のメロディですいかについて歌った替え歌が流行っていて、その歌詞を訳詞したとも考えられます。
真相は分かりませんが、このように解釈すると突然すいかがモチーフに使われたことにも納得できる気がします。
では、ここからは短い歌詞の意味を考察していきましょう。
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ともだちができた すいかの名産地
なかよしこよし すいかの名産地
≪すいかのめいさんち 歌詞より抜粋≫
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冒頭の歌詞を見ると、主人公は「すいかのめいさんち」で「ともだちができた」と歌っています。
この点に注目してみれば、主人公は別の街からすいかの名産地として知られる地域に引っ越してきたと解釈できそうです。
のどかなすいか畑が広がる景色の中、新しくできた友達と一緒に仲良く遊んでいる様子が伝わってきます。
五月に挙げられた幸せな結婚式
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五月のある日 すいかの名産地
結婚式をあげよう すいかの名産地
≪すいかのめいさんち 歌詞より抜粋≫
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続く歌詞では、「五月のある日」に結婚式が挙げられようとしている場面が描写されています。
本格的なすいかの収穫が始まる前の比較的ゆったりとした時期に結婚式を挙げるために、5月を選んだのかもしれません。
これは誰の結婚式なのでしょうか?
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とんもろこしの花婿 すいかの名産地
小麦の花嫁 すいかの名産地
≪すいかのめいさんち 歌詞より抜粋≫
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この歌詞によると、「とんもろこしの花婿」と「小麦の花嫁」の結婚式だと分かりますね。
同じく農作物であるという点を除いて、すいかとは関係のないものが出てくるところがユニークです。
さらに、作物が擬人化されているファンタジックなストーリーとなっているのも面白いですよね。
すいか畑の向こうで賑やかに開かれる幸せいっぱいの結婚式の様子を想像すると、楽しい気分になるでしょう。
すいかの名産地はすてきなところよ
ここまで取り上げた歌詞に続いて毎回繰り返されているのが、次の歌詞です。
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すいかの名産地 すてきなところよ
きれいなあの娘の晴れ姿 すいかの名産地
≪すいかのめいさんち 歌詞より抜粋≫
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この楽曲で最も大切なのは、すいかの名産地が「すてきなところ」というメッセージだと考えられます。
自分の住んでいる地域が素敵な場所だと感じられるのは素晴らしいことです。
主人公は友達ができたり幸せな結婚式を見たりして、この地域は「すてきなところ」と感じ誰かに知らせたいと思ったのではないでしょうか。
次の歌詞では「きれいなあの娘の晴れ姿」という言葉が出てきます。
晴れ姿というと、特別なイベントのときに身に纏う晴れやかな装いのこととイメージできます。
主人公は少年だと考えられるため、ここで出てくる「あの娘」も同じくらいの年齢の少女と解釈できるでしょう。
中盤で結婚式の場面があったことをふまえると、結婚式に参列した際に憧れの少女の晴れ着姿に釘付けになったことを示していると考えられそうです。
もしくは、その地で一緒に年を重ねていく少女が人生の節目ごとに見せる晴れ着姿に感動を覚えながらも、遠くで見つめるだけのじれったく淡い恋心が暗に表現されているという考察もできます。
実際のところは分かりませんが、このように深掘りしてみると楽曲に描かれた世界の奥行きが感じられますね。
自由な発想で楽しもう!
童謡『すいかのめいさんち』は不明な点が多いものの、その楽しいメロディと分かりやすい歌詞で手遊び歌やフォークダンスの曲として長年親しまれてきました。大切なのは真相に辿り着くことよりも、聴き手が自由な発想で解釈し楽曲を楽しむことといえます。
夏にはすいかを食べながら、すいか畑の風景を想像して歌ってみてくださいね。