井上陽水と安全地帯が織り成すハーモニー
『夏の終わりのハーモニー』は、1986年に神宮球場初の音楽イベントとして行われた、井上陽水と安全地帯のジョイント・コンサート「STARDUST RENDEZ-VOUS」のために書き下ろされた楽曲です。1981年に安全地帯が井上陽水のツアーでバックバンドを務めて以来、井上陽水が『ワインレッドの心』を提供したり『恋の予感』を共作したりと、音楽的交流を深めてきた2組。
互いに大きな脚光を浴びる存在となった彼らの、ビッグイベントのエンディングを飾ったのが『夏の終わりのハーモニー』でした。
しっとりと美しく流れるメロディに、井上陽水と玉置浩二の美声が織り成すハーモニーが重なり、充実感と寂しさを表現する歌詞とともに、まさに夏の終わりにぴったりの名曲として愛され続けています。
どのような想いを綴っているのか、さっそく歌詞の意味を考察していきましょう。
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今日のささやきと
昨日の争う声が
二人だけの恋のハーモニー
≪夏の終りのハーモニー 歌詞より抜粋≫
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冒頭の歌詞を見ると、「今日のささやきと昨日の争う声」という対照的な様子が取り上げられています。
主人公たちは恋人同士で、今日は寄り添い甘く囁き合っているのでしょう。
しかし、昨日は言い争ってしまったこともはっきりと覚えています。
愛し合う二人でも、いつも楽しく過ごせるわけではなく、時には気持ちがすれ違ったりぶつかったりすることも。
それでも、良いときも悪いときもあるからこそ「二人だけの恋のハーモニー」となって人生を彩っているのだ、という幸せなイメージが伝わってきますね。
誰よりもあなたが好き
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夢もあこがれも
どこか違ってるけど
それが僕と君のハーモニー
≪夏の終りのハーモニー 歌詞より抜粋≫
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「夢もあこがれもどこか違ってる」二人。
似通った部分が多いほど関係はうまくいくようにも思えますが、違う部分があるからこそ愛おしく感じ支え合えるのではないでしょうか。
互いの違いを認め合いながら暮らしていく、日常の温かさが感じられますね。
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夜空をたださまようだけ
誰よりもあなたが好きだから
ステキな夢あこがれを
いつまでも ずっと 忘れずに
≪夏の終りのハーモニー 歌詞より抜粋≫
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サビの歌詞にも、深く純粋な愛が綴られています。
「夜空をたださまようだけ」という表現から、夜空を黙ったまま眺める二人が見えてくる気がします。
夜空の優しい光に身を任せるように、何をするでもなく寄り添って互いの愛を感じているのでしょう。
それだけで幸せを感じられるのは「誰よりもあなたが好きだから」です。
二人で星に願った「ステキな夢 あこがれを いつまでもずっと忘れずに」大切にしていきたいという想いが読み取れます。
恋の終わりに響くハーモニー
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今夜のお別れに
最後の二人の歌は
夏の夜を飾るハーモニー
≪夏の終りのハーモニー 歌詞より抜粋≫
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2番の歌詞では「今夜のお別れ」とあることから、幸せに満ちていたはずの二人に別れが訪れたと解釈できます。
ここまでの歌詞でお互いに交わした会話を「ハーモニー」と表現していることから、「最後の二人の歌」のフレーズは別れの際の会話を指しているのでしょう。
二人の間でどのような会話が交わされたのかは分かりません。
それでも「夏の夜を飾るハーモニー」とあるように、どんな内容であったとしても、彼らにとっては大切で意味のある会話だったと考えられます。
その時間は、切なくも美しい響きとなって心の中に残り続けています。
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夜空をたださまようだけ
星屑のあいだをゆれながら
二人の夢 あこがれを
いつまでも ずっと 想い出に
真夏の夢 あこがれを
いつまでも ずっと 忘れずに
≪夏の終りのハーモニー 歌詞より抜粋≫
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2番のサビの始まりも1番と同じですが、このシーンは主人公が一人で夜空を眺めているところと考察できそうです。
「星屑のあいだ」を揺れるように、これまで二人で築いてきた無数の思い出に心をはせます。
幸せに身を任せていたあの時とは違い、今は哀しみに身を任せています。
語り合った「二人の夢 あこがれ」は「いつまでもずっと想い出に」なり、心のどこかに大切に仕舞われるのでしょう。
真夏のように情熱が燃え上がっていた二人の時間は終わり、秋のようにしんみりとした独りきりの時間がやってきます。
別れたからといって、そのかけがえのない記憶まで忘れてしまう必要はありません。
別れの哀しさを抱きながらも、恋の幸せを感じられた満足感や感謝の気持ちも示されているのではないでしょうか。
夏の終わりに聴きたい名曲!
井上陽水と安全地帯の『夏の終わりのハーモニー』は、夏の明るく楽しい雰囲気と終わっていく寂しさを恋に重ねた繊細なラブソングです。失恋だけにスポットを当てるのではなく恋の幸せと難しさの両面を描くことで、切ないながらも恋の美しさや尊さが胸に残る楽曲となっています。
夏の終わりに夜空を眺めながら、素敵なハーモニーをじっくりと楽しんではいかがでしょうか。