楽しくに自由に
──2021年のメジャーデビューから3年が経過しました。にしなさんにとってこの3年間はどんな時間になっていますか?
にしな:右も左も分からない中、最初はやっていて。自分の中で色々と模索する部分もありつつ、分からないながらにやっていくうちにどんどん楽しいなっていう気持ちが増えてきて! ここ最近はより自由にやれている気がします。楽しく自由にという感じですね。
──その自由さは楽曲から伝わってきますね。リリースするたびに自由度が増している感じ。
にしな:ありがとうございます(笑)。
──でも、めちゃくちゃコンスタントに楽曲をリリースし続けていますけど、改めてアイデアの源泉はどういったところになるんでしょう。
にしな:私自身、「出来ない!」というタイミングと「意外と出来る!」というタイミングに差があって。リリースに関しては周りの方々がうまく調整してくれているからコンスタントに続いていると思うんですけど……。
曲を作るときのアイデアは「このワード可愛い」みたいなお気に入りのワードから背景を想像したり調べたりして、芋づる式じゃないですけどストーリーを作っていったりとか、あとは人とのコミュニケーションの中だったり、それこそ作品を観て、「これだったらこういう曲かな」と作ってみたりとかしていますね。
──では、どちらかというと言葉や感情から曲が生まれることが多い?
にしな:多いですね。もちろんギターを弾いてメロから制作することもあるんですけど、その時も歌詞の種があった方が作りやすい気がしますね。
──3年間でマインドの変化や制作活動においての変化はありましたか?
にしな:今も考えますけど、3年前の方がより何を求められるのかとか、他者から視点を強く考えていたような気がしていて。それが3年経った今は自分がコレをやりたいからやる、この曲が楽しいからやるといった感じで、自分視点で作品を作るようになったんじゃないかな〜という気がしていますね。
──他者視点から自分視点に変わった分岐点はどの辺りなんですか?
にしな:はっきりとした分岐点はないんですけど、悩んだ時期が無自覚の中であって。「どうしたらいいんだろう」、「何を作ったらいいか分からないな」と思っている時ってどうしてもダウナーになりすぎる曲ができたりするんですけど、それよりは自分が楽しんで曲が作れた方が楽曲に好影響ですし、楽しんでいる人間がいちばん素敵かなみたいな(笑)。そういう風に思えたのかなと思います。
──無自覚であるんですね。意識的にどうというわけではない。
にしな:そうですね。落ち込んだからこれからはというはっきりした意識はなくて。流れ、流れで進んでいって気付いたらという感じでしたね。
表現の角度が拡張している
──UtaTenは歌詞を扱うサイトなので、改めてにしなさんに作詞についてもお聞きしていきたいんですけど、普段はどのように言葉を選んでいかれるんですか?
にしな:自分が歌いながら、なんとなく想像する「こういう世界観かな?」というものによって、選んでいくワードは変わってきてて。それこそ、「ねこぜ」だったら割とラフで自分の中にあるちょっとしたオタク感というのを降臨させるというか(笑)。想像する世界観に合う言葉をいつも選んでいます。
──まず構築するのは世界観で、そこから言葉を広げていく。
にしな:そうですね。一言目、二言目は世界観なくなんとなくポッと出てきて。メロをつけていく中で「こういう感じ」という全体像を見ながら進んでいくことが多い気がします。
──活動当初から、作詞のやり方に変化があったりしますか?
にしな:根本は変わらなくて、なんとなくやって自分が楽しい、気持ちいいところ、それは口の動きとかも含めて選び続けるということは変わらない。ただ、いろんなアプローチの仕方を知って来れたかなとは思っていて。もちろんやればやるほどだと思うんですけど、すごくシンプルに言ったら、例えば一人称が“俺”でもいいし、表現の角度はやればやるほど拡張していっているのかなと。
──なるほど。表現の角度はここ最近の楽曲からも感じますね。特に前作の「plum」から「ねこぜ」の表現の幅はすごいものがあると思います。
にしな:確かに(笑)。急にえっちら、おっちら言い始めますからね(笑)。
「つづ井さん」があったから書けた歌詞
──そんな〈えっちら、おっちら〉とスタートする「ねこぜ」は読売テレビドラマDiVE 「つづ井さん」エンディング主題歌ですが、今回のお話が来た経緯について教えてください。
にしな:今回は、エントリーする形だったので自分の曲を使ってもらえるかは分からなかったですし、どんな曲にしようと悩んではいたんですけど、たまたま考えている時に他の曲のレコーディングがあって、皆さんとお話をしていたらアイデアが降りてきて、その場で叩きを作ることが出来たんです。
だから運命的というか、自分の曲が通ったらいいなという気持ちで仕上げて送りました。
──ちなみににしなさんは原作を読まれていたんですか?
にしな:最初に読みすぎてしまうと分からなくなってしまうなという思いもあって、お話を頂いて、曲を書き終えたタインミングで本腰を入れて読み始めたんですけど、自分が想像しているものとすごくマッチしているなと思いました。
自分という人間とつづ井さんという人間がマッチする部分がすごくあったんだなというのを読んで感じました。
──なるほど。それはオタク的な部分であったり?
にしな:そうですね。自分は突き詰めることは得意ではないけど、オタク気質な部分はあると思います。オタクというか、根暗……(笑)。陽キャではないですね(笑)。
──運命的な形で制作がスタートしたと思いますが、そこからどういった流れを辿られたんですか?
にしな:レコーディングの場でなんとなくコードを弾いて頂いて、それで自分の中でメロと歌詞をなんとなく考えて。そこで1番はツルッと作ることが出来たのかな。そこから持って帰ってフルで書き進めた感じですね。
──セッション的な制作っていままでやったことは?
にしな:すごく昔、音楽を始めたばっかりの時にお世話になった方がいて。その人とやる時は自分がメロの破片を持っていくとそこにコードを乗っけてくれる。そのコードの延長線上で自分がさらに曲を書いていくか、「このコードが合いそう」とコードを鳴らしてもらった上でメロを乗せるというやり方を思い返すとめっちゃ昔にやっていたなと思います。
──じゃあ、原点回帰的な部分もこのタイングであったわけですね。
にしな:そうですね。やってみて思ったのは、やりやすいなということでした。自分の中に引き出しが少ないので、コードに詳しい方がパッパッパって弾いたものに、乗せられる、乗せられないと判断していくと効率もいいし、すごくスピーディーに仕上がるなって思いましたね。
──歌詞についてはいかがですか?
にしな:良くも悪くもあまり悩まず書けました。
──〈えっちら、おっちら〉がいちばん最初に浮かんでいた感じですか?
にしな:はい(笑)。頭からコレでした。
──歌詞の中でポイントを置いたフレーズはありますか?
にしな:やっぱり、〈えっちら、おっちら〉は気に入っていますし、タイアップでなければ書かなかったかもしれないと思う書き方だなと自分では思っていて。
例えば、2Aの〈馬鹿にする奴はいる 迷惑かけちゃいない ほっとけーって言いたい〉。考えすぎると恥ずかしくなって書けないというか(笑)。
だけど、なんとなく感じていた自分にとってのつづ井さんの世界観があって、それには自分の中でマッチしていたので、自分ひとりで作り出す楽曲では書かなかったかもしれないけど、つづ井さんがあったからこそ書けた歌詞だなとすごく思います。
──つづ井さんとマッチした部分を言葉にするなら、どういったところになりますか?
にしな:うーん、難しいですけど……。つづ井さんとお話をさせていただく機会があったんですけど、陰陽のバランス感が似ている部分があるなと思ったんです。ネガティブとポジティブのバランス感が似ているなと。
たくさんのことを考えているけど、ヘラヘラと乗り越えていく感じというのかな、そこが似てるかもなって。
──なるほど。では、この歌詞は普段だったら恥ずかしくて出せないけどこのタイミングだから出せた言葉が多いんですね。
にしな:〈えっちら、おっちら〉も自分ひとりでは浮かばないし、考えてもやめそうな気がしていますね。恥ずかしくなって(笑)。
──その恥ずかしさは何なんでしょうね?
にしな:シンプルに〈えっちら、おっちら〉って何?!みたいな(笑)。でも作品があると、「この世界観には絶対に合うよな」って思えて選択できるんですよね。
──作品があったからこそ、生まれた音と言葉なんですね。とても背中を押してくれる作品に仕上がっているなって思います。ちなみに「ねこぜ」というタイトルになった経緯は?
にしな:「タイトルは何だろうな〜」とすごく悩んでいた中で、歌詞の中に〈猫背でゴーイングマイウェイ!〉とあるんですけど、働く人もそうですし、オタクの人もそうですし、なかなかピンっと背筋を伸ばすことってないというか、この歌の世界観的にも猫背だけど好きなことに進んでいく感じがいいなと思ったんです。
人は時に人からいい印象を受けなかったりするけど、それは他人事で、そういう感情は蚊帳の外にしてブロックしていこう、猫背で突き進めたらいいよな〜みたいな気持ちがこの楽曲のいちばん大きな部分ではあるかなと思うので、「ねこぜ」をタイトルしました。
──なるほどな。確かにデスクに向かう時や物事に熱中している時って夢中になって前のめりの姿勢になっている気がします。
にしな:恥じることでもないし、背筋はピンとはなれないけど、なんて言うんですかね? おっしゃる通り、物事に夢中になると前のめりになっちゃう。そういう意味での猫背なのかなって思います。
──改めて、「ねこぜ」はどういう作品になりましたか?
にしな:最初からオタクと形容しちゃっているんですけど、どんな人にもオタクの部分があるのかなと思っていて。そういう意味でもそうですし、ある程度年齢を重ねたら社会を回す働く人々になるじゃないですか。結局そういう意味では、みんな同志というか。それぞれの日常に何となくある曲になったらいいなと思います。
「頑張れよ!」って背中を叩くような曲ではないけど、「明日もやるか〜!」という気持ちにしてくれる曲になっていたらいいかなと思います。
──生活の一部になる曲。
にしな:そうですね!
アフロビートを作ってみたい
──今年は「ねこぜ」を含めると4作品目になると思うんですけど、本当に毎回毎回音楽性を拡張してると思っていて。その辺りについてにしなさんはどう考えていますか?
にしな:うーん、自分では本当に自覚がなくて。私は多分飽き性だし、「plum」をやりながら「ねこぜ」を制作したりするタイプなので。だから同じことをやり続けると飽きちゃうのかなって。自然とこうなっている気はしてます。
でも、完成して距離を置いて改めて聴いてみると、確かに多重人格みたいって思うこともあります(笑)。
──同時進行はすごいですね。
にしな:3〜4つを破片をたくさん集めてやるタイプではありますね。
──じゃあ、モードとか関係なくニュートラルで居続けている?
にしな:そうですね。最近すごく思うのが小さい頃、工作がすごく好きで。ゼロから1で物を作るのが好き。その感覚ですね。
こっちでお皿作って、こっちでコップ作ってみたいな感じなのかなと思う。その方がメンタルが安定するんですよね。気が向いた方を選択して物を作っていく感じ。
──生みの苦しみみたいなものもあまり感じないですか?
にしな:それはもちろんあって、苦しい時はあまりやらないようにしています。それこそ3年前の方がそれでも頑張るみたいなテンションだったと思うんですけど、頑張っても出来ないやと最近は思えてきて、出来ないのであれば楽しい方を選択する。
──いい意味で楽観的で開放的になれた3年間でもある。
にしな:そうかもしれないですね!
──11月からはツアーがスタートしますが、にしなさんにとってライブってどういう場所ですか?
にしな:シンプルに楽しいし好きな場所ですね。お客さんに会って一緒に楽しい時間を過ごすためにやっているような気もしますし、そこから生まれる気持ちもあれば曲もある。それを持ってまた皆さんに会いに行きたいなって思います。
──いいですね。今回のツアーはどんなツアーになりそうですか?
にしな:前回が白をテーマカラーに掲げて「Feeling」というタイトルで割とパカッとしたライブで。また飽き性な性格が出てくるんですけど、今回は全然違う、逆の方に演出も含めてやっていきたいなと思っていて。
前回が白なら黒みたいな感じのツアーに……、なんかアバウト過ぎますけど(笑)。黒色だから見せれる部分ってあるじゃないですか、曝け出し方というか。
目的はみんなで楽しむということで一緒ですけど、手段を変えてみようかなとは思っています。
──ツアータイトル「SUPER COMPLEX」もいいタイトルですね。
にしな:パッと聞くとめっちゃネガティブというか、めっちゃコンプレックスみたいなワードではあるんですけど、SUPER COMPLEXという単語があって。
ミトコンドリア超複合体みたいな化学系の言葉なんですけど、要するに生命を維持する上、DNAを作る上でとても必要な体の仕組みの一部ことで、それをWミーニングでくっつけた時に自分にとってのSUPER COMPLEXも生命上ですごく必要なことかもしれないし、角度を変えたらとても重要で素敵なことかもね!みたいな、そういう意味でのタイトルです。
──なるほど。最後になりますが、今後の展望を教えてください。
にしな:いろんな曲を作りたいなと思います。ヒッチャカメッチャカやりたいけど、ちゃんとそこににしなが確立していけたらすごくいいなと思います。
──ちなみに今後作っていきたい曲はどんな感じですか?
にしな:弾き語りっぽい曲もずっとやっていきたいですし、歌詞の視点ではミニマムな自分の部屋を歌っているようなものも空の上から世界を見ているような視点のものも書きたい。
ビート感で言うとやってみたい一つとしてアフロビートをやりたいなとずっと言ってます。
──アフロビート×にしながどんな化学反応を起こすのか、気になりますね。
にしな:面白そうですよね! バーナ・ボーイの「Ye」という曲を聴いて、「なんだこれ、こんなカッコいい曲を作ってみたい」と思ったのがキッカケなんですけど、アフロは今流行っているし、耳にする機会も多いし、カッコいいと思うので、自分がやったらどうなるんだろうと思ってやりたいなって思ってますね!
──でも、ここ最近グルーヴィーな曲も増えてきていますよね。
にしな:そうかもしれないですね。振り返ってみると自分の音楽の原点、自分で取捨選択する前に聴いていたのは親が好きだった洋楽なんです。R&Bとか、その血は無意識にあると思うんです。
ただ、スタートは弾き語りだったのでその当時は出てこなかったけど、アレンジャーさんやいろんな表現も加わって、自分の血に通っている「そういう感じ好きじゃん」というのがより色濃く出てくるようになったのかなと思います。
TEXT 笹谷淳介
PHOTO Kei Sakuhara
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— 歌詞・音楽情報メディアUtaTen(うたてん) (@utaten) October 22, 2024
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