「同じ青」が指す意味とは?
2024年10月2日にリリースされたOfficial髭男dismのニューシングル『Same Blue(セイムブルー)』は、TVアニメ『アオのハコ』 のオープニング主題歌です。『アオのハコ』は週刊少年ジャンプに連載中の三浦糀による漫画が原作で、中高一貫のスポーツ強豪校を舞台に学生たちがスポーツに打ち込む姿と心の機微を描いた青春部活ラブストーリー。
その主題歌となる今作は「同じ青」という意味の『Same Blue』というタイトルがつけられています。
ストーリーの軸となっている恋愛と部活動への想いは形は違うものの心を動かす原動力となる同じ青さがあり、誰の心の中にもある色である点にスポットを当てているようです。
その青さを今作でどのように表現しているのか、歌詞の意味を考察していきましょう。
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気持ちの整理がつかないままの朝に 散らかったそれを鞄に詰め込んだ
やっぱり僕は あなたの前の僕は 渡したい言葉なんて渡せないまま
≪Same Blue 歌詞より抜粋≫
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思いがけない状況に直面すると、すぐに気持ちを切り替えるのが難しいことがあります。
主人公は朝になっても気持ちの整理がつかずにいますが、出かけるために荷物と一緒にそれらの複雑な感情も鞄に詰め込みます。
彼にとっての悩みは恋する相手に対することのようです。
好きな人の前に出ると「渡したい言葉なんて渡せないまま」で、もどかしい気持ちを抱えていることが分かります。
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1人の夜に中身を広げようとして 胸の奥がひりついてたまらなかった
好きな想いが あなたを好きという想いが あまりにも嵩張ってたから
≪Same Blue 歌詞より抜粋≫
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1人の夜に自分の気持ちと向き合ってみますが、「胸の奥がひりついて」たまりません。
中身の嵩張る鞄が開けにくいのと同じように、彼の心には「あなたを好きという想い」が募りすぎて自分の手にも負えなくなっています。
それほどまでに大きく純粋な愛情が、主人公の心を揺らしている様子が垣間見えますね。
あなたという季節の中で走るように恋をしてる
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近くて遠い日々に眩暈がした 落ち込んで浮かれての寒暖差に
染められて増えていた この重みを 絶対に離したくないと
胸は痛いくせに そう叫んでしまっていた
≪Same Blue 歌詞より抜粋≫
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彼女との関係が「近くて遠い日々」に眩暈がするように圧倒されています。
小さなことで落ち込んでは浮かれてを繰り返し、心の「寒暖差」に対処するのを難しく感じているようです。
彼女を想えば想うほど、ジレンマに胸を痛めていく主人公。
それでも本気で好きだから「この重みを絶対に離したくない」と強く思っています。
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春の中 あなたを見た 見惚れていた 夏模様の中で
移ろう街と逆に 青のまま募る心
秋の空 雪が混じった その全てがとても似合っていた
よそ見する暇もない忙しい世界を 走るように恋をしている
あなたという季節の中で
≪Same Blue 歌詞より抜粋≫
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春に彼女と出会い、夏には彼女に思わず見惚れて自分の恋心を自覚しました。
季節の移り変わりと共に街の景色は変わっていきますが、自分の恋心は未熟な青さを持ったままひたすら募っていきます。
秋の空が移ろい雪が混じる美しさは彼女によく似合い、深まる愛情を感じずにはいられません。
「よそ見する暇もない忙しい世界を走るように恋をしている」というフレーズは、部活に恋に全力で打ち込む主人公の姿を魅力的に描いています。
「あなたという季節の中で」、つまり彼女のいる場所でひたむきに青春を味わいたいという気持ちが読み取れます。
自分の青さのまま全力で生きたい
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足りないものを少しでも減らそうとして 力んで余計にいくつも増えたりして
やっぱり僕じゃあなたを好きな僕じゃ 釣り合いたがる資格もないよなあ
≪Same Blue 歌詞より抜粋≫
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自分に「足りないものを少しでも減らそうとして」頑張ることが、きっと誰にでもあるでしょう。
しかし、力むあまりに空回りして足りないものが「余計にいくつも増えたり」することもあります。
その度に自分の未熟さを痛感し、「あなたを好きな僕じゃ釣り合いたがる資格もないよなあ」と思ってしまいます。
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あれだけ用意した伝えたかったこと 色んな自分に邪魔をされた
鞄の中で揺れ 拗れてさらに膨れ
傷跡にさえなれずに 隠し持った想いたちが
溢れることを選んだ日は ちゃんと届けたい
あなたの心の中へ
≪Same Blue 歌詞より抜粋≫
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想いを伝えようといくら用意しても、釣り合いを気にしたり臆病になったりする「色んな自分に邪魔」されて伝えられずにいるようです。
その想いは心という鞄の中で「揺れ 拗れてさらに膨れ」ています。
告白して振られれば「傷跡」にくらいはなれるのに、今はまだ隠し持っているだけ。
しかしいつかその想いが自分でも止められないほど「溢れることを選んだ日」には、隠さず誤魔化さずに彼女の心の中で「ちゃんと届けたい」と願っています。
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青のまま濁って澄んで 大きな未熟さを背負って
明日も息を切らしたい あなたの居る目まぐるしい世界で
あなたという季節の中で
≪Same Blue 歌詞より抜粋≫
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「青」は未熟さを表す色であり、瑞々しい清さを表す色でもあります。
人は様々な想いや感情に揺られると、心の中にある青さが濁ったり澄んだりするものです。
いつも美しくはいられない自分の「大きな未熟さ」を受け入れて、全力で生き「明日も息を切らしたい」という表現に、実直な想いが感じられます。
そしてそこにはいつも「あなた」がいてほしいと伝える真っ直ぐな愛情にも心が温まりますね。
美しい輝きを放つ青春ソング!
Official髭男dismの『Same Blue』は、弱さや葛藤を抱えながらも目の前のことに全力で取り組もうとする青春の輝きが感じられる楽曲です。人は青さがあるからこそ、何を差し置いても自分にとってかけがえのないものを大切にするための力を発揮できるのでしょう。
アニメのストーリーとの繋がりにも注目しながら、歌詞に込められた青春の美しさや温かさを味わってくださいね。
Official髭男dism (オフィシャルヒゲダンディズム) 山陰発4人組ピアノPOPバンド。2012年6月7日結成、島根大学と松江高専の卒業生で結成されており、愛称は《ヒゲダン》。このバンド名には髭の似合う歳になっても、誰もがワクワクするような音楽をこのメンバーでずっと続けて行きたいという意思が···