実力集団によってできた曲
『虫の声』は複数の作詞者・作曲者によって作られているそうです。
この曲は1910年「尋常小学読本唱歌」に載ったことで広く知られるようになりました。
「尋常小学読本唱歌」に載っている曲たちは、当時の東京音楽学校(現:東京藝術大学)に文部省から直接依頼がいき、音楽学校の教授たちで構成されたチームの手によってうまれたそうです。
複数の作詞者・作曲者の名前は伏せられており、曲の著作権は文部省が所有しているとのこと。
この「尋常小学読本唱歌」の中には『かぞえうた』や『われは海の子』などの有名な曲も載っています。
全ての曲の作詞・作曲者が伏せられているというわけではなく、岡野貞一作曲・高野辰之作詞の『春が来た』なども載っています。
とてもシンプルなのに歌詞も曲も耳に残るのは、音楽の実力集団によって作られたからなのですね!
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あれ、松虫が鳴いている。
ちんちろちんちろ、ちんちろりん。
あれ、鈴虫も鳴き出した。
りんりんりんりん、りいんりん。
≪虫の声 歌詞より抜粋≫
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1番では、まず虫の名前が出され、その虫の声を擬音語で表現したものが続きます。
この曲を知ってから虫の声を聞いてみると、確かにそう聞こえてくるように…。
虫の声を実際に文字にすると、なるほどこうなるのか!と納得のいく歌詞ばかりです。
短い構成でも印象に残る理由とは!
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きりきりきりきり、こおろぎや
ガチャガチャくつわ虫
あとから馬追い追いついて
ちょんちょんちょんちょん、すいっちょん。
≪虫の声 歌詞より抜粋≫
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『虫の声』は2番までしかありません。
また、1番毎が20小節ととても短いですが、そんな中で5種類の虫たち(マツムシ、スズムシ、キリギリス、クツワムシ、ウマオイ)が登場します。
この曲は秋口を歌っている曲ですが、秋の虫にはこんなにたくさんの種類がいたのかと思うほど聞き慣れない名前も虫も。
2番に出てくる虫たち(キリギリス、クツワムシ、ウマオイ)は、全てキリギリス類です。
同じキリギリス類でも鳴き声がまったく異なっていて、それを見事に文字にしているのがとても面白いのです!
そんな面白さに出会えるのも、この曲の魅力でしょう。
シンプルな鳴き声でも重なっていくと・・・!
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秋の夜長を鳴き通す、
ああ、おもしろい虫のこえ。
≪虫の声 歌詞より抜粋≫
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1種類ずつ増えていき、最後に大合唱になるのがこの曲の醍醐味!
何人かの大人たちで作詞する際、きっといろんな虫を提案したのでしょう。
あーだこーだ言い合う様子を想像すると、なんだか秋の虫たちと似ているところがあって面白いですね。
音楽と擬音語の融合
音楽の中で擬音語が目一杯使われているところが、この曲の最大の特徴でしょう。その擬音語がかなりマッチしていて聞きなじみが良いことから、とても心地よく記憶に残るのではないでしょうか。
童謡を通して秋の虫たちと出会えるこの曲が、これからも消えることなく、少しでも多くの日本の子どもたちに伝わっていってほしいと思うばかりです。