個性豊かなスーツの男たち
『一世風靡セピア』は1980年代に活躍した路上パフォーマンス集団『劇男一世風靡』から派生した7人組のユニットで、1984~1989年に活動していました。メンバーは小木茂光、哀川翔、柳葉敏郎、松村冬風、西村香景、春海四方、武野功雄で構成されていました(武野功雄は1985年に中途退団)。
メンバーをみればお分かりのように、ほとんどのメンバーが実力派俳優として今でも芸能界で活躍しています。
もともと劇男一世風靡は路上でダンスをメインにパフォーマンスをしていましたが、そのメンバーの中で歌をやりたい者はいるかと聞かれた時に手を挙げたのが『一世風靡セピア』のメンバーでした。
1984年6月に『前略、道の上より』でデビューし、1989年4月の『THANKS』で解散になるまで11枚のシングルを発表しました。
強面の男性陣がスーツを着て、路上で歌い踊るというのは当時とても斬新で、パフォーマンスをするたびに大勢の人が集まったそうです。
テレビ番組に出演した際は、スタンドマイクが立つ中を、その狭さを感じさせることなく生き生きと歌い踊る姿はとても圧巻です!
「素意」とは
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(素意や
素意や 素意や)
(素意や 素意や
素意や 素意や)
(素意や 素意や
素意や 素意や~
素意や 素意や
素意や 素意や~)
(素意や 素意や
素意や 素意や~)
≪前略、道の上より 歌詞より抜粋≫
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『前略、道の上より』で最も有名な部分は、何度も出てくる「素意や」ではないでしょうか。
「素意」とは意味を調べてみると「かねてからの考え」という意味があるそうです。
みんなと一緒に掛け声をかけるという行動ではあるのですが、この「素意や」は後に続く言葉すべてにかかっているのではないかと思われます。
綴っている歌詞に対して「いつもそう考えていた、思っていた」と。
この曲が約4分20秒くらいの長さに対して冒頭約38秒がこの「素意や」だけなのです。
さらに中盤、最後にも繰り返し出てくるので、この曲の半分を「素意や」が占めています。
もはやこの「素意や」はこの曲の代名詞と言っても過言ではないのでしょうか。
シンプルな歌詞で綴る考え
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散るからこそに美しい
散った 花片は
後は土へと還るだけ
それならば一層
斜めを見ずに
おてんとうさんを
仰いでみようか
≪前略、道の上より 歌詞より抜粋≫
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この曲は全体的に”男らしい”歌詞が続きます。男性目線で自然の摂理をみてそれに対して考えを述べている、そんな印象を受けます。
1番では人の一生を「花」に例えています。「人は若い時を経て、年齢を重ね、老いて死ぬ。それなら顔を上げて上を見ながら生きていこう。」とてもシンプルで前向きな歌詞ですね。
人生で何度か考えること
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(ハッ!) 波が続く様に
時の刻みも又続く
風も吹き止まぬ
時の刻みも打ち止まぬ
やれこれと返す
事のべの中で
何が生きていく
証なんだろうか
≪前略、道の上より 歌詞より抜粋≫
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4番形式で構成されているこの曲は、各箇所で自然の様子を盛り込んでいます。それに対比する歌詞を並べ、人生を謳う歌詞でまとめています。
1番は「~してみようか」、2番は「~せずにはいられない」、3番は「~になれる」そして4番は「何が生きていく 証なんだろか」と問いで終わっています。
この4つの締めの形はまるで1人の人間の人生のような歌ですね。
若い時は未来は何が起こるかわからないからとりあえず挑戦してみる。そしてスタートを切った後に挑戦し続けて、ある程度経験を重ねた時に自分なりの答えを出してはみたが、年を重ねて振り返ると結局は何が正解なのかはわからなかった。
自問自答は人生の中で何度もおこなってきます。まるでその様子を歌い上げているかの様に受け取れますね。
「対比」の魅力
『前略、道の上より』の歌詞が対比している様に、この人生に自問自答する重い内容を力強く陽のキーで歌い上げることもまた対比となっていて、歌詞の中の対比に加えて、聴覚的にも視覚的にも対比となって自分の人生を表現していることがこの曲の最大の魅力ではないでしょうか。音楽スタジオでスタンドマイクの間で大きく踊っているパフォーマンスも素敵ですが、やはり路上でパフォーマンスをしている様子は圧巻です!
ぜひ見るチャンスがありましたら、路上パフォーマンスの映像を探してみてください!!