だらだら生活する中で、自分に自信を持てない現代人
藤井隆『ナンダカンダ』は、2000年に発表された楽曲です。この楽曲でその年の紅白歌合戦に出場するなど、大きくヒットしました。さらに、2023年に公開された「THE FIRST TAKE」の動画は1000万回以上の再生回数を記録しました。
2024年に放送された音楽特番『ベストアーティスト』で披露されるなど、発表から20年以上が経った現在も多くの人から支持を集めています。
では『ナンダカンダ』の歌詞にはどのようなメッセージが込められているのか、考察したいと思います。
まずは冒頭から。
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自分よりツイてない
誰か見て安心かい?
自分だけは「例外」
思いたくて勝手言った
いつからか昼と夜が
行き違った生活で
≪ナンダカンダ 歌詞より抜粋≫
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冒頭では、この歌詞で描かれる人物が置かれている状況が語られています。
どうやらこの人物は「昼と夜が行き違った」ような、だらだらとした生活を送っているようです。
「自分よりツイてない誰か」の姿を見て安心しているとあることから、他人と比較することでなんとかプライドを保っているような、あまり自分に自信を持っていない人物と考えることができるでしょう。
こうした描写は『ナンダカンダ』の歌詞で度々登場します。
例えば、2番の冒頭の
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寝不足にて疲労
疲れすぎてどうしようと
うかがう顔色も
気にしすぎて この行動
≪ナンダカンダ 歌詞より抜粋≫
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という歌詞や、ラストのサビの前にある
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あるべきはずメリハリが
なさすぎるTVの前
≪ナンダカンダ 歌詞より抜粋≫
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という歌詞がわかりやすいでしょう。
『ナンダカンダ』は、「怠惰な生活を送る中で、自分と他人を比較してばかりいる」人物を描いた楽曲になっていると考えられます。
こうしたあり方は、多くの人にとって共感できるものではないでしょうか。
自分に自信がないので、何かをやらなければならないと思っているけれど、何をすればいいのかがわからない。
そんな自分を他人と比較して安心したり、反対に気にしすぎて疲れてしまうというのは、多くの人が経験したことのある状況だと思います。
目を覚ませ!
では『ナンダカンダ』の歌詞は、そうした人物に対してどのようなメッセージを伝える楽曲なのでしょうか?
その内容は、冒頭の歌詞から続く部分に現れています。
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ふさぎこまないでどうか
目を覚ませ 道を探せ
≪ナンダカンダ 歌詞より抜粋≫
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自分と他人を比較して自信をなくしてふさぎこむのではなく、反対に「道を探す」ことが重要だというのです。
そのために必要なのは「目を覚ます」ということ。
この印象的な「目を覚ませ」というフレーズは、歌詞の中で度々登場します。
2番でも、
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はみ出す勇気をどうか
絞り出して立ち上がれ
ほんの少しの気合いだ
目を覚ませ 泣くな 笑え
≪ナンダカンダ 歌詞より抜粋≫
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という形で使われています。
これらのメッセージに共通しているのは、だらだらした生活から目を覚まして、いま自分が進んでいる道からはみ出したり、別の道を探したりしよう!ということ。
そのために必要なのは、「ほんの少しの気合い」。
つまり『ナンダカンダ』は、満足しているとは言えない現在の生活から「目を覚ます」ために、「ほんの少しの気合い」をもって、ちょっとだけがんばることを応援する歌詞になっていると考えられるのではないでしょうか。
「ナンダカンダ」あっても、自分のやりたいことを
そうしたメッセージがぎゅっと凝縮されているのが、サビの歌詞。
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なんだかんだ 叫んだって
やりたいこと
やるべきです
あんたなんだ 次の番は
やりがいあふれる
レースです
≪ナンダカンダ 歌詞より抜粋≫
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今ある生活に対して不満足感を抱きながらだらだらと続けるくらいなら、「やりたいことをやるべき」なのだといいます。
「なんだかんだ」と理屈を並べ立てるのではなく、とにかく次は自分の出番なんだと思い切って、進みたい方向に進んでみる。
そうすれば怠惰な生活は「やりがいあふれるレース」に変わると伝えています。
ちなみに、サビの歌詞は2番では、
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なんだかんだ 夢見たって
問題ない世の中です
あんたなんだ 次の番は
みんなに愛呼びかけて
≪ナンダカンダ 歌詞より抜粋≫
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と変化します。
SNSなどを通して他人の視線が特に気になりやすい現代ですが、それでも「夢見たって問題ない世の中」なのだと教えてくれています。
サビを通して伝えられているのは、自分に対してうだうだと言い訳ばかりしている現状を打破して、自分のやりたいことをやり、夢を実現するために行動することへの応援だと考えられるでしょう。
ポップでやさしく、力強い応援歌
『ナンダカンダ』はそのポップなメロディや、藤井隆の明るいキャラクターが相まって、ノリのよい楽しい楽曲に聴こえるのではないでしょうか。しかし、その歌詞を紐解くことで見えてきたのは、現状に満足していない人に対するやさしくも力強い応援のメッセージ。
あなたがこの楽曲を聴いて「ナンダカンダ」ある日常から目を覚ますときは、今なのかもしれません!