作曲家デビューの曲
『マイ バラード』は音楽家・松井孝夫のデビュー曲で、当時松井は25、6歳にして作詞・作曲家生活をスタートさせました。
主に学生向けの合唱を作曲していますが、合唱曲の作曲家の中でも珍しく作詞も手掛けることで知られています。
松井の歌詞はとても前向きで且つ「人と人とが力を合わせること」を所々に組み込まれています。
「バラード」とは「自由な形式の民衆的な小叙事詩・物語詩」と言う意味がありますが、『マイ バラード』は「自分の人生(物語)」であり、それを歌い上げることで初めて成り立つ曲なのでしょう。
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みんなで歌おう 心をひとつにして
悲しい時も つらい時も
みんなで歌おう 大きな声を出して
はずかしがらず 歌おうよ
≪マイバラード 歌詞より抜粋≫
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当時、松井は障がいをもつ人々と共にボランティア活動をしながら音楽の活動をしていました。
そこでの出会いと活動により、この曲が浮かんだそうです。
1番の歌詞では「1人ではなく他の人を頼る」ことを書いています。
日本人はいわゆる「負」といわれる感情を抱え込む傾向があります。
1番では「一緒に歌えばこわくない」という歌詞に見えますが、この行動ができるとき、人はその人を心の底から信頼して頼っているときなのです。
殻に閉じこもっている人の背中を押す歌詞は一気にこの曲に人々を引き込ませる力があります。
思い思いに語る仲間との時間
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みんなで語ろう 心をなごませて
楽しい時も うれしい時も
みんなで語ろう すなおに心開いて
どんな小さな なやみ事も
≪マイバラード 歌詞より抜粋≫
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みなさんは自分の思いを他人と語り合うことを苦手としていることはありませんか?
普段から自分の意思を言葉にすることに慣れていないと難しいかもしれませんが、同時にそれを伝えても否定されないという信頼関係が出来上がっている人とならどうでしょう。
「自分と違う意見」は決して否定ではありませんが、それがイコールでつながってしまう場合はお互いに信頼関係が成り立っていない時なのではないでしょうか。
この2番の歌詞「みんなで語ろう 素直に心を開いて どんな小さな 悩みごとも」のようなことができるのは本当に相手を信頼しているし、相手も自分を信頼していることを理解しているからこそ出来ることです。
逆をいえば、特に信頼し合っている相手とは自分たちのすべてを伝え合える権限があるといえます。
「言わなくてもわかりあえる」ではなく「だからこそいう」大切さを、2番の歌詞から学ぶことができます。
音楽の魅力はサビにあり!
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心燃える歌が 歌がきっと君の元へ
きらめけ世界中に 僕の歌をのせて
きらめけ世界中に とどけ愛のメッセージ
心痛む思 たとえ君を苦しめても
仲間がここにいるよ いつも君を見てる
僕らは助け合って 生きてゆこういつまでも
心燃える歌が 歌がきっと君の元へ
きらめけ世界中に 僕の歌をのせて
きらめけ世界中に とどけ愛のメッセージ
とどけ愛のメッセージ
≪マイバラード 歌詞より抜粋≫
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『マイ バラード』の音楽的な見せ所のひとつはこのサビの部分の頭ではないでしょうか。
全体的にリズムは難しくないので歌いやすいイメージはありますが、この箇所だけ3連符が続くため聴覚的にもとても印象に残ります。
実際、この曲を歌う際はこの箇所が腕の見せ所だそうです。
サビの歌詞は前向きすぎるくらい目をキラッキラに輝かせながら歌う人々を想像できますが、それはきっとその前に経験した辛い過去や記憶を踏み台にしているから。
だからこそ希望に満ち溢れる歌詞が出てきたのではないでしょうか。
人生のテーマは「愛」
数多くの映画や演劇、美術、音楽作品をみていると、必ずと言って良いほど「愛」についてふれている作品が多いです。一言で「愛」といっても「母性愛」だったり「友愛」だったり「恋愛」だったりその形は様々で。
でも根底にある「愛情」を「とどけ」と願いを込めて投げ打っているこの曲は人々に親しまれることは必然だったといえるでしょう。
この曲はピアノに向かってからわずか30分ほどで出来上がったそうです。
松井自身にみなぎっていたエネルギーや想いが溢れるように音となって言葉となって出てきたのでしょう。
みなさんも、身近にいる信頼できる人にぜひいろんな形の「愛」を届けてみてくださいね。