話題のアーティスト・野田愛実がドラマ「わたしの宝物」主題歌を担当!
コロナ禍に発信したカバーソングが反響を呼び、2023年にメジャーデビューを果たしたアーティストの野田愛実(のだ えみ)。共感性の高い歌詞とクリエイティブな感性から生まれるメロディの調和により、ファンの心を掴んでいます。
ノスタルジックな雰囲気を持つベッドルーム・ポップを軸としつつも、1つのジャンルに囚われず楽曲ごとに表情の異なる世界観を表現している点が魅力です。
また彼女の楽曲から感じる温もりや安らぎは、まるで音楽を通して彼女自身が聴く人の横にいてくれているかのようで、何気ない日常にほのかな彩りを与えてくれる“寄り添いびと”とも称されています。
その音楽性は様々なドラマやアニメのストーリーとも自在にマッチし、タイアップでの注目度も高いアーティストです。
2024年10月31日リリースの楽曲『明日』は、松本若菜主演ドラマ『わたしの宝物』の主題歌として書き下ろされました。
ドラマ『わたしの宝物』は、夫以外の男性の子どもを夫との子と偽って産んで育てる“托卵”をテーマにしたオリジナルストーリーです。
自分にとっての大切な宝物を守るために悪女になることを決意した女性・神崎美羽とその夫・宏樹、美羽が愛した男性・冬月稜の間で縺れ合う感情を描く愛憎劇の展開が見どころとなっています。
その主題歌である『明日』はピアノとヴァイオリンの旋律が美しいバラードで、野田愛実の温かく芯の強さを感じさせる歌声が心に響きます。
ドラマのストーリーを曲にどのように落とし込んでいるのか、ドラマの内容に触れながら歌詞の意味を考察していきましょう。
たった一つ 大切なもののために
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何故 人は叶わなかった夢に
執着してしまうの
今を愛することも出来るのに
いつまでも 考えてしまうの
あの日 あの瞬間が 生きる意味になった
このまま進むのが罪と言うなら
≪明日 歌詞より抜粋≫
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冒頭の歌詞は、ドラマの主人公である神崎美羽の苦悩が描かれています。
誰でも今という現実を懸命に生きながらも、ふと過去を振り返ってしまうものです。
特に愛する夫からのモラハラに傷つき疲れている美羽のような状況のときには、余計に過去の美しい思い出を振り返らずにはいられないでしょう。
学生時代、手放さなくてはならなかった冬月との大切な時間が心に引っかかっている美羽は、冬月との偶然の再会で「叶わなかった夢」があることを思い出し心を奪われるようになってしまいます。
そして「今を愛することも出来るのに」、苦しみから逃げ心の安らぎを得たくて冬月を求めてしまいました。
それにより「生きる意味」を取り戻し、今よりも幸せになれる未来を想像した美羽は、冬月との子どもを身籠ります。
産むか堕ろすかの選択を迫られたとき、冬月が亡くなったと思っていた美羽は「このまま進むのが罪」と心の中では分かっていながらも、夫との子と偽って産み育てることを決めます。
托卵は許されることではありませんが、悪女になってでも愛する彼との“宝物”を守ろうとした美羽の母親としての強さが感じられますね。
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明日 これからも ずっと先も
たった一つ 大切なもののために
明日 誰かを傷つけてしまっても
痛みも怖さも抱きしめて
生きていくから
≪明日 歌詞より抜粋≫
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楽曲のタイトルでもあり、サビ冒頭で力強く歌われる「明日」のフレーズに心を掴まれた方は多いでしょう。
日々繰り返し訪れる「明日」の中で、美羽は「たった一つ 大切なもののために」生きることを決めます。
その選択が誰かを傷つけてしまうことは痛いほど理解しています。
この「誰か」には夫や愛する彼、そして自分自身も含まれるのでしょう。
それでも迫り来る「痛みも怖さも抱きしめて生きていく」覚悟はできています。
それは「たった一つ 大切なもの」があるからです。
人は一つでも譲れない大切なものがあれば、どのようなつらい境遇にも耐えられる強さを得られるということが伝わってきます。
一度手にした宝物を大切にし続けたいという自分の気持ちに正直になって進んでいこうとする真っ直ぐな気持ちが読み取れます。
葛藤する複雑な感情
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明けていくのか 暮れていくのか
その深い青の中に
もうそこにはないと わかってて
いつまでも探し続けるの
あの空の色をどう名づけたらいいのだろう
美しいと想うのが罪と言うなら
≪明日 歌詞より抜粋≫
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明けていく空も暮れていく空も色は「深い青」でよく似ていて、一目ではどちらか見分けるのは困難です。
同じように、心の中で重く暗く圧しかかる未練や迷いの気持ちも晴れていくのか曇っていくのか判断しにくいでしょう。
できることなら誰もが幸せになれる道を進みたいと思いますが、すでに誤った選択をした今はもはやその道は残されていません。
それなのに「もうそこにはないとわかってて いつまでも探し続け」てしまいます。
失ったものの大きさに今更ながら気づいたからです。
心の状態を「空の色」と表現し、自分の複雑な感情を表現する難しさを綴っていると解釈できるでしょう。
また、時に人は失ったものや叶わないものほど「美しい」と感じてしまうことがあります。
しかしもう手に入らないものに執着すると、本来進むべき道を見失ってしまいます。
これは美羽が冬月との関係に美しさを感じ、宏樹との関係を見失ってしまったことからも明らかです。
それでもその美しさに心を惹かれる気持ちを止めることはできません。
さらに血の繋がっていない子を変わらず大切に思い、離れたくないと感じる宏樹も多くの迷いの中で苦しみます。
矛盾した感情を抱えながら、どのように生きるべきか葛藤する人々の様子が歌詞と重なるでしょう。
明日がどんな日になるとしても
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明日 これからも ずっと先も
たった一つ 大切なもののために
明日 たとえ迷い挫けそうになっても
痛みと怖さを 抱きしめて
生きていくから
≪明日 歌詞より抜粋≫
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2番のサビには、「明日 たとえ迷い挫けそうになっても」というフレーズがあります。
一方を守ろうとすればするほど他方を傷つけたり自分自身が苦しい境遇に立たされたりします。
そんな時、本当にこれで良かったのか、もっと違う選択ができたのではないかと迷い挫けてしまいそうになるものです。
人生は失敗や挫折の連続で、いつもうまく生きられる人はいないでしょう。
それでも「たった一つ 大切なもの」の存在が支えになってくれます。
「痛みと怖さ」から逃げ、自分のつらさを誰かのせいにする方がきっと簡単です。
ドラマの中では美羽を中心に、登場人物それぞれが傷つけ合ってしまっている様子が描かれています。
その根底には各々宝物を大切に思う気持ちがありますが、不器用がゆえに間違い、大切な人とすらすれ違っている姿に胸が締め付けられます。
しかし、逃げることなく傷つくことすら受け入れて前に進む決意ができたのは宝物があるからです。
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散り乱れ空に残された光が
深い青に染まっていくように
明日 これからも ずっと先も
たった一つ 大切なもののために
明日 誰かを傷つけてしまっても
痛みも怖さも抱きしめて
生きていくから
≪明日 歌詞より抜粋≫
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「散り乱れ空に残された」星の光は厚い雲が出てくると容易に見えなくなり、「深い青に染まって」いきます。
これは人生の中の浮き沈みを表現していると解釈できるでしょう。
冬月と結ばれたときに感じた束の間の幸せと、彼の死を耳にしたときの喪失感。
子どもが生まれた後の宏樹の喜ばしい変化と、罪を知られてしまったときの絶望感。
良いことがあったかと思えば悪いことが起きると感じるのは、美羽以外の彼らにとっても同じことです。
今日が良くても、明日どう状況が変化するかは分かりません。
犯した過去の過ちのために、さらに苦しむ未来が待っている可能性もあります。
それでも人はそうして苦しみもがきながら、少しでも良い明日を願って進んでいくものなのでしょう。
そこにたった一つの譲れない「大切なもの」があれば、真っ直ぐに生きていく力になるはずです。
子どもを一人で育てていこうと覚悟を決めた美羽、過去を受け入れて妻と子どもと共に生きる決意をした宏樹、真実を知りながらももう一つの守りたいもののために進む冬月。
それぞれが自分のかけがえのない宝物のために懸命に生きる姿に、「痛みも怖さも抱きしめて生きていくから」という実直な力強い言葉の意味が見えてきます。
全ての人の明日を輝かせるメッセージソング!
野田愛実の『明日』は、自分自身の弱さを抱きしめて進む未来への切実な想いと決意表明が綴られた楽曲です。どのような選択をするとしても、その選択からぶれずに強く進むのには覚悟が必要です。
ドラマの登場人物たちとこの楽曲を聴く全ての人の“明日”に寄り添う歌詞にじっくりと耳を傾けてください。