心が疲れてしまったら…
では、冒頭から歌詞を見ていきましょう。
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息が詰まるような日々が続いたら
休暇を取ればいい
あの人も上手にちゃんとやれてるし
バカンスに行っちゃえばいい
気にしないように「したり」
守るために「戦う」毎日
ちょっと、待って、
笑うしかないはずなのに
涙が出ちゃう 急に
≪ビターバカンス 歌詞より抜粋≫
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冒頭で歌われているのは、何かに疲れてしまっている人の心情。
仕事や学校に追われる中で、「気にしないように」して感情にフタをして過ごしているけど、それを続けているうちに「息が詰まる」ような感覚になってしまう…というのは多くの人が共感できる内容なのではないでしょうか。
歌詞では、そんなふうに心が疲れてしまった人に「休暇を取ればいい」や「バカンスに行っちゃえばいい」とアドバイスしています。
しかし、現実において忙しい毎日の中で「休んだら他の人に迷惑をかけるのでは…」とか「休んだ分だけまわりから遅れてしまうのでは…」と心配になってしまい、休めないこともよくあると思います。
そんな人に対して歌詞では「あの人も上手にちゃんとやれてるし」と、休んでもまわりの人のように問題なくやっていけることを教えてくれています。
つまり、冒頭の歌詞では「疲れたのなら、休んでいいよ!」というとてもシンプルなメッセージを、冷静な根拠とともに教えてくれているのではないでしょうか。
他人と比べて諦めてしまう?
続く歌詞では、人々が抱える迷いが歌われています。
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追いつけない人がいる
そのマジカルを
ただ恥じちゃう自分が居る
いつかはね
僕は諦めてしまうのでしょうか
≪ビターバカンス 歌詞より抜粋≫
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その内容とは、どう頑張っても追いつけないくらいすごい他人と自分を比べて、落ち込んでしまうというもの。
そして、そういう人を前にいつかは追いつこうとすることすら諦めてしまうのではないか…と不安を感じているというもの。
周りを見渡してみると、考えられないくらいにすごい人やとてつもない努力をできる人がたくさんいますよね。
そういう人を見たときに、つい自分を比べて「なんで自分はこんなにできないんだ…」とか「どうせ自分は何やってもあの人みたいになれないんだ…」と、心が折れてしまう経験は誰しもしたことがあるのではないでしょうか。
このフレーズを、先ほどの冒頭の歌詞と重ねて考えてみると、「あの人と比べてダメな自分が休んでいいはずがない」と、まだ「休む」ということに対して踏ん切りがついていない心情が描写されているとも捉えられるでしょう。
それでも休もう!
そうした迷いに対して、答えを出してくれるのが続く歌詞。
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辛いことばっかじゃないって事を
僕に教えたい 教えたい 教えたい
ぐだぐだ時間は過ぎていくけど
ちょっぴり甘いくらいな
ほろ苦いが
愛じゃない?
やっぱり好きなことをするくらいは
いいじゃない?
≪ビターバカンス 歌詞より抜粋≫
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このフレーズはこの楽曲で歌われているメッセージを最も端的に表していると思います。
それはつまり「自分がダメではないと思わないために、自分を休ませてあげることも必要」ということ。
しっかりと休んで好きなことをすることが、自分に対してこの日常や人生は辛いことだけでできているわけではないと教えてあげることにつながる。
休んでいるときくらいは、ちょっと不安になる=「ほろ苦い」くらいに、自分を休ませてあげられる「甘い」時間をつくることが必要だ、と歌っているのではないでしょうか。
先ほどまでの歌詞で歌われていたことと重ねると、「休んでいていいのかな…」という迷いに対して、「自分で”休みすぎなのでは?”と思えるくらいに休むことが、人生を生きていくことにつながる!」という答えを出してくれていると考えられます。
「休む」ことの意味
なぜ『ビターバカンス』はここまでに自分の時間を過ごすことの大切さを歌っているのでしょうか?
の答えは次のような歌詞にあると思います。
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結局 遠くへ行っちゃうけども
笑える今日を大事にしまっておこう
いつかはバイバイ バイバイ バイバイ
≪ビターバカンス 歌詞より抜粋≫
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いつか君は忘れるでしょう
僕と過ごした日々を香りを
≪ビターバカンス 歌詞より抜粋≫
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どんな時間を過ごしていても、それはいつかきっと記憶からは消えていってしまうもの。
忘れてしまったり「結局 遠くへ行っちゃう」、最終的には命の終わりを迎えてしまったりするからです。
つまり、どんな時間もやがては誰も覚えていないものになってしまうからこそ、その時間を可能な限り楽しんでいいんだ!というのが『ビターバカンス』に込められたメッセージなのではないでしょうか。
そしてそのためには、
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いつか君は忘れるでしょう
僕と過ごした日々を香りを
≪ビターバカンス 歌詞より抜粋≫
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と思って、日々を生活していくことが大切なのだと、歌っているのだと思います。
今ある時間を楽しむために、休む
『ビターバカンス』は、今ある時間を可能な限り楽しむために、必要だと思ったら「休む」ことの大切さを歌った楽曲になっているのではないでしょうか。そのやさしいメッセージは、忙しい毎日の中で不安を抱えやすい人々の心を癒してくれると思います。
『ビターバカンス』が主題歌に起用されている映画『聖☆おにいさん』は、イエス・キリストとブッダが、人間界で「バカンス」をとる様子を描いた物語。
『ビターバカンス』と『聖☆おにいさん』は、忙しい毎日のなかで、しっかりと自分を休ませてあげることの意味を、明るく教えてくれる作品となっているのではないでしょうか?
【Mrs. GREEN APPLE PROFILE】 大森元貴 (Vo/Gt) 若井滉斗 (Gt) 藤澤涼架 (Key) 2013年結成。2015年EMI Recordsからミニアルバム「Variety」でメジャーデビュー。 以来、毎年1枚のオリジナルアルバムリリースと着実なライブ活動を続け、2019年12月から行われた初の全国アリーナツアー「エデ···