ピアノ演奏で思い起こされる気持ち
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あなたは すっかり
つかれてしまい
生きてることさえ
いやだと泣いた
≪時の過ぎゆくままに 歌詞より抜粋≫
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冒頭から「生きていることさえいやだと泣いた」とかなりダークな感情をこぼしていますね。
一体何があったのかと引き込まれるような始まり方になっています。
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こわれたピアノで
想い出の歌
≪時の過ぎゆくままに 歌詞より抜粋≫
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次に「こわれたピアノで思い出の歌 片手でひいてはためいきついた」とあります。
昔から続けてきた自転車の乗り方や楽器の弾き方は、意識せずとも自然と覚えているといった記憶に手続き記憶というものがあります。
この「こわれたピアノ」に手続き記憶を踏まえれば、意識せずとも勝手にあの頃の懐かしい思い出を再現してしまうほど、無意識下にあった記憶なのでしょうか。
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片手でひいては
ためいき ついた
≪時の過ぎゆくままに 歌詞より抜粋≫
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「ためいきついた」も合わせて、きっと楽しい記憶ではないことが伝わってきますね。
初めの「いやだと泣いた」では抵抗の意志を示しているのに、少し思い出してしまうだけで溜息という諦めの感情に変化してしまっており、感情のブレが感じ取れます。
食い込む指輪は傷か痛手か
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からだの傷なら
なおせるけれど
≪時の過ぎゆくままに 歌詞より抜粋≫
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今度は感情や気持ちに焦点を当てるのではなく、客観的に分かりやすい「からだの傷」という言葉が出てきましたね。
確かに、からだの傷であれば傷付いたこと・傷が治ったことが一目で分かります。
感情や気持ちもそのように分かりやすく見えたらいいですが、そうはならないという対比として表現したのでしょうか。
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心のいたでは
いやせはしない
≪時の過ぎゆくままに 歌詞より抜粋≫
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ここで「心のいたで」という歌詞が出てきますね。
漢字にすれば「痛手」で、意味は重症といったところでしょうか。
心の傷とは言わないのは、先ほどの考察から、からだの傷とこころの傷の違いからだと解釈できます。
一目では分からない傷を傷と表したくなかったのでしょうか。
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小指に食い込む
指輪を見つめ
あなたは昔を
思って泣いた
≪時の過ぎゆくままに 歌詞より抜粋≫
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この「小指に食い込む指輪」というので、本来傷と言う程ではない「指輪の跡」の存在を引き立たせているように思えます。
この跡は傷なのか、それとも痛手なのか、跡を見た自分はどのように受け取ったのでしょう。
変わる歌詞と変わる感情
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時の過ぎゆくままに
この身をまかせ
男と女が
ただよいながら
≪時の過ぎゆくままに 歌詞より抜粋≫
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ピアノの後の歌詞と指輪の後の歌詞は、「時の過ぎゆくままに」から「ただよいながら」までが共通するものとなっています。
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堕ちてゆくのも
しあわせだよと
二人つめたい
からだ合わせる
≪時の過ぎゆくままに 歌詞より抜粋≫
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もしも二人が
愛せるならば
窓の景色も
かわってゆくだろう
≪時の過ぎゆくままに 歌詞より抜粋≫
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異なるのがその後で、ピアノのほうは「堕ちていくのもしあわせだよと 二人つめたいからだ合わせる」となっており、指輪のほうは「もしも二人が愛せるならば 街の景色もかわってゆくだろう」となっています。
ピアノのほうはどんなに辛いことがあっても、二人でいれば幸せだと信じていることが分かりますね。
しかし、場面は一転して指輪のほうは愛することに、「もしも」という言葉を使っています。
愛すること自体が仮の話になっており、今はお互いに愛していないことが伝わってきました。
更には、街の景色に目を向けており、相手のことを見ていない描写になっています。
きっとピアノのときは不幸だとしても二人は愛し合っていたと信じていたのでしょう。
しかし、指輪のときには過去の人だと思い、既に別の道に目を向けており未練は無いように思います。
向く先によって感情の在処も伝わってくる歌詞の変化になっていますね。
単なる失恋ソングでは無い!
初めは悲しく辛い気持ちだけが感じ取れましたが、時が過ぎると視線も街の景色に自然と向くようになり気持ちが吹っ切れたような感情の変化がありました。冒頭の泣いている場面からは想像もつかないことでしたが、時間が解決してくれるといった一曲となっていますね。
単純な失恋ソングではなく、そこから気持ちを立て直せる強さを感じられる曲でした。