Ayase×Adoが生み出す「ドクターX」の主題歌
Ado『episode x』は、2024年12月6日にデジタルリリースされた楽曲で、『劇場版ドクターX』の主題歌です。
2021年にテレビ放送された第7シリーズでは、『阿修羅ちゃん』という楽曲を提供。
今回の楽曲は、YOASOBIメンバーでもあり個人でも活躍しているAyaseがAdoに楽曲提供するという形で誕生しました。
『ドクターX』完結となった劇場版では、主人公・大門未知子の生き様を写したかのような歌詞が印象的です。
シリーズ最新作に続く劇場版でのAdoの力強い歌声と、楽曲の世界観がどのように物語と絡んでいくのか、歌詞を深掘りしながら考察していきましょう。
「ドクターX」とリンクする「episode x」というタイトル
タイトルから分かるように、この曲の歌詞は、まさに大門未知子の心の内を代弁しているようです。
誰にも明かされることのない胸の内が『episode x』なのでしょうか。
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希望は時折 残酷だった
笑えないアイロニー
いつも可能性の裏側には
不可能が潜んでいる
≪Episode X 歌詞より抜粋≫
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楽曲の冒頭から、医学の難しさ、医師の苦悩を思わせる歌詞が並びます。
医学がどれほど進歩しようと、100%確実に救えるということはありません。
希望を見出せば見出すほど、救えなかった時の絶望感、やるせなさは大きなものとなるでしょう。
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瞬間的イメージ
溢れる Terror, Terror
もう 棲みつく臆病は
Get out. Get out.
≪Episode X 歌詞より抜粋≫
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一度の失敗が命取りになる世界です。
過去の失敗、救えなかった命。
それが心を蝕み、恐怖感に苛まれ、人を臆病にするのでしょう。
人を救う医療行為は、素晴らしい行為であると同時に、命がけの、恐ろしい行為でもあるのです。
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不安定な感情に視界が歪んだ
このままじゃ
Falling down
焦燥に応答して
Burning up
Breaking down
≪Episode X 歌詞より抜粋≫
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不安は人の手元を狂わせ、判断を鈍らせる、手ごわい敵です。
焦れば焦るほど、正しい判断ができず、迷宮に迷い込んでしまうジレンマ。
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損傷した冷静のバリア
うっせぇわ 脳内に響いた
Hurry up
Flash back
≪Episode X 歌詞より抜粋≫
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いつもなら冷静に判断できることが、恐怖で狭くなった視界では正しい判断が下せないもどかしさ。
焦燥感を、Adoの楽曲名「うっせぇわ」一言で表現しているところに、センスと遊び心を感じます。
頭の中のノイズをシャットアウトし、目の前の現実に向き合わなければ、救える命も救えない。
人の命を預かる、医師という仕事の厳しさ、恐ろしさ、プレッシャーの重さをうまく表現している歌詞です。
大門未知子の生き方を表現したような歌詞
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口に出せないほど
脆い覚悟じゃ
何も救えなかった
≪Episode X 歌詞より抜粋≫
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誰かの命を助けるということは、その命を救えなかった時の覚悟も引き受けるということなのでしょう。
どれほど恐ろしくても、弱い志ではすぐに折れてしまう。
それでは誰も救うことができません。
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邪魔だ
未完成な決意などいらない
弱音は捨て去って
たとえ僅かな望みでも
この手を離したりはしない
≪Episode X 歌詞より抜粋≫
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目の前に、ほんの僅かでも望みがあるのなら、手を引きはしない。
失敗のリスクを恐れることなく立ち向かう。
その勇気を、決意を表現したような歌詞が印象的です。
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もう弱い私はいない
何度だって颯爽と Coming back
あんなこんな難題もクリア
そう 私を呼ぶ声があれば
どんなステージでも構わない
何度だって堂々と Show you now
≪Episode X 歌詞より抜粋≫
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大門未知子の決めゼリフ「私、失敗しないので。」という言葉は、こうした強い決意から生まれるのでしょう。
言葉通りに受け取れば傲慢に聞こえるこのセリフも、見えない努力や葛藤の上に成り立っていると思うと、非常に深みを感じます。
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あんなこんな強敵も撃破
嗚呼 何回だって唱えるさ
そう 私に失敗はない
≪Episode X 歌詞より抜粋≫
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失敗しないと高をくくっているのではなく、絶対に成功させるという強い意志。
自分を追い込み、技術を磨き上げ、誰も死なせない覚悟で立ち向かう彼女の、孤独な強さを感じます。
恐怖に打ち勝った者だけが手に入れた強さ
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何回メスを入れてもどうしたって
Bad things 変わらないものはあって
簡単だよな諦めちゃうのは
なんてよぎる度思い返す
ずっとずっと想いを馳せた
あんな風になんて描いてた
≪Episode X 歌詞より抜粋≫
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命を前にして、絶対の自信を持てる人はそう多くないでしょう。
医学の限界を知っていれば尚のこと、不安や恐怖が頭をよぎることと思います。
どれほど経験を積んでも、何度挑戦しても、悪い結果はついてまわるもの。
自分の無力さを感じる度に、諦めたくなることもあるでしょう。
しかし、投げ出すのは一瞬です。
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だけどずっと本当は怖くって
それでも あなたがくれた
言葉さえあれば闘えるのさ
≪Episode X 歌詞より抜粋≫
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恐怖に怯える心を奮い立たせてくれる、大切な人の言葉。
なりたい自分。
目指し続ける理想の姿。
「私もあなたのようになりたい」という強い想いがあるからこそ、何度挫折しても、人は立ち上がることができるのでしょう。
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ずっと私が見ていた
あなたと共に見ていた
二つとない未来を今
邪魔させない
そうこの覚悟は
誰にも采配の権利など無い
≪Episode X 歌詞より抜粋≫
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この道で戦う。
医師として、高みに上り詰めると決めた覚悟。
それが茨の道であったとしても、諦めないと決めたその道を突き進む。
人が決めたことを、その覚悟を邪魔したり、奪ったり、笑ったりする権利は誰にもありません。
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涙飲む日があろうとも
無駄な瞬間は一つとして無い
掬い取った僅かな望みを
掴み切って何度でも
繋ぎ合わせる
そうやってここまで来たんだ
あなたと共に
≪Episode X 歌詞より抜粋≫
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自分が信じた人と、信じた未来に向かって歩み続ける。
それが、大門未知子の強さであり、彼女の生き方なのでしょう。
孤高の生き方を選ぶことは、容易ではないはずです。
誰かに寄りかかることをしない彼女の生き方は、敵を作りやすく、決して生きやすい生き方ではないでしょう。
それでも、自分が信じた道を、信じた人と、なりたい自分を目指して突き進む姿は美しく、眩しいのです。
簡単には真似のできない生き方をしているからこそ、孤高。
「強い自分」という理想像を打ち立てているからこそ、彼女は強いのです。
それが張りぼてになってしまわないように、「強い自分」を現実のものにするため、人一倍の努力と覚悟で挑む。
それが大門未知子という外科医なのです。
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嗚呼 何回だって唱えるさ
そう 私に失敗はない
≪Episode X 歌詞より抜粋≫
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彼女が口にする「私、失敗しないので。」という言葉は、強い自分を保ち続ける魔法の言葉であり、最大限の覚悟と言えるのではないでしょうか。
最後に、『episode x』のMVと、『劇場版ドクターX』とコラボしたスペシャルPVを紹介します。
心の内の恐怖と戦う葛藤や、それを乗り越えて強さを手に入れる様子が上手く表現されていて、楽曲世界をさらに楽しめる映像作品に仕上がってるので、ぜひチェックしてみてください。
『劇場版ドクターX』とコラボしたスペシャルPVを見てから劇場版を観たり、曲を聴いてみたりすると、それぞれの作品のよさが一層分かるのではないでしょうか。