新たな世界への幕開け
アニメ『薬屋のひとりごと』といえば、主人公の猫猫(マオマオ)が毒見をするシーンが有名ですね。この楽曲にはタイトルにもあるように、「花」が至るところに散りばめられています。
スズランやトリカブトなど毒を持つ花は数多く存在しますが、このアニメの名シーンのキーである「毒」と本楽曲の歌詞は何か関係がありそうですね。
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ゆらゆらり
はらはらり
色とりどり
乱れ咲き
花の街思い出す
この空から
≪百花繚乱 歌詞より抜粋≫
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はじめは掴みどころの無いふわふわとした擬音が流れてきました。
その擬音から察するに、空から地面にゆっくり落ちているように思います。
「色とりどり」という歌詞から、先ほど挙げた綺麗な白色のスズランや綺麗な青紫色のトリカブトなど、毒を持つ個体の色鮮やかさが思い出されました。
映画『ファインディング・ニモ』で有名なカクレクマノミが住まう、イソギンチャクも毒々しい色味をしていますよね。
この歌詞だけを聴くと、花びらが空から舞い散る美しい情景が浮かびます。
そして、「花の街思い出す」という花の街とは一体何なのでしょうか?
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ひょんな出来事から
やってきたこの場所は
遥か遠くにあった
煌びやかな舞台
ハっとするほど
鮮やかな世界があるんだと知った
≪百花繚乱 歌詞より抜粋≫
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これらの歌詞からは、今までの落ち着いた場所からかけ離れた、煌びやかな世界にやって来たことが分かります。
先ほど「花の街思い出す」とありましたが、それはもしかして、煌びやかな世界にやってきた時に元々居た落ち着いた場所への想いを馳せていた可能性がありますね。
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あなたの無理難題に
応えていくその度に
あっと言わせるような
奇想天外な答え合わせで
辿り着いたその先に
新しい景色が待っているんだ
≪百花繚乱 歌詞より抜粋≫
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その次には「あなたの無理難題に応えていく」とあり、ここから主題歌でもある『薬屋のひとりごと』での猫猫の挑戦する姿が思いだされます。
さらには、無理難題への挑戦と聞けば、昔話『かぐや姫』での求婚者からの無理難題も思い出されます。
かぐや姫は結局誰も選ばなかったことを思うと、無理難題に応えられるのは「奇想天外な答え」が出来るような機転の利く人でいる必要があるのだと思えます。
そうした無理難題に対する「奇想天外な答え合わせ」が出来た時には、ようやく新しい景色に辿り着けるようです。
ですがこれは、場所が変わらず同じ景色であったとしても、ひらめきによって物事に対する考えが変わり、それによって見えてくる景色も変わったという意味かもしれません。
「かぐや姫」とは正反対の挑戦の姿勢

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摩訶不思議なミステリー
次から次に起こるたび
巧妙なからくりも
暴いてみせましょう
≪百花繚乱 歌詞より抜粋≫
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今しがた言及した無理難題に関することでしょうか?
「摩訶不思議なミステリー」とありますが、ミステリーと言うと誰かが裏で暗躍したり計画を立てたりといったイメージがあります。
ホラーならまだ自然の一部ですが、ミステリーと言えば人為的なものといったところでしょうか。
これらの考えからミステリーと言い放つところは、『薬屋のひとりごと』の政治的要素がふんだんに盛り込まれている箇所が合っていますね。
猫猫は作中で一目置かれている存在ですが、それを良いように使われている部分もあります。
そうしたシーンを「巧妙なからくり」として言い表しているのでしょうか。
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どんな難題でも
種や仕掛けはあるんだ
≪百花繚乱 歌詞より抜粋≫
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続くこの歌詞からも、やはり人為的な策略が感じ取れます。
もしかしたら、『かぐや姫』について言及した「機転の利く人」というのも、絶対に出来ないと高を括っているかぐや姫をアッと驚かせる方向から「種や仕掛け」を見破る必要があったのかもしれませんね。
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副作用は気にしない
必ずや導き出すから
≪百花繚乱 歌詞より抜粋≫
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副作用という言葉ですが、それは「本来の目的を叶えるために必要な犠牲」とも言い換えられると考えます。
これまでの”人為的な策略”などの考察から、他人を陥れようとする仄暗い雰囲気が感じ取れました。
そうした背景を必ず暴くという意味が込められているのでしょうか。
どんな真実があったとしても、揺るぎない真実を追い求める覚悟が感じられました。
出会いによって生まれた感情。その先にある未来

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あぁこの場所で触れた
人の哀しみや喜びがある
そのひとつひとつが
心を震わせる
≪百花繚乱 歌詞より抜粋≫
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ここで出てくる「この場所」とは今いる煌びやかな世界のことでしょうか。
これまでの世界とは違い、多くの人との出会いがあったことが伺えます。
その出会いによって、人の哀しみや喜びという感情が突き動かされる出来事があったように思えます。
「そのひとつひとつが心を震わせる」という歌詞から、それらの経験が自分自身の成長の一部となっているようですね。
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ハッとしちゃうほど
鮮やかな世界がここにあるんだ
あなたの無理難題に
応えていく毎日に
あっと言わせるような
奇想天外な答え合わせで
辿り着いたその先に
新しい私が待っているんだ
≪百花繚乱 歌詞より抜粋≫
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本楽曲の初めに出てきた歌詞では「ハっとするほど鮮やかな世界があるんだと知った」とありましたが、ここでは「ハっとしちゃうほど鮮やかな世界がここにあるんだ」となっています。
ここから、その鮮やかな世界に身を置いている感覚が生まれてきたように思います。
今まではきっと”煌びやかな世界”と称していた場所が、少しずつ自分の一部になってきているのでしょうか。
未だにハっとする気持ちがあるので慣れ親しんだとまではいきませんが、これまでとは違う気持ちの変化があったように感じました。
また、違いとしては「辿り着いたその先に新しい景色が待っているんだ」という歌詞が、「辿り着いたその先に新しい私が待っているんだ」となっています。
通常新しい環境に身を置くことになった場合、どんな環境なのかの把握を優先すると思います。
それが出来てから、その環境に適応するために自身のことがようやく考えられるのではないでしょうか。
その考えを踏まえると、歌詞の「景色」が「私」となっていることから、自分のことも考えられる余裕が出てきたように思えます。
多くの人との出会いによって生まれた感情から、自分がここで何が出来るかなど、新しい視点で物事を考えられるようになった可能性がありますね。
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あの頃は想像もしていない
未来が咲き始めている
こんな日々も悪くはないかな
≪百花繚乱 歌詞より抜粋≫
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そして、「あの頃」という特徴的なワードが見受けられます。
きっとあの頃というのは、冒頭で言及した「今までの落ち着いた場所」のことでしょうか。
これまでの歌詞から「無理難題」や「摩訶不思議なミステリー」など、非常に大変な出来事に遭遇したことが伺えますね。
それでもポジティブに捉えて「未来が咲き始めている」や「こんな日々も悪くはないかな」という思考になっているようです。
昔には想像できなかった未来への道を歩んでいる姿が浮かびました。
諦めることない情熱を咲かせ続ける自分だけの花
本楽曲を聴くと、環境の変化によって仄暗い陰謀に巻き込まれかけるような大変な出来事があったように思います。しかしそれだけでは終わらず、多くの人との関わりによって自分自身を成長させることが出来たようです。
人との出会いは何物にも代えられぬ大きな功績であると思います。
そうした経験は単なる思い出ではなく、やがて自分というひとりの人間を深める要因となっていると考えました。
この曲を聴いて、過去の出会いを振り返ってみるのも良いかもしれませんね。
そして、最後のサビの前にある「未来が咲き始めている」という言葉から花が想像させられました。
冒頭にも最後にもある「ゆらゆらり」や「ひらひらり」という擬音は、もしかしたら未来を華々しく輝かせるために咲いている美しい花を描写していたのかもしれません。