リバイバルヒットを果たしたRATS&STAR「め組のひと」

RATS&STAR『め組のひと』は、1983年4月1日に発売された、RATS&STARとして1枚目のシングルです。
ソロ活動でも存在を知られている鈴木雅之がリードボーカルを務め、高い歌唱力とブラックミュージックの心地よいメロディが魅力。
2010年に倖田來未がカバーし、2018年にはTikTokで話題になった曲でもあるので、リアルタイム世代でなくても知っている人は多いのではないでしょうか。
「め組」というのは、江戸時代の火消しを意味します。
とは言っても、『め組のひと』は火消しの歌ではありません。
資生堂のキャンペーンソングとして起用された、夏にぴったりの楽曲。
では、「め組」が意味するところは何なのか、歌詞を深掘りしながら探っていきましょう。
「め組」のごとく人目を集める存在感

江戸時代の火消しである「め組」は、纏(まとい)という道具で火事場を知らせたため、非常に目立ちやすい存在です。
----------------
いなせだね
夏を連れて来た女
渚まで 噂走るよ めっ!
涼し気な 目もと
流し目 eye eye eye
粋な事件
起こりそうだぜ めっ!
≪め組のひと 歌詞より抜粋≫
----------------
『め組のひと』に登場する女性も、人目を引く存在なのでしょう。
「渚まで 噂走るよ」という歌詞からも、彼女の存在にビーチ中の男性が釘付けになる様子が目に浮かびます。
「いなせ」「粋」という言葉が江戸時代を連想させますし、決めポーズにもなっている「め!」という言葉が「め組」とリンクしていて見事な歌詞センス。
男たちの視線を集める彼女の存在はまさに「め組のひと」です。
----------------
妖しい Sweet Baby
め組のひとだね
お前のニュースで
ビーチは突然 パニック
≪め組のひと 歌詞より抜粋≫
----------------
彼女が登場するだけで、きっとビーチはざわついたことでしょう。
ほかの女性たちの視線が気になるところですが、男性目線で描かれる歌詞がかえって夏らしい情景を浮かび上がらせます。
----------------
浮気な微笑に
俺たち気もそぞろ
男たちの心
奪うたびにお前
奇麗になってくね…
夏の罪は素敵すぎる
≪め組のひと 歌詞より抜粋≫
----------------
「浮気な微笑」を浮かべる彼女は、男たちを手玉に取る魔性の女なのでしょうか。
罪な存在さえも「素敵」だと思わせる彼女の魅力に恐れ入ります。
小粋な歌詞で表現する「め組のひと」が意味するもの

----------------
小粋だね 髪に飾った花も
細い腰
あわせ揺れるよ めっ!
ひと夏の 恋を引き込む
eye eye eye
気まぐれに
片目閉じるよ めっ!
≪め組のひと 歌詞より抜粋≫
----------------
細い腰の動きに合わせて揺れる花。
これだけで、男たちの視線は独り占めできそうです。
ビーチに姿を現しただけで周囲をざわつかせるほどの美女。
誘惑するような視線。
気まぐれなウインクは、誘っているのでしょうか。
本心を悟らせないまま男たちを煙に巻く。
彼女はまさに魔性の女であり、圧倒的な美と誘惑を前に、翻弄されるしかない男たちの姿が目に浮かびます。
----------------
今年はお前が
渚きってのアイドル
Baby,baby、baby
be my girl
抱きしめたい be my girl
≪め組のひと 歌詞より抜粋≫
----------------
大勢の人で溢れかえるビーチを、たった一人の女の存在が掻き乱す。
罪さえも素敵だと言わしめる彼女は紛れもなく「渚きってのアイドル」です。
----------------
お前が微笑めば
すべてが上の空
≪め組のひと 歌詞より抜粋≫
----------------
ドラマなどで、美しい女性に微笑みかけられて上の空になっている男性の描写がありますが、『め組のひと』で描かれるのはまさにそのワンシーンでしょう。
ステレオタイプの美女だからこそ、曲を聞くだけでありありとビーチの様子を想像できるのです。
男性の視線を集め、心を奪う魔性の人。
彼女の美しさ、艶やかさ、妖艶さ。
そのすべてを「め組のひと」という言葉で表現しているところにセンスを感じます。
若い世代にも刺さるキャッチーなメロディと決めポーズ
『め組のひと』がリリースされたのは1983年。40年以上昔の曲が、今の時代を生きる若者に刺さるというのはなぜか。
その答えは、ノリやすいキャッチーなメロディと歌詞、そして「め!」という決めポーズにあるのでしょう。
倖田來未がカバーしたことで、より現代的に、洗練されたオシャレなイメージを持った人も多いかもしれません。
しかし、オリジナルの『め組のひと』そのものが、非常にキャッチーでとっつきやすい楽曲なのです。
鈴木雅之の伸びやかなボーカルの心地よさ。
ノリのいい歌詞。
音楽に詳しくない人でも真似しやすい、シンプルな決めポーズ。
2016年のライブ映像を見ても、非常に盛り上がっていることが分かります。
時を経ても色あせない魅力の秘密は、こうしたキャッチーさにあるのでしょう。
音楽とは、音を楽しむもの。
だからこそ、初めて聞いた人でもすぐに参加できる、分かりやすい振り付けは大きな魅力だと言えます。
倖田來未がカバーしたバージョンの映像もあるので、オリジナルと聞き比べてみるのも楽しいと思います。
夏のキャンペーンソングとして誕生した昔の楽曲が、40年もの時を経て、今も人々に聞かれている不思議。
長年愛される楽曲の秘密と色あせない理由を、『め組のひと』から教わったような気がします。