新たなガンダムシリーズ開幕を彩る主題歌に注目
2025年1月20日に配信リリースされた米津玄師の『Plazma(読み方:プラズマ)』は、劇場先行版『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』の主題歌として書き下ろされました。『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』は、エヴァンゲリオンシリーズを手がけるスタジオカラーとガンダムシリーズを手がけるサンライズがタッグを組んで生み出す新たなガンダムシリーズ。
TVシリーズの放送に先駆け、一部話数を劇場上映用に再構築した作品が『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』です。
平穏な日常を送っていた女子高生が戦争難民の少女との出会いをきっかけに非合法な決闘協議に巻き込まれていくストーリーと、ハイテンポで展開していく爽快な『Plazma』が絶妙にマッチしています。
雷や炎を起こす「Plazma(Plasma)」が楽曲とどのように関連しているのか、歌詞の意味を考察していきましょう。
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もしもあの改札の前で 立ち止まらず歩いていれば
君の顔も知らずのまま 幸せに生きていただろうか
もしもあの裏門を越えて 外へ抜け出していなければ
仰ぎ見た星の輝きも 靴の汚れに変わっていた
≪Plazma 歌詞より抜粋≫
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1番冒頭の歌詞は、劇中の内容とリンクしているのが印象的です。
主人公は「もしも」という言葉を使い、今の現実とは違う未来の可能性について考えています。
“あの時ああしていれば”、もしくは“あの時こうしていなければ”と考えるのは、大抵現状に不満や悩みがある場合でしょう。
この部分でも「君の顔も知らずのまま幸せに生きていただろうか」とあり、「君」との出会いで人生が変わったと感じていることが分かります。
しかし、その心の中は後悔ばかりではないようです。
続く歌詞では、もしも行動しなければ「仰ぎ見た星の輝きも靴の汚れに変わっていた」と歌っています。
「改札」や「裏門」は、別世界と繋がる比喩的な扉。
「君」と出会い、新たな世界へ飛び出すために行動したからこそ見られた美しい景色を想いながら、選んだ道は間違いではなかったという結論に達したことが窺えます。
プラズマのエネルギーが人を強くする

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寝転んだリノリウムの上 逆立ちして擦りむいた両手
ここも銀河の果てだと知って 眩暈がした夜明け前
聞こえて 答えて 届いて欲しくて 光って 光って 光って叫んだ
金網を越えて転がり落ちた 刹那 世界が色づいてく
≪Plazma 歌詞より抜粋≫
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「リノリウム」は学校や病院などの床材によく用いられる天然素材です。
劇中の主人公が女子高生であることから、学校の床に寝転んでいる様子がイメージできますね。
若い頃は狭い世界の中で生きているためどんなことにも自信があり、思わず力を過信して失敗することもあります。
しかし成長するにつれて多くの人と出会い世界が広がっていくと、「ここも銀河の果て」でまだ知らない広大な世界があることを思い知らされます。
それは自身の未熟さを痛感させると同時に、無限の可能性への期待を高めてもくれるでしょう。
誰かのために自分の想いを届けたいと必死に行動するとき、人は輝くものです。
「金網を越えて転がり落ちた」様子は不格好でも、その一歩が目の前の世界や人生を色づかせます。
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飛び出していけ宇宙の彼方 目の前をぶち抜くプラズマ
ただひたすら見蕩れていた 痣も傷も知らずに
何光年と離れていても 踏み出した体が止まらない
今君の声が遠く聞こえている
光っていく
≪Plazma 歌詞より抜粋≫
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サビでは、まだ知らない「宇宙の彼方」へ「飛び出していけ」と自分を鼓舞しています。
「プラズマ」とは固体・液体・気体に並ぶ物質の第4の状態のことで、雷や炎だけでなく太陽や蛍光灯なども含め私たちの身近にあるエネルギーの象徴です。
この曲での「プラズマ」は、人の心の中でほとばしる情熱を指していると考えられます。
情熱の輝きは時には自分自身すら魅了し、さらなる力を生み出すでしょう。
「痣」や「傷」を負っても、その力強いエネルギーがあればどんな未来へも駆け抜けて行けるはずです。
「君の声」が聴こえている限り、目標は見失いません。
君と出会ったから今の僕がいる

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改メ口の中くぐり抜け 肌を突き刺す粒子
路地裏の夜空に流れ星 酷く逃げ惑う鼠
≪Plazma 歌詞より抜粋≫
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「改メロ(改札メロディ)」という日常を通過し、新たな世界への扉が開きます。
「路地裏の夜空に流れ星 酷く逃げ惑う鼠」というフレーズは、混沌と喜びが入り交じる人生そのものを表しているのかもしれません。
良い面も悪い面もあるからこそ、毎日が一層輝くのではないでしょうか。
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もしもあの人混みの前で 君の手を離さなければ
もしも不意に出たあの声を きつく飲み込んでいれば
もしもあの改札の前で 立ち止まらず歩いていれば
君はどこにもいやしなくて 僕もここにいなかった
≪Plazma 歌詞より抜粋≫
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人は日々の中で様々な後悔を繰り返します。
大切な人を傷付けてしまったり心の距離が離れてしまったりした場合には特にそうでしょう。
失敗ばかりしていると、初めから出会わなければ良かったのではないかと考えてしまうこともあります。
しかし、もし本当に出会わなければ「君はどこにもいやしなくて 僕もここにいなかった」と分かっています。
今の自分があるのは、この出会いがあったから。
得てきた喜びや成長も全てなかったことになってもいいとは到底思えません。
この言葉には、偶然のような出会いや人との繋がりの価値が示されています。
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あの日君の放ったボールが額に当たって
倒れる刹那僕は確かに見た
ネイビーの空を走った飛行機雲を
これが愛だと知った
飛び出していけ宇宙の彼方 目の前をぶち抜くプラズマ
ただひたすら見蕩れていた 痛みにすら気づかずに
何光年と離れていても 踏み出した体が止まらない
今君の声が遠く聞こえている
光っていく
≪Plazma 歌詞より抜粋≫
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その出会いは衝撃的で、痛みすら伴うものでした。
それでもその瞬間、「愛」という熱いエネルギーの本質を知ったようです。
感じた痛みがつらいものだと忘れるほど愛のエネルギーに魅了された主人公は、どこまでも進んで行けそうです。
人の心に宿る「プラズマ」が輝き出会いによって共鳴した時、人生はより素晴らしいものになっていくのだと教えてくれている気がします。
ガンダムの世界と親和するエネルギッシュな楽曲!
米津玄師の『Plazma』は生命が持つ無限のエネルギーの魅力と、偶然かつ奇跡的な出会いによってエネルギーの輝きが増していく様子を捉えています。痛みや傷さえ力に変えて臆せず進み続ければ、いつも良い選択ができたと胸を張って言えるでしょう。
長年のガンダムファンも今作からガンダムに触れる方も、作品とのリンクを感じながら歌詞に込められた想いを感じ取ってください。