国内外に影響を与えた名歌手・いしだあゆみの代表曲に注目
2025年3月に甲状腺機能低下症のため76歳で亡くなった、歌手で俳優のいしだあゆみ。中学生で芸能界入りしてから精力的に活動を続け、2021年には旭日小綬章を受章した経歴を持つ日本が誇る名歌手であり名優です。
いしだあゆみの代表曲といえば、1968年リリースの『ブルー・ライト・ヨコハマ』を挙げる方が多いでしょう。
『ブルー・ライト・ヨコハマ』は作詞を橋本淳、作曲を筒美京平が務めて制作された横浜のご当地ソング。
心地よいメロディと物憂げで色気のある歌声が注目を集め、初のオリコン週間1位を獲得した後に累計150万枚を超えるミリオンセラーとなり、『NHK紅白歌合戦』では計3回歌唱されました。
さらに、当時日本の歌の放送や販売が禁止されていた韓国でも広まり、“ソウルで最も知られる日本の歌謡曲”となってK-POP音楽に多大な影響を与えたといわれています。
国内外で大きな注目を集めたこの名曲がどのような情景を歌っているのかを知るために、歌詞の意味を考察していきましょう。
“ブルー・ライト”が示すのはカンヌの夜景だった!

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街の灯りが とてもきれいね
ヨコハマ ブルー・ライト・ヨコハマ
あなたと二人 幸せよ
≪ブルー・ライト・ヨコハマ 歌詞より抜粋≫
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1番冒頭で「街の灯りがとてもきれいね」と歌われていることから、夜の風景を描写していることが読み取れます。
タイトルでもある「ブルー・ライト・ヨコハマ」のフレーズも、夜景の様子を連想させますね。
今では夜景のイメージも強い横浜ですが、楽曲制作当時はそれほど注目されてはいませんでした。
橋本は作詞をする際、港の見える丘公園から見える横浜と川崎の工業地帯の青い夜景を念頭に置いていましたが、「ブルー・ライト」が強調されたのにはかつて目の当たりにしたフランスのカンヌの夜景が関係しています。
海に面しているカンヌの空港は滑走路が海に突き出る構造となっていて、海から陸地へと下りていく飛行機の中から見た夜景に感動したのだそう。
戦後の傷痕が残る日本の風景とは違う、地中海の青に魅せられたのです。
同じく海に面する横浜を「ブルー・ライト・ヨコハマ」と表現することで、夜景の美しさを示すと共に日本の復興への願いを込める気持ちもあったのかもしれません。
続く「あなたと二人 幸せよ」のフレーズからは、あるカップルの夜のデートを描いていることも分かるでしょう。
神秘的なブルーをモチーフにすることにより、激しさはなくとも穏やかに愛し合うカップルの関係が伝わってきます。
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いつものように 愛のことばを
ヨコハマ ブルー・ライト・ヨコハマ
私にください あなたから
≪ブルー・ライト・ヨコハマ 歌詞より抜粋≫
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「いつものように」とあることから、恋人は「愛のことば」を恥ずかしがらずにストレートに伝えられる人のようです。
それでも女性からすれば、このようなロマンチックな夜景の前では改めて伝えてほしいと思うものでしょう。
愛を確かめ合うカップルの微笑ましい姿が目に浮かびます。
いつまでも一緒にいたい人

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歩いても 歩いても
小舟のように わたしはゆれて
ゆれて あなたの腕の中
≪ブルー・ライト・ヨコハマ 歌詞より抜粋≫
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この部分では「小舟」が登場します。
横浜の港には大きな船が停泊しているものの、「小舟」と呼べる小さな船は見当たりません。
歌詞にも「小舟のように わたしはゆれて」とあるため、小舟は主人公の女性の心を表してると解釈できるでしょう。
また「歩いても 歩いても」というフレーズに注目すると、人生の紆余曲折を表しているように思えます。
恋の観点で見れば、どれほど愛し合っていて長い時間を一緒に過ごしても、時には心が揺れたり気分の波のせいで恋人とぶつかったりしてしまうことを示しているのかもしれません。
それでも結局「あなたの腕の中」に戻っていることから、二人の強い愛と絆が感じられます。
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足音だけが ついて来るのよ
ヨコハマ ブルー・ライト・ヨコハマ
やさしいくちづけ もういちど
≪ブルー・ライト・ヨコハマ 歌詞より抜粋≫
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周囲は人影が少なく静かで、自分たちの「足音だけがついて来る」ように感じます。
「やさしいくちづけ もういちど」という言葉から、甘い雰囲気が読み取れますね。
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あなたの好きな タバコの香り
ヨコハマ ブルー・ライト・ヨコハマ
二人の世界 いつまでも
≪ブルー・ライト・ヨコハマ 歌詞より抜粋≫
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互いの距離が近づくと「あなたの好きなタバコの香り」が漂ってきます。
それは彼女にとって嗅ぎ慣れた彼の香りなのでしょう。
その香りに包まれると、幻想的な青い光も相まってまるで「二人の世界」に入り込んだような気持ちです。
いつまでもこうしていたい、いつまでも彼と愛し合っていきたいという愛にあふれる想いが垣間見えます。
美しい夜景を際立たせる名曲に浸ろう!
いしだあゆみの『ブルー・ライト・ヨコハマ』は、横浜で夜のデートを楽しむカップルの美しい恋模様を描いた楽曲です。これまで多くのアーティストにカバーされてきましたが、彼女の印象的な歌声と表現は唯一無二の魅力を放っています。
色褪せない名曲の良さを語り継ぎ、大切に後世に残していきたいですね。