爽やかな香りが漂うかつての恋心
2025年3月26日発売の乃木坂46の38thシングル『ネーブルオレンジ』。今作では5期生の井上和と中西アルノがWセンターを務めており、タイトル通り甘酸っぱい恋心を歌った楽曲となっています。
また、池田大が監督を務めたMVは「バラバラの生活を送る少女たちが、偶然同じ電車・行き先に向かう」というストーリーとなっていて、東急電鉄株式会社の協力のもと実際の駅や電車も使って撮影されました。
リアルな情景から幻想的な世界に入り込んでいくような展開で、楽曲の繊細な空気感とマッチしています。
どのような心情を歌っているのか、さっそく歌詞の意味を考察していきましょう。
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ネーブルオレンジ 一つだけ手にして
君の街まで電車に乗った
春は何かを思い出させる
切なくて 甘酸っぱい香りが誘うんだ
≪ネーブルオレンジ 歌詞より抜粋≫
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主人公は「ネーブルオレンジ」を持って電車に乗り込みます。
目的地は「君の街」で、車窓からは春の花々で色づいた景色が見えます。
「春は何かを思い出させる」という言葉は、主人公が過去の思い出を振り返っていることをイメージさせるでしょう。
それには「君」が関係していて、手にしているネーブルオレンジと共鳴し「切なくて甘酸っぱい香り」を漂わせます。
この表現から、「ネーブルオレンジ」はかつて抱き未だに昇華しきれていない恋心のメタファーだと解釈できます。
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窓の外に雲ひとつない空
僕の気持ちは早送りされる
君に会えたら 何が言えるのだろうか?
スーパーマーケットに並んだ あの季節
≪ネーブルオレンジ 歌詞より抜粋≫
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車窓から見える景色は「雲一つない青空」です。
これは主人公の翳りのない晴れやかな心情を映しているのかもしれません。
主人公にとって「君」への恋心は切なくも、いつまでも記憶に留めておきたい大切なものなのでしょう。
「僕の気持ちは早送りされる」のフレーズは、電車で「君の街」へと近づいているときの逸る気持ちを表現しているように感じます。
そしてもし街に降り立ち、偶然再会できたら「何が言えるのだろうか?」とも考えているようです。
「スーパーマーケットに並んだ あの季節」の表現は、きっと再会したらネーブルオレンジが店頭に並ぶように甘酸っぱい気持ちで心が満たされるだろうという考えを示していると考察できます。
この想いを君に気付いてほしい

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ネーブルオレンジ 頬に近づけて
この瑞々しさに接吻したくなる
ボールみたいに上へと投げながら
今の現実はちゃんと受け止める
そして 初めて降りた駅の改札は
僕にどんな物語 見せるのか?
≪ネーブルオレンジ 歌詞より抜粋≫
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瑞々しく心に残る恋心を愛おしく感じる主人公。
とはいえ、恋が成就していない「今の現実はちゃんと受け止める」気持ちもちゃんと持っているようです。
「初めて降りた駅の改札は 僕にどんな物語見せるのか?」という問いかけから、淡い期待が垣間見えます。
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ネーブルオレンジ なぜに握りしめて
僕は知らない街へ来たのか?
この香りに惹かれ どこかで君が
気づいてくれたなら あの頃を語り合おう
少し厚めの この皮のその中に
僕が大切にしてた君がいる Ah
≪ネーブルオレンジ 歌詞より抜粋≫
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知らない街を歩きながら、自分がそこを訪れた理由と手にしたネーブルオレンジの意味を考えています。
彼女はもはや知らない街にいるのだから、わざわざ訪れる必要はありませんでした。
さらに言えば、あの頃の恋心を携えていってももうどうにもならないことも分かっています。
それでもこうしてやって来たのは、「この香りに惹かれ どこかで君が気づいてくれたなら あの頃を語り合おう」と思っているからです。
この恋の進展を望んでいるわけではありません。
ただ偶然どこかで会えたり、会えなくてもどこかで自分のことをふと思い出してくれたりするだけでいいのです。
ネーブルオレンジは、少し厚めの皮に守られて甘い果肉がたっぷりと詰まっています。
そんな風に主人公は心の中にいる彼女を大切に守ってきたので、彼女がいる街にやって来ました。
ピュアで深い愛情が伝わってきますね。
君が住む街で恋の甘さを思う

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ネーブルオレンジ 両手で包んで
恋の甘さを 今さら思う
君が一番好きだと言った
柑橘の青春はどこへ消えたのか?
≪ネーブルオレンジ 歌詞より抜粋≫
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心の中に仕舞ってきた大切な恋心を取り出して「恋の甘さ」について思い起こします。
彼女の近くにいた頃は、恋の苦さを感じることばかりだったのかもしれません。
しかし時が経つうちに、あの頃のつらさや痛みさえ甘酸っぱい思い出として蘇ってきます。
「君が一番好きだと言った 柑橘の青春はどこへ消えたのか?」のフレーズを見ると、彼が恋心をネーブルオレンジと表現していたのは彼女の一番好きな果物だったからのようです。
今も彼女への想いはありますが、強く恋焦がれていた頃の気持ちとは変わっていることを示しているのでしょう。
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なんてセンチメンタルな記憶
まさか 会えるわけなどないのに…
Ah それでもいい
君が住んでいると聞かされた
街を一目見たかっただけだ
片想いネーブルオレンジ
≪ネーブルオレンジ 歌詞より抜粋≫
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彼女を想いながら巡った季節は、「センチメンタルな記憶」となって胸の奥に残っています。
「まさか会えるわけなどないのに...」と現実を見つつ、「君が住んでいると聞かされた街を一目見たかっただけだ」と率直に語っています。
不器用で繊細な片想いの心に共感を覚えるのではないでしょうか。
電車は乃木坂46を表している?
乃木坂46の『ネーブルオレンジ』は、甘酸っぱい過去の恋心にスポットを当てた楽曲です。電車で知らない街に行き過去に想いを馳せるというシチュエーションは、乃木坂46という電車に乗り合わせたメンバーたちが卒業し、グループでの活動を振り返る様子とも重なるように感じます。
仲間が旅立っていく寂しさと切なさを感じながらも、新たな仲間と共に進み続ける彼女たちの想いに触れるような『ネーブルオレンジ』をお楽しみください。