「なるみや」生きづらさを抱えるリスナーの共感を得る
なるみやは、2004年生まれのシンガーソングライター。心の闇や葛藤を描いた等身大の歌詞が若い女性を中心に人気です。
作詞・作曲・編曲・MIXを自身で手掛け、ピアノ、ドラム、琴も弾けるマルチクリエイター。
2023年6月から活動を始めTikTokで人気に。
『だって、優等生』は、2025年3月26日にリリースされた1stEP『まどろみの記憶』に収録されている楽曲です。
優等生な自分でいなければならない辛さ、それを演じる生きづらさをポップなサウンドに乗せて描いています。
タイトルに込められた「だって、」の意味を含め『だって、優等生』の歌詞の意味を考察していきます。
「だって、」に込められた想い

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私 生涯だって優等生
大人たちの 従順な犬でありたいの
忠実に生きてこそ
脳が足らない雑魚と違うの
たちまちほらね もうお気に入り
≪だって、優等生 歌詞より抜粋≫
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最初の歌詞は「優等生」を演じる事で社会と上手くやっていける、という皮肉だと感じます。
社会生活において他人との関わりは避けられません。
学校では先生や他の生徒、会社では上司や同僚。
自分勝手にふるまえば、たちまち社会生活が上手くいかなくなるでしょう。
また、家庭内でも親の言う事をよく聞く「いい子」であれば、表向きは上手く回るでしょう。
主人公は優等生を演じる事で「みんなから気に入られ上手く立ち回っていけるよ」と、皮肉を込めて言っているのだと考察します。
「脳が足らない雑魚と違うの」の歌詞には「みんなもっと頭使って上手く立ち回ればいいのに」という、他者への優越感があると見受けられます。
しかし、優等生を演じる主人公にとっては、本当はその雑魚=他者がうらやましいのではないかとも感じます。
自分も好き勝手に生きたい、だけど優等生だからできない。
だから、あえて雑魚と見下す事で、心の平穏を保っているのではないでしょうか。
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汚らし 涙で濡れた
心の奥の深い穴を埋めて欲しいなら
密やかに かつ鮮やかな
弱みを晒しましょう
これも社会のお勉強ね
≪だって、優等生 歌詞より抜粋≫
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優等生でいる事・演じる事は、本当の自分ではないから辛い。
ならば「もっと自分を解放してもいいのではないか?」という気持ちが描かれていると感じます。
抑圧されている心を本当はもっと開放したい、という強い欲求が見られます。
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私 生涯だって優等生
大人たちの 従順な犬でありたいお年頃
君は 生涯到底劣等生
私よりも幸せにならないでね
ああ、自由に生きる君が私よりも
幸せにならないでね!
≪だって、優等生 歌詞より抜粋≫
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しかし、そんな欲求がありながらも、私はみんなの期待に応える「いい子」なのだから、「本当の自分を出すなんてとんでもない」という決意が感じられます。
こんなに自分を殺してがんばっているのだから「好き勝手に生きてるあなたは絶対に私より幸せにならないでよ」と訴えています。
それほど主人公は「優等生」でいる事のプレッシャーを感じているのでしょう。
そして、自由に生きられる人がうらやましくも、妬ましくも感じているのかもしれません。
「だって」という接続詞は、相手に反論したり言い訳をする時に使う言葉です。
だからこそ『だって、優等生』というタイトルにしたのかもしれません。
「だって、」という言葉を入れる事で、反論する主人公が感じられます。
優等生である自分と、本来の自分との心の葛藤が「だって、」に込められているのではないでしょうか。
「優等生でいたくない」という逆の心理

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白い肌と名前の
私に似合う私でいたいよ
弛まず欠かさずに媚び売り
≪だって、優等生 歌詞より抜粋≫
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きっと主人公は、優等生のイメージにピッタリの名前と雰囲気を持つ人物なのでしょう。
みんなに人当たりよく接する優等生。
「私に似合う私でいたいよ」の歌詞には、自分が創り上げた自分の理想像=優等生に縛られている事が感じられます。
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酷く濁ったソレに誰も気づきませんように
「生まれつき」?「灰色の域」?
そんなんどうしようもない
四つ折りあの日のカルテ
≪だって、優等生 歌詞より抜粋≫
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「酷く濁ったソレ」はきっと主人公の本心。
みんなが求める「優等生」を演じる事で起こる心の闇。
自分を出して好き勝手に生きる他者への妬み、それを押し殺す本当の自分との葛藤、他者の不幸せを願う嫌な自分。
そんな風に自分を抑圧することで起こってしまう心の不具合。
「カルテ」の歌詞は病院を想像させますね。
「生まれつき」「灰色の域=グレーゾーン」と少し衝撃的な言葉が並びます。
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反抗の先は伽藍堂
生まれた時が汚点の私だから
泥水で浸った脳には
あのボロ雑巾がよく似合う
≪だって、優等生 歌詞より抜粋≫
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自己肯定が低く自分を全否定する歌詞です。
主人公の心の闇を深く感じます。
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わたし...
私、障害だって。
≪だって、優等生 歌詞より抜粋≫
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サビで「私生涯だって優等生」と言っていた歌詞が、「私、障害だって。」に変わります。
この部分は歌詞を見ないと感じ取れない部分です。
なるみやが「生涯」と「障害」の歌詞に込めた意味はなんでしょうか?
現代は、昔よりも心の問題を抱えている人が多いと感じます。
現代社会における心の問題に切り込んだ歌詞は、生きづらさを抱える人々の共感を得る部分ではないでしょうか。
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逃げられない違和感に咽び泣き!
無垢な心蝕む 破廉恥
大人になるとは毒も頬張ることよ
幸せになりたいの
生涯だって優等生 これでいいの!
従順な犬でありたいの
幸せになりたい
≪だって、優等生 歌詞より抜粋≫
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私は、優等生でいる事から逃げられないのだろうか?
「大人になるとは毒も頬張る事よ」の歌詞には、嫌な事も受け入れる事が必要という意味だと捉えられます。
だから「幸せになりたい」と強く願う主人公は、本当の自分を抑えて優等生でいます。
この歌詞の部分には逆の心理が込められていると思います。
本当は、優等生でいたくない、従順な犬でいたくない。
これでいいの、と言いながら本当はこれでよくない。
ありのままの自分でいたい、という強いメッセージを感じるのです。
主人公の心の葛藤や心の闇が描かれた『だって、優等生』。
この歌の歌詞に「ありのままに生きる」という希望が見いだせたなら、少しは生きやすくなれるのかも知れません。
「だって、優等生」は闇の中に希望が見いだせるメッセージソング
なるみやの『だって、優等生』は、優等生を演じる辛さや心の闇を描いている楽曲です。歌詞の意味を深く読み解くと、自己解放、ありのままに生きるというメッセージが込められていると感じます。
「優等生じゃなくてもいい、ありのままの自分でいい」と自分を肯定する事で、心が少し軽くなれるかもしれません。
『だって、優等生』は生きづらさを抱える人にとって、少しの希望が見いだせるメッセージソングではないでしょうか。