自由な衝動で奏でる音楽の力
4人組バンド・Aooo (アウー)が2024年10月16日にリリースした1stアルバム『Aooo』のリード曲『サラダボウル』は、ギターのすりぃが作詞作曲した楽曲です。疾走感あふれるキャッチーなバンドサウンドと透明感のある歌声に惹きつけられます。
テレビ朝日系『EIGHT-JAM』の「プロが選ぶ2024年のマイベスト10曲」にて、蔦谷好位置が3位に挙げたことをきっかけに一気に注目を集めました。
バンドとしての想いを感じる『サラダボウル』の歌詞の意味を考察していきましょう。
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気になる気になる
無音の日々が張り付く
抗う抗う
無色の日々を彩る
壊せる壊せる
嘘みたいな穏やかさも
奏る奏る
膨らんだ果実頬張る
≪サラダボウル 歌詞より抜粋≫
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1番冒頭を見ると、「無音」や「無色」という言葉から面白味のない毎日を送っている様子が見て取れます。
それは「嘘みたいな穏やかさ」ともいえますが、平凡で刺激のない生活が続くと退屈に感じてしまうでしょう。
だからそんな日々に音楽を奏でることで抗い、状況を壊そうとしているようです。
「膨らんだ果実頬張る」のフレーズは、時は熟したから今が行動するべき時であることを示しているのかもしれません。
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決まりのない
おもちゃ箱みたい
詰め込め自由な衝動
≪サラダボウル 歌詞より抜粋≫
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子どもの「おもちゃ箱」の中には決まりがなく、純粋に好きなものだけが集められています。
人生もそんな風に「自由な衝動」が凝縮した、楽しくてワクワクするようなものにしたいという願いが垣間見えます。
「サラダボウル」の意味とは?

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ざらつく
彩度に心奪われて
Feeling Feeling 中
微動だに踊らないあなたを貫いて
樹海からオレンジの海まで
Swimming Swimming 中
混ざり合うサラダボウル
私を見つけたミュージックで
≪サラダボウル 歌詞より抜粋≫
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「ざらつく」という表現は、一見あまり良くないものの印象を受けます。
しかし、ざらついているのが色の鮮やかさや混じりけのなさを示す「彩度」であることや、それが琴線に触れて「心奪われて」いる点に注目できるでしょう。
ノイズやひずみも一般的にはない方が良いものと見なされますが、絵画や音楽の世界では魅力のひとつです。
平凡な生活の中では見つからないそうした魅力を味わうことで、日常は様変わりします。
それは心が凍りついて「微動だに踊らないあなた」さえも貫いて、思わず踊り出したくなるでしょう。
また、木々が生い茂る「樹海」と夕日に染まる「オレンジの海」は、同じ海と表現されても全くの別物。
とはいえ、その違いを受け止めれば世界をもっと広い視野で見つめられるはずです。
ここでいう「サラダボウル」とは、様々な人種や文化が混在し共存する社会を複数の野菜から成るサラダボウルに例えたスラングのことと解釈できます。
バンドは異なる楽器や歌声の個性が混ざり合い、心が惹かれる音楽を作り出します。
またAoooはアーティストとして個々に活躍しているメンバーが集まり、各自のスキルや感性を見事に融合しているため、まさにサラダボウルのようです。
このバンドでしか奏でられない音楽があります。
リスナーたちが「私を見つけたミュージック」で、さらに人々を魅了するつもりであることが窺えますね。
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言葉と苦味を和えた小節
砕けた胡桃の刺激と化して
水溜りへと飛び込んでスニーカー
つまらない街に鳴らせスピーカー
答えはないさレシピもないさ
ゆくりなく生まれるのだろう
刻んだ音価 歪んだ音波
其れとなく惹かれ合えばいい
≪サラダボウル 歌詞より抜粋≫
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「言葉と苦味を和えた小節」が「砕けた胡桃」のように平凡さに変化をもたらし、「水溜りへと飛び込んで」しまいたくなるような衝動を掻き立てます。
「つまらない街」にそうした音楽が鳴り響けば、人々の日常はより豊かなものになるでしょう。
「ゆくりなく」とは古語の「ゆくりなし」の連用形で、「思いがけなく・突然に」という意味があります。
「答え」も「レシピ」もなく思いがけず生まれる音楽こそ、人の心を掴むのではないでしょうか。
それぞれが良いと思った音色や言葉が「其れとなく惹かれ合えばいい」という柔らかな思考が、素晴らしい音楽を生み出すのかもしれませんね。
心の感度で音楽の魅力を感じよう

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感度に動かされてるのよ
Feeling Feeling 中
暗い世に
飽き飽きなあなたを貫いて
虚空からオリーブの空まで
Swimming Swimming 中
混ざり合うサラダボウル
私を探してミュージックで
≪サラダボウル 歌詞より抜粋≫
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大切にしたいのは、良いものを良いと感じられる心の「感度」。
その感度によって生まれた彼らの音楽は、「暗い世に飽き飽きな」全ての人に向けて届けられています。
「オリーブ」は、平和や知恵といった花言葉を持つ幸せのシンボルツリーです。
とりとめのない「虚空」の中にいても、幸せを象徴する「オリーブの空」まで音楽が導いてくれるでしょう。
続く部分では、「私を探してミュージックで」とも歌われています。
『サラダボウル』はボーカルの石野理子が所属していたガールズバンド・赤い公園をオマージュした要素が詰まっており、この楽曲を聴いて石野理子がAoooで活動していることに気づいた赤い公園ファンも多いようです。
一時はバンドで活動する場を失った彼女を、もう一度バンドで輝かせてあげたいというメンバーの想いが込められているように感じます。
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反転した
おもちゃ箱みたい
散らばれ自由な衝動
≪サラダボウル 歌詞より抜粋≫
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おもちゃ箱をひっくり返すと、中のおもちゃは四方八方へと散らばっていきます。
同じように、やりたいと思ったことは何でも自分を広げてやってみる「自由な衝動」があれば、人生はもっと面白くなるはずです。
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連れて行くのどこかへ
鮮やかに煌めいた
今を鳴らせメロディ
鮮やかに煌めいた
五感を喰らえ
≪サラダボウル 歌詞より抜粋≫
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奏でられる音楽には、アーティストたちの「鮮やかに煌めいた今」が詰まっています。
それは様々な世界へとリスナーを連れて行ってくれます。
彼らの想いが素晴らしい音楽になって届くとき、「五感」を呑み込むように全身で魅了されるでしょう。
退屈な日々の中でもその感性を持って、彼らの音楽を楽しんでいきたいですね。
Aoooの音楽が日常を彩ってくれる!
Aoooの『サラダボウル』は、多様性を受け入れて楽しむ気持ちを教えてくれる楽曲です。それぞれがソロで活躍する実力と実績を持った彼らが集まったからこそ奏でられる、シンプルながら奥深いメロディとメッセージに引き込まれます。
バンドとして織り成すAoooの音楽の世界を存分に味わいましょう!