B´zの「イチブトゼンブ」が愛される理由を考察
B'zの『イチブトゼンブ』がリリースされたのは2009年8月5日。ドラマ『ブザー・ビート~崖っぷちのヒーロー~』の主題歌にもなり、話題を呼びました。
16年前の曲であることが信じがたいほど、今もなお存在感を示すこの楽曲。
突き抜けるような稲葉浩志のボーカルとイントロが印象的です。
B'zの楽曲はイントロからワクワクする楽曲が多いですが、『イチブトゼンブ』はまさにそんな楽曲の1つといえるでしょう。
時を経ても色あせることなく愛され、聞く人の心に刺さり続ける名曲には、一体どのような理由があるのでしょうか。
『イチブトゼンブ』という特徴的なタイトルにも注目しながら、歌詞の意味を掘り下げていきます。
いつ聞いても刺さる「イチブトゼンブ」の歌詞

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「アナタは私のほんのイチブしか知らない」
勝ち誇るように笑われても それほどイヤじゃないよ
生まれてくる前 聞いたようなその深い声
それだけで人生のオカズになれるくらいです
≪イチブトゼンブ 歌詞より抜粋≫
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好きな人のことは、すべてを知っておきたいと思ってしまうもの。
そんな相手から「ほんのイチブしか知らない」といわれる。
しかし、勝ち誇ったようにいわれることすらも嫌な気がしないほどに心掴まれているようです。
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すべて知るのは到底無理なのに
僕らはどうして
あくまでなんでも征服したがる
カンペキを追い求め
愛しぬけるポイントがひとつありゃいいのに
≪イチブトゼンブ 歌詞より抜粋≫
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相手のすべてを知り尽くしたいと願っても、到底無理なこと。
それなのに、見えている「イチブ」をすべてだと思い、それだけで相手を判断しがちです。
「愛しぬけるポイント」が1つでも見つかったなら、本当はそれだけでいいはず。
それでも足りない、満足できないのが人間であり、恋愛というものなのでしょう。
「イチブ」と「ゼンブ」が意味するもの

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もしそれが君のほんのイチブだとしても
何よりも確実にはっきり好きなところなんだ
困った時 少しまゆげを曲げてみせたり
抱きよせるとホッとするような柔らかさだったり
≪イチブトゼンブ 歌詞より抜粋≫
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「好き」という感情はとても曖昧で、それ故に扱いが困ることもあります。
でも実は、1つ1つの小さな「好き」が集まってできているのかもしれません。
困った時のくせ、触れた時の感触や温もり。
そんな小さな、些細なもので人は簡単に癒されて、心は満たされるのです。
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すべて掴んだつもりになれば
また傷つくだろう
ほんとに要るのは有無を言わせない
圧倒的な手ざわり
愛しぬけるポイントがひとつありゃいいのに
≪イチブトゼンブ 歌詞より抜粋≫
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「すべて掴んだつもりになればまた傷つくだろう」という歌詞には、圧倒的な説得力があります。
見えているものに気を取られて、「君」のすべてを手に入れたつもりになれば、するりと抜け落ち、虚無感に襲われるのが愛。
大切なのは具体的な理由ではなく、「圧倒的な手ざわり」なのです。
その手ざわりは人によって違うでしょう。
曖昧でもいいから、何か1つ「愛しぬけるポイント」を見つけることが、愛し、満たされることのコツなのかもしれません。
シンプル過ぎるメッセージが秀逸な「イチブトゼンブ」

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君にしかわからないこと 僕だけが見えていること
どれもホントのこと
すべて何かのイチブってことに
僕らは気づかない
愛しい理由を見つけたのなら
もう失わないで
愛しぬけるポイントがひとつありゃいいのに
それだけでいいのに
≪イチブトゼンブ 歌詞より抜粋≫
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「君」から見えている「僕」も、「僕」から見えている「君」も、ほんの「イチブ」にしかすぎません。
けれど、どちらも本当のこと。
「イチブ」を見てすべて知った気になるのではなく、目に見えない大きなものの「イチブ」に過ぎないことを知ればいい。
「イチブ」が「ゼンブ」にならないように。
歌われていることは非常にシンプルですが、シンプル故に難しく、シンプル故に刺さります。
「イチブトゼンブ」で歌われているのは、人を愛することの極意。
とてもシンプルで、つい見失いがちな、大切なこと。
そんな普遍的なテーマが、時代を問わず愛され続ける理由なのかもしれません。