安室奈美恵の挑戦的な曲『Dr.』。2009年に発売されたシングルです。ヴィダルサスーンのCMタイアップ曲。
“変わりたくないけど無理だから Dr. Dr. Dr. Dr.
会いたい夜に会えない理由はなに? Dr. Dr. Dr. Dr.
恋の痛み消し去る薬を Dr. Dr. Dr. Dr.”
「変わりたくないけど無理だからDr.」医者に頼むような歌詞でスタートします。「会いたい夜に会えない理由は何？」「恋の痛みを消し去る薬を」と、精神科医に相談しているような展開が続きます。日頃の精神的な悩みを医者に相談する曲でしょうか。
“この先の未来を教えて Dr. （Dr.） Dr. クロノス
Please change the past, save us Dr.
Please tell her It's important Dr.
Please change the past, save us Dr.
Please Dr. Please save us Dr.”
そして「この先の未来を教えて」に続く「Dr.クロノス」でドクターが医者ではなく、博士だったことが分かります。英語の「Dr.」は医者と博士両方の意味を持ちます。あえて前半は身近な精神科医に話しかけているようなフレーズを続けて、ここで実はSFだったという種明かしをする構成なんですね。
クロノスは古代ギリシャ神話における時間の神の名前。クロニクル（年代記）の語源でもあります。「Dr.クロノス」というからには、時間を操れる博士なのでしょう。
そしてCMで使われた箇所に突入します。「please change the past,save us Dr.」＝「お願い、過去を変えて私たちを救って」「「please tell her Its’ important Dr.」＝「お願い、彼女に大切だと伝えて」怒涛のお願いフレーズが続きます。ここで一気に行進曲のような壮大なアレンジに曲も変貌。壮大な曲調に変わること＝強い気持ちの表れ。曲調を変えるほど強い気持ちであることが分かります。
そして、「タイムマシーンなんていらないから」と冷静さを取り戻し、過去の自分の行動を変えさせたいという思いを博士に伝えます。ここで曲調が再び元に戻る構成。
“あの時の言葉を消して 二人を未来へと繋げて
I hope that we're laughing in the alternate world”
そして、より具体的に博士への願いを伝えていきます。ここはダンスも激しくなるパート。あの時の言葉を消して2人を未来へ繋げて、という願い。alternate world」はまったく別の世界のこと。「別の世界で私たちが笑っていることを希望する」という歌詞でしめます。
“We return to change your past.
We hope for the future at which you are laughing.
Have a good future. To be continued...”
最後の最後にコンピューターの声で「我々はあなたの過去へ戻る」「我々はあなたが笑っている未来を希望する、良い未来を」という音声が流れ、「続く」で終了。この願いがかなうかどうかは明かされないまま曲が終わります。過去を変えることはできたのか？という疑問を残したまま終わる物語。だからこそこの曲は、印象に残ります。
過去の自分の行動を変えて未来を変えたい！とドクターにずっと願っている壮大な曲です。歌詞もアレンジもSF感が強く、途中で曲調が変わることを含めて、ユニークな曲ですね。
TEXT:改訂木魚（じゃぶけん東京本部）
