LiSAが「鬼滅の刃」主題歌を歌う安定感
LiSAが「鬼滅の刃」に戻ってきました。『残酷な夜に輝け』は、2025年7月19日に先行リリース、7月23日にニューシングルが発売されています。
LiSAは、立志編、無限列車編、『劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編』の主題歌を担当。
物語の初期から、アニメ「鬼滅の刃」はLiSAの歌と共に彩られてきました。
遊郭編、刀鍛冶の里編、柱稽古編を経て、クライマックスである無限城編でのカムバック。
「鬼滅の刃」の締めくくりへと向かっていくストーリーに、これ以上ない説得力がありますね。
タイトルは『残酷な夜に輝け』。
最後の戦いの場となる無限城は、まさに光の見えない戦地。
「残酷な夜」という言葉がいかにしっくり来るかを、原作ファンや、現在公開中の劇場版を観た人は知っていることでしょう。
ラスボスである鬼舞辻無惨との戦いは、希望の光をすべて消し去られるほどの圧倒的な絶望感が漂います。
それでも『残酷な夜に輝け』というタイトルには、消えない希望を感じますね。
では、「鬼滅の刃」の世界観と照らし合わせながら、歌詞に込められた意味を紐解いていきましょう。
「鬼滅の刃」の世界とリンクする歌詞

LiSAの楽曲は、毎度「鬼滅の刃」の世界観にぴたりとリンクしています。
ただの楽曲提供ではなく、作品の一部といえるほどの存在感を示すのはそのためでしょう。
それは『残酷な夜に輝け』でも健在です。
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夜を超える僕らのうた
遠くまで響くように
憎しみより強い気持ち
探したんだ手を伸ばして
≪残酷な夜に輝け 歌詞より抜粋≫
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「夜を超える」という歌詞は、鬼との激戦を潜り抜けて朝を迎える鬼殺隊員の生き様にも通じるものがあるような気がします。
数え切れないほどの仲間を失ってきた悲しみを越えてきた夜でもあるでしょう。
鬼の始祖でありラスボスでもある鬼舞辻無惨を倒したいという強い思いや、彼に対する憎しみ。
これらの感情は消えることなく心の中で燻り続け、それが鬼殺隊員の原動力でもあると思います。
しかし、「憎しみより強い気持ち」がありました。
無惨を憎むよりも強く願うのは、大切な人の幸せであり、平穏な日々を守りたいという思いではないでしょうか。
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闇の中で光るものは
小さく、だけどずっと側に
繋いだ心の証を
掲げて進む
≪残酷な夜に輝け 歌詞より抜粋≫
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ささやかな幸せを願う思いは、一つ一つは小さいかもしれません。
無惨のような強大な悪を前には、あまりにちっぽけで儚い願い。
それでも、その小さな願いは何度踏みにじられても、人の心の中から消えることはありません。

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行け
果てしない世界のかなしみは
この小さな手のひらに余るけど
優しい日々には
もう戻れない
どこにも帰らない明日へ
篝火を高く燃やすから
残酷な夜に輝け
≪残酷な夜に輝け 歌詞より抜粋≫
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家族を鬼に惨殺された人。家族が鬼になり、自分の手で殺さざるを得なかった人。
「鬼滅の刃」には、ささやかな幸せすら容赦なく踏みにじられた人が大勢登場します。
特に鬼殺隊のメンバーは、壮絶な経験をした人がほとんど。
乗り越えられないほどの大きな悲しみを前に嘆いても、幸せな日々が帰って来ることはありません。
ならば、前に進むしかないのです。
今できることは、目の前にいる鬼を倒すこと。
そして、まだ壊されていない人々の幸せを、一つでも多く守ることです。
退路を断ち、前だけを睨んで。
必ず鬼舞辻無惨を討つという揺るぎない決意が、『残酷な夜に輝け』という歌詞に込められているような気がします。
「残酷な夜」にこそ輝く切なくも尊い願い

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匂い立つ闇から生まれた
黒い願いの中に沈んでも
夜を超える僕らのうた
君の元へ届くように
まだ見ぬ夜明けは遠く
≪残酷な夜に輝け 歌詞より抜粋≫
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「匂い立つ闇から生まれた黒い願い」とは、鬼舞辻無惨のことでしょうか。
人を殺してでも生き延び、陽の光を克服して永遠の命を夢見る姿。
その願いは誰よりも身勝手で、鬼殺隊が自らの命を賭けてでも守りたい願いとはかけ離れています。
自分ではない誰かの安寧を願う心根を、無惨は持ち合わせていないのでしょう。
圧倒的な力を前にしても、そのか弱く儚い願いが揺らぐことはありません。
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憎しみより強いうたを
一人だって歌うけれど
とても遠くから聞こえる
君の声を信じてるんだ
一人じゃないと叫びながら
一人ぼっちで血濡れる僕ら
繋いだ全ての想いを
抱えて進む
≪残酷な夜に輝け 歌詞より抜粋≫
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鬼殺隊は、柱は、たとえ一人きりでも果敢に戦いに挑みます。
自分以外の仲間が倒れても、応援が来なくても、心を燃やして立ち向かう。
鬼と戦うということは、それほどの覚悟がなければできるものではないでしょう。
それでも、一人きりで戦っていても、想いは繋がっている。
遠くにいる仲間の声が聞こえる気がする。
それこそが鬼殺隊が掲げる信念であり、絆であり、鬼殺隊員の強さなのではないでしょうか。
無惨が滅べばすべて滅びる鬼とは違い、人には心の繋がりがあります。
自分が死んだとしても、仲間が思いを引き継いでくれる。
そう信じることができるからこそ、人はか弱くも強いのでしょう。

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夢見ていたんだ
君が側にいて
懐かしい青空を見上げてた
生きていることは
美しいんだよ
それだけでいいよと
笑ってた
≪残酷な夜に輝け 歌詞より抜粋≫
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大切な人といつまでも、何気ない日々の幸せを抱きしめながら生きていけると思っていた。
鬼に出会わなければ、襲われなければ、きっと今でも続いていたであろう日々です。
生きているだけで美しく、楽しい。
そんなささやかな幸せも、無惨には分からないでしょう。
分からないから平気で踏みにじることができるのです。
けれど、踏みにじられた人々は、鬼殺隊の隊士たちは、悲しみに暮れてばかりではありません。
絶対に許さないという想いを胸に、何度でも立ち上がるのです。
守りたい幸せな景色があるから、終わりの見えない闇の中でも絶望することなく戦うことができるのかもしれません。
それこそが、御館様が言っていた不偏の想いなのでしょう。
鬼舞辻無惨という圧倒的な力に唯一太刀打ちできる、最後の希望のような気がします。
LiSA×「鬼滅の刃」が生み出す抜群の親和性

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胸に残された道しるべ
光へと続いているから
闇の中を
駆け抜け
かなしみよりも強いうた
君の元へ届くように
あと一歩だけ
一つだけ
夜を超えて
行け
≪残酷な夜に輝け 歌詞より抜粋≫
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無限城での戦いは、これまでにないほどの苛烈さを極めます。
長すぎる夜明けを待ちながら、命を散らしながら、無惨へと刃が届くように。
希望など抱かせないほどの圧倒的な存在感。
夢見ることなど叶わないほどの絶望を感じさせる無惨を相手に、鬼殺隊は最期の瞬間まで刃を振り続けるのでしょう。
かつて、『劇場版 「鬼滅の刃」 無限列車編』で命を散らした炎柱・煉獄杏寿郎のように。
彼は、たった一人で列車の乗客200人を守り抜き、炭治郎たちを守り抜き、圧倒的強さを誇る猗窩座と戦い抜きました。
上限の参という、かつてない強さを誇る鬼を相手に、自分以外の犠牲を出さなかったことは驚異的です。
「鬼滅の刃」の特徴は、死んで行った仲間たちの志や想いを、生き延びた鬼殺隊士が繋いで行くという点。
「心を燃やせ」という煉獄杏寿郎の言葉を胸に刻み、どんな時でも己を鼓舞し続ける炭治郎を見れば明らかです。
どれ程の仲間が倒れても、想いは繋いで行く。
そしていずれ、繋いだ先で、鬼舞辻無惨に刃が届く。
人の死が無駄ではないこと、人の想いが不偏であることを教えてくれる、非常に深みを持った物語が秀逸です。
「かなしみよりも強いうた」
「あと一歩だけ」
「一つだけ」
悲しみにも絶望にも打ちのめされることのない鬼殺隊の強い想いを、信念を感じさせる歌詞です。
絶望感の漂う無限城編だからこそ、LiSAの放つ力強い歌詞が胸を打ちますね。
LiSAと「鬼滅の刃」が築き上げてきた圧倒的な信頼感があるからこそ、彼女の歌声が物語の世界を彩り、さらなる深みを与えるのでしょう。
この曲を聴きながら、歌詞を胸に刻みながら作品を観ると、より一層涙腺が刺激されるのです。
鬼殺隊士たちに、炭治郎たちに、柱たちに。
鬼舞辻無惨を討つことを悲願としてきた人すべてに、明るい未来が待っていることを願わずにはいられません。