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鏡音リン「右肩の蝶」歌詞の意味を考察!鏡音リンと鏡音レンの視点の違いもわかりやすく解説

人気ボーカロイド、鏡音リンのオリジナル楽曲『右肩の蝶』は、その繊細な歌詞とメロディで多くのファンを魅了しています。鏡音レンによるバージョンも投稿され、リンとレンで歌詞が異なるようです。本稿では、両バージョンを考察し、深く掘り下げていきます。

その蝶が触れた瞬間、軋み出した心。それは誰にも見せられない愛だった


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右肩に紫蝶々 キスをしたこの部屋の隅で
切ないという感情を知る 響くピアノ 不協和音
≪右肩の蝶 歌詞より抜粋≫
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冒頭の「右肩に紫蝶々 キスをしたこの部屋の隅で」という表現は、まるで忘れられない出来事や記憶が、身体の一部に刻み込まれているかのような強い印象を与えます。

紫の蝶々は一般的な変化や儚さ、美しさを象徴し、この場合は切なさや儚い恋の象徴とも取れます。

「キスをした」という行為は親密さや愛情を表現しつつも、その場所が「部屋の隅」と限定されていることで、誰にも見せられない秘密や孤独感も感じさせます。

続く「切ないという感情を知る 響くピアノ 不協和音」という部分は、感情の複雑さを象徴しています。

「切ない」という感情は、甘さと苦さが入り混じったものであり、その揺れ動く心情を「響くピアノ」と「不協和音」が音で表現しています。

ピアノの響きは美しくもありながら、不協和音が混じることで、心の不安定さや葛藤を暗示しているようです。

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悪い夢にうなされた私を早く起こして
どんなことでも始まりは些細なことでしょう?
どこがいいかなんて 聞かれても困る
綺麗な夜に惑わされたまま行方不明だから
長いまつげ 三日月アイラインまぶたに乗せて 光るリップ
≪右肩の蝶 歌詞より抜粋≫
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この「悪夢から醒ましてほしい」という願いは、現実から逃れたい、あるいは苦しい気持ちから救い出してほしいという切実な願いを感じさせます。

夢という比喩は、心の中の不安や恐怖、迷いを象徴しているのかもしれませんね。

続く「どんなことでも始まりは些細なことでしょう?」というフレーズは、一見すると何てことない問いかけのようですが、バタフライエフェクト効果を示唆しているのかもしれません。

バタフライエフェクト効果とは、「蝶のわずかな羽ばたきが遠くの街の気象に影響を与える」というような、因果関係が無さそうなことが実は繋がっている、という現象です。

このバタフライエフェクト効果は、タイトルや歌詞に出てくる「紫蝶々」とかかっているようですね。

右肩に蝶が止まったことで、もしかしたら未来が大きく変わってしまったのかもしれません。

そして「どこがいいかなんて 聞かれても困る」「綺麗な夜に惑わされたまま行方不明だから」と続く部分は、自分の気持ちや状況がはっきりしない、不確かな状態を表しています。

美しい夜に惑わされるとは、見た目の華やかさや感情の高揚に流されてしまっている様子が浮かびます。

最後の「長いまつげ 三日月アイラインまぶたに乗せて 光るリップ」というビジュアルは、女性の繊細で華やかな美しさを描写しつつ、感情の複雑さと対比をなしています。

本家である鏡音リンが持つ外見の美しさの裏に、揺らぐ心情が隠されているようです。


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右肩に紫蝶々 キスをしたこの部屋の隅で
切ないという感情を知る 響くピアノ 不協和音
≪右肩の蝶 歌詞より抜粋≫
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「右肩に紫蝶々 キスをしたこの部屋の隅で」という一節に登場する“紫蝶々”は、その色合いからもどこか妖しく、美しさと哀しさが同居しているように感じられます。

先述したバタフライエフェクト効果を踏まえて考えてみると、このキスが後々大きな感情のうねりを生むきっかけだったのかもしれませんね。

続く「切ないという感情を知る 響くピアノ 不協和音」では、その“ささいな出来事”が心を揺らし、切なさという感情を初めて知る瞬間が描かれているように思います。

ピアノの不協和音という表現には、お互いの心がすれ違ってしまっているかの不穏な状況を感じます。

その中で生まれた葛藤や、言葉にならない混乱した感情が重なって聞こえてくるようです。

ピアスが語る、傷と愛の錯綜した感情


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雨の中で濡れた 髪が異常に冷たくて
寂しさをトイレに吐き出して震えて待ってる
追いかけては逃げるからそれ以上で返して
真剣だから笑うと痛い目に遭うよいい?
赤い爪と 安物の指輪 傷付く度増えるピアス
≪右肩の蝶 歌詞より抜粋≫
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さっきはどこかの部屋の隅にいましたが、「雨の中で濡れた 髪が異常に冷たくて」と、外出している情景が浮かびます。

ですが、どこにいても孤独で寂しい感情が強く伝わってきます。

この歌詞からは、そうした心の孤独に加えて、物理的な寒さも重なり合っているように感じられます。

雨に打たれた冷たい髪は、まるで誰にも触れてもらえない寂しさの象徴のようで、その感覚がリアルに伝わってきますね。

特に衝撃的な「寂しさをトイレに吐き出して震えて待ってる」という歌詞は、とても切実な描写に感じます。

誰にも見られない場所で感情を吐き出すという行為は、現代でいう「SNSへの呟き」でしょうか。

自分でも抑えきれないほどの孤独や不安を抱えていることを示しているかもしれません。

そして“震えて待ってる”という言葉からは、ただ誰かに気づいてほしい、そんな願いが伝わってくるようです。

この「待ってる」意味を説明するかのような、「追いかけては逃げるからそれ以上で返して」という歌詞。

これは、近付くと離れてしまう、縮まらない距離感を表しているように思います。

相手を求める気持ちがあるのに、近づくと拒まれる「もどかしさ」と「苛立ち」が、強い言葉でにじみ出ています。

そんな気持ちの中でも「それ以上で返して」という強気な要求に続く、「真剣だから笑うと痛い目に遭うよいい?」という怒りの感情は、ずっと伝えられなかった想いを昇華させるために、長年秘めていた“どうか幸せになりたい”という心の底からの訴えにも聞こえます。

その後の「赤い爪と 安物の指輪 傷付く度増えるピアス」という描写は、自分を飾ることで強がろうとする姿と、傷ついた証が身体に残っていくような苦しさが交錯しています。

「赤い爪」や「安物の指輪」といった装飾は、まるで“強く見せたい自分”を演出するための仮面のようにも思えます。誰かに近づかれるのを拒むような、とげとげしさすら感じさせます。

そして「傷付く度増えるピアス」という、非常に痛々しい一節が続きます。

身体に開けた穴はピアスでふさぐことができますが、心に空いた穴はそう簡単には埋められません。

寂しさや痛みを抱えたまま、それでも何かで満たそうともがいているような、そんな切なさが滲んでいますね。


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抱き寄せて 歪んだ体 埋めるのはあなたしかいない
そうでしょう? わかってるくせに 境界線とっくに越えてる
後悔は死ぬほどしてる その分だけ快感を呼び覚ます
狂いだした私を止めて 一瞬でラクにしてよ
≪右肩の蝶 歌詞より抜粋≫
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「抱き寄せて 歪んだ体 埋めるのはあなたしかいない」というこの一行には、自分の“壊れ”や“孤独”をまっすぐにさらけ出すような切実さがあります。

もしこの「歪んだ体」が、自分自身を指しているとしたら、それは自分でも直視しがたいほどに、心が傷つき、どこかで崩れてしまった存在なのかもしれません。

または、鏡の中に映る自分の姿が、涙で滲み、輪郭さえ歪んで見えるようにも思えます。

どれだけ見つめても、そこにいるのは「もう自分ではないような自分」で、言葉にならない孤独がそこにあるようです。

自分ではもう、自分を癒すことができない。

だからこそ、抱き寄せて心の穴を埋めてほしい、そうしたことを伝えたいのではないでしょうか。

ですが、そこに追従するように「わかってるくせに 境界線とっくに越えてる」というフレーズが飛んできます。

この一言からは、お互いにすでに“戻れない場所”まで来てしまったという切迫感がにじみ出ています。

きっと二人は、理性では「ここで止まるべき」だとわかっていた。

でもその一線を越えてしまった、つまり、心も体もすでに相手の中に踏み込んでしまっているのでしょう。

けれど、その確信は同時に、自分たちの関係が“正常ではいられない”ことをも浮き彫りにしてしまっています。

恋はときに、理性や社会的な枠組みを超えてしまう「破壊的な側面」だってあるようです。

さらに、「後悔をすることが、反して快感にもなっている」という相反する感情の入り混じった言葉からは、傷つきながらも求めてしまう感情の中毒性すら感じられます。

先に出てきた「傷つくたびに増えるピアス」という描写を思い出すと、この感覚がより鮮明になります。

身体に小さな傷をつけてピアスを通すように、後悔という痛みを通してしか埋められない感情が心にあるのかもしれません。

それはきっと、「幸せ」や「愛されている実感」を得るための、歪んだ方法です。

しかし、本人にとっては、それが“生きている”と感じられる唯一の方法なのかもしれません。

傷ついても、苦しくても、それでも想い続ける、そんな痛々しい感情から生まれた中毒性に、私たちもどこかで心を揺さぶられてしまうのです。

最後の「狂いだした私を止めて 一瞬でラクにしてよ」という訴えは、誰かに助けてほしいというSOSであると同時に、全てを終わらせてほしいという極限の思いが込められているのかもしれません。

「一瞬でラクにしてよ」という言葉は、どこか危うい響きを持っています。

“ラクにする”という表現から、どうしても「死」を連想してしまうのは自然な感覚です。

けれどその奥にあるのは、「ただ幸せになりたい」「この苦しみから救われたい」という、もっと純粋で素朴な願いなのかもしれません。

“止めてくれる相手”が存在する世界、それは「生」の側に立っている世界です。

でも、もし誰も止めてくれなかったら、そのときは「死」すらも解放に見えてしまう。

生と死光と影

まったく逆のようでいて、どちらを選んでも今の苦しみからは「逃れられる」と感じているようです。

それほどまで極限まで追い詰められた、切なる願いと諦めが交錯する瞬間なのです。

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傷口から溶け出したものは 愛情それとも Ah...
≪右肩の蝶 歌詞より抜粋≫
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「傷口から溶け出したものは 愛情それとも Ah...」というフレーズの溶け出したものとは、痛みによって生じた感情だと考えます。

辛い現状によって生まれた、幸せを願う気持ち、相手に対する怒り、このまま死んでしまいたいとすら思ってしまうこと。

それら全てを「愛情」として思い込みたい。

なんとも辛い状態であることがひしひしと伝わってきます。

「対話」と「内省」、鏡音リンと鏡音レンが描く感情の流れの違い


この章では、鏡音リンと鏡音レンのバージョンの違いを中心に考察していきます。

まず、歌詞の順番の違いについて、オリジナルである鏡音リンでの歌詞を見てみると、以下の2フレーズずつになっています。

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抱き寄せて 歪んだ体 埋めるのはあなたしかいない
そうでしょう? わかってるくせに 境界線とっくに越えてる
≪右肩の蝶 歌詞より抜粋≫
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後悔は死ぬほどしてる その分だけ快感を呼び覚ます
狂いだした私を止めて 一瞬でラクにしてよ
≪右肩の蝶 歌詞より抜粋≫
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次に、鏡音レンのバージョンを見てみるとこのようになっています。

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後悔は死ぬほどしてる その分だけ快感を呼び覚ます
狂いだした私を止めて 一瞬でラクにしてよ
≪右肩の蝶 歌詞より抜粋≫
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抱き寄せて 歪んだ体 埋めるのはあなたしかいない
そうでしょう? わかってるくせに 境界線とっくに越えてる
≪右肩の蝶 歌詞より抜粋≫
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このように順番が入れ替わっており、鏡音リンは先に相手への懇願や問いかけをしてから自身の考えに耽っているようです。

しかし、鏡音レンは先に考えに耽ったあとに相手への思いを吐露しています。

歌詞の順番が入れ替わっている点からも、鏡音リンと鏡音レンでは「感情の流れ」が異なっていることがわかります。

鏡音リンは、まず相手に問いかけや懇願を投げかけたうえで、自身の内面に沈んでいく構成。

一方で鏡音レンは、内に渦巻く感情を先に描き、それを外へと吐露する流れになっています。

つまり、鏡音リンのバージョンは感情の動きを対話的に、鏡音レンのバージョンは内省的に表現しているのかもしれません。

また、歌い方にもはっきりとした違いが感じられます。

鏡音リンは、どこか距離を保ちながらも落ち着いた姿勢を崩さず、しっとりとした雰囲気で楽曲全体を包み込むように歌いあげています。

静かな悲しみや諦めを内包したようなその声は、聴く者に深く染み込んでいくようです。

一方で鏡音レンは、感情の起伏を強く込め、言葉ひとつひとつに揺れ動く心を乗せるように歌っています。

その歌声には、迷いながらも進もうとする覚悟のようなものも感じられ、内面の葛藤や切実な想いが、より生々しく響いてくるようです。

この対照的な表現の違いが、同じ楽曲でありながらも「鏡音リンの物語」と「鏡音レンの物語」という、ふたつの異なる情景を浮かび上がらせているのかもしれません。

この順番や歌い方の違いが、二人のキャラクターや感情表現の差異を際立たせており、それぞれの視点から『右肩の蝶』の物語をより豊かにしていますね。
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右肩に紫蝶々
切ないという感情を知る
響くピアノ
不協和音
≪右肩の蝶 歌詞より抜粋≫
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また、後に公開された鏡音レンのバージョンでは、「ラクにしてよ」というフレーズが赤く表示されており、さらにいくつかの歌詞が追加されていることから、全体的にボリュームが増している印象を受けます。

特に赤くなった「ラクにしてよ」という言葉は、視覚的に強調されることで、その意味の重さや切実さがより際立ちます。

赤という色には、愛や情熱といった意味のほかに、血や危険、そして「死」のイメージも含まれており、不穏な未来や最悪の結末を暗示しているようにも受け取れます。

こうした鏡音レンのバージョン特有の演出は、内面の衝動や限界をより直接的に描いていることを示しており、聴き手により深く感情を突きつける構成になっているのかもしれませんね。

一度の口づけが運命を変える、けれどそれは真実の愛だった


今回考察をした『右肩の蝶』という楽曲には、忘れられない記憶や恋の痛み、孤独が繊細かつ鋭く描かれていました。

何度も登場する「紫蝶々」は、いわゆるバタフライエフェクトの象徴として、ほんの些細な出来事が人生に大きな影響を与えることを暗示しています。一度の口づけが、永遠にすれ違いになるきっかけだったのかもしれませんね。

そして最後の訴えは、生と死の境界で揺れる切実な願いであり、すべての痛みが「愛情」であってほしいという叫びにも感じられます。

この楽曲が伝えるのは、単なる悲しみや後悔だけでなく、どんなに辛い経験も愛の形の一つであるという深いメッセージだと受け取りました。

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