言葉に心を動かされる時って…
私達はどんな時、どんな曲のどんな歌詞や言葉に感動するのか、とても不思議に思います。聴いている場面や、その時の状況、聴く側の私達の心理などにもよりますね。「風にのって」Janne Da Arcという曲があります。
この曲が入っているアルバム”Joker”は、2005年6月に発売されました。その前年2004年12月26日に起きたマグニチュード9.1という巨大地震が起きた直後に巨大な津波が発生して、インドネシアを含む多くの観光地にも襲いかかりました。インド洋沿岸の数カ国まで、大津波が押し寄せた巨大地震でした。
ちょうどクリスマスやお正月休みということで、訪れていた多くの外国からの観光客も犠牲になり、日本人も犠牲になっています。この曲では、犠牲になった子供の親子の気持ちが綴られています。作詞はメンバーのyasuです。
「風にのって」¦Janne Da Arc
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そっと 夜になって ひとりになって 父は静かに泣く
波が散って 母は海へ あの子を追いかけて・・・
茜色の空 流れてしまうから
ずっと夢に眠る 夢に生きる いくつもの灯
誰もいない海 目を閉じて 安らかに
風をください もっと強い風を
あの子の魂が 高く昇るように
空へ帰れるように
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父と母の想い。
明るい日中に心をさらけ出して、子供を失った悲しみから泣くということができないでいる父親の気持ちを語っています。本当なら、人目を気にすることもしないで、大粒の涙を流したかったのでしょう。父親として、子供に何もできなかった、救えなかったつらさと悲しみ、自分の無力さを悔やみ、そっと泣くことしかできないでいます。また、少年が津波に流されてしまった海へ 自分の命をかけてでも追いかけて探したいという「母親」のせつない気持ちが表れています。我が子のことを思い、自分の危険も顧みずに必死に探し追いかける姿が目に浮かびます。母親は、自分の子供の代わりに自分が犠牲になれば良かったと思うに違いありません。これは、母親になって初めて経験する気持ち。
母性ですね。
そして、いくら探しても海にはもうあの子の姿はなく、両親は我が子のことを思い、子供の魂が高く昇ることを願っています。そして、今はもういなくなってしまった子供の帰る場所は、自分たちのところではなく「空」だということを自分に言い聞かせ、諦めることしかできなかった両親。強い風が吹いて子供の魂が高く空まで昇って欲しいという願いが表れています。
歌が自分と重なった時に、心は動く
私がこの曲に出会い、この歌詞を聴いた時、なんともいえない哀しみと空しさ・はかなさを感じました。実際、この気持ちは「親」になって「子」という大切な存在が生まれ、自分の命と代えても守らなければと感じた時に、自然と生まれてくるものです。国内でも東日本大震災や熊本地震が起こり、改めてこの曲を耳にしたくなります。経験した震災の光景と重なりあい、以前にもましてその両親が子供を思う気持ちが伝わってきます。親が子供を思う永遠の気持ちが綴られており、書かれている光景を思い浮かべ、歌と同じ気持ちを感じ、自分と重ね合わせ、気持ちの中に入り込み、共鳴し共感を覚えたその瞬間、涙します。
TEXT:チェリイ
Janne Da Arc(ジャンヌダルク)とは日本のヴィジュアル系ロックバンド。所属レコード会社はavex。 メンバーはyasu(Vo)、you(Gt)、ka-yu(Ba)、kiyo(key)、shuji(Dr)。大阪府枚方市で結成した男性5人組。yasu、you、ka-yuは同じ中学の同級生。ka-yu以外は同じ高校に進学。バンド名は歴···