「ハッピーラッキーチャッピー」はアニメ「タコピーの原罪」オープニングテーマ
anoの『ハッピーラッキーチャッピー』は、配信アニメ『タコピーの原罪』のオープニングテーマです。『ハッピーラッキーチャッピー』は、2025年6月4日リリースのanoのセカンドアルバム『「BONE BORN BOMB』に収録されています。
『タコピーの原罪』は、複雑な家庭環境を抱え、学校でのいじめに苛まれる少女しずかと、タコ型地球外生命体タコピーとの交流の物語。
ano自身も生きづらさを抱えてきた一人。
原作が抱える重苦しい部分に共感しており、自身の経験を元にありのまま作詞したとコメント。
かわいいタイトルと裏腹に『ハッピーラッキーチャッピー』の歌詞は『タコピーの原罪』と密接にリンクしているダークな世界。
無垢とダークさが混在するanoの歌声が『タコピーの原罪』の世界と、とても合っているのではないでしょうか。
本記事では、『ハッピーラッキーチャッピー』の歌詞の意味を考察していきます。
生きづらい絶望の世界

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身に覚えのない星に 願い 撃つ
踏み外したら 罰罰罰 ワンツーでちゅーぶらりん
いい子にしてたら 笑ってくれるかな?
目覚めても 飢え飢え飢え飢え 夢で見たあの子はいない
≪ハッピーラッキーチャッピー 歌詞より抜粋≫
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「身に覚えのない星」という歌詞に、あてのない世界を想像させます。
その世界に「願い撃つ」行為は、届かないかもしれない、叶わないかもしれない、ということを想像させます。
願いを込めるや、祈るではなく「撃つ」という言葉に必死さを感じます。
アニメの登場人物タコピーは、ハッピー星からハッピーを広めるために地球へやってきます。
少女しずかは、自分の置かれている絶望した状況の中に、希望を見出そうとしています。
そんな世界とリンクする歌詞です。
少しでもルールから外れることをしたら、罰を受ける世の中。
「正しさ」を必要以上に強要される世界。
人々の心の許容範囲がとても狭くなっていることを示唆しているように感じます。
そして「いい子でいなければばならない」という強迫観念にも似た気持ち。
愛情を求めるあまり、人の顔色を伺い、受け入れられようとしてしまう。
「笑ってくれるかな?」という疑問形が、受け入れられないかもしれないことを想像させ悲しい。
愛情を求め飢えている様子が描かれており「あの子」は、きっと自分の理解者。
でも、「夢で見たあの子」なので現実には存在しない相手。
夢の中の希望は現実でも絶望に変わります。

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なんできみはしんじゃうの?
なんでおこっているの?
なんでぼくは泣いてるの?
なんでひとりにするの?
≪ハッピーラッキーチャッピー 歌詞より抜粋≫
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描かれる4つの疑問。
どうにもならないことへの怒りや悲しみ、そして、不条理なことへの無力感や絶望。
「死」への答えにならない感情。
「なんでひとりにするの?」という底知れぬ悲しみ。
聴く人によってさまざまな捉え方ができ、共感する部分かもしれません。
しずかの気持ちとも重なる部分ではないでしょうか。
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霧泳いでる街に 夢現
目醒めれば しっぺしっぺしっぺしっぺ 失敗で宙に舞う
≪ハッピーラッキーチャッピー 歌詞より抜粋≫
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もやがかかったような不透明な街。
夢なのか現実なのか不確かな夢現(ゆめうつつ)の世界。
失敗の連続でしっぺ=罰を受けてしまう。
それによる無力感や不安定さを表しているのではないでしょうか。
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なんでママは泣いてるの?
なんでおこっているの?
なんでパパ帰らないの?
なんでなんでなんで?
≪ハッピーラッキーチャッピー 歌詞より抜粋≫
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少女しずかの心とリンクする歌詞です。
家庭環境が複雑なしずかの心の叫びとも言えるでしょう。
子どもにとって親の選択は、受け入れざるを得ないことが多い。
そんな悲しみが伝わってくる歌詞です。
主人公が追い求める「ハッピーラッキーチャッピー」

ゆったりとしたAメロ、Bメロから一転、サビはテンポが速くなっていきます。
感情の起伏を感じます。
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腐ってるのは地球の方だから うまく歩けない
暗闇でも見つけて この指止まれ
苦しいとか寂しいとか誰かに言えたなら
魔法だっていらないよ
ハッピーラッキーチャッピー 置いていかないで
≪ハッピーラッキーチャッピー 歌詞より抜粋≫
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1番のサビ。
腐っているのは地球。
社会のひずみや人間関係の不和などをそう表現し、批判しています。
「上手く歩けない」は生きづらさを表現し、正しいことをしていても報われない様子が感じられます。
暗闇の中「この指止まれ」をしても、誰も止まってくれない孤独。
誰かに自分の心を打ち明けられたなら、心が楽になるのに。
本当は魔法が欲しい。
「ハッピーラッキーチャッピー」は、幸せを呼ぶ魔法の言葉かもしれません。
チャッピーはしずかの愛犬。
ハッピー(幸せ)、ラッキー(幸運)、チャッピー(愛犬)はしずか、そして歌の主人公が一番求めていることの表れだと感じます。
その求めていることから離れること、取り残されることの不安を「置いていかないで」と表現しているのでしょう。

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腐ってるのはお前の方だから うまく笑えない
羨んでは咲かせて このまま染まれ
うるっさいな疲れたなもうどうでもいいわ
教科書なんていらないよ
ハッピーラッキーチャッピー どこにいるの?
≪ハッピーラッキーチャッピー 歌詞より抜粋≫
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2番のサビ。
腐っているお前=社会や特定の人物、のせいで上手く笑えない、生きられない。
でもそんな相手を自分が羨んでいる、そして自分も輝きたいという願望。
このまま社会に飲み込まれた方が楽だというあきらめも。
でも、どうでもいいとあきらめつつも、教科書=社会のルールなんていらない、という潔さを感じます。
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ハッピーラッキーチャッピー 置いていかないで
ハッピーラッキーチャッピー 置いていかないで
≪ハッピーラッキーチャッピー 歌詞より抜粋≫
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最後に繰り返される「置いていかないで」の言葉。
「どこにいるの?」と探していた「ハッピーラッキーチャッピー」は、もしかしたら手の届きそうな場所にあるのかもしれない、掴みかけているのかもしれない。
「ハッピーラッキーチャッピー」を探す主人公。
絶望の中にかすかな希望を感じさせて終わります。
「ハッピーラッキーチャッピー」は生きづらさを抱える人に寄り添う楽曲
anoの『ハッピーラッキーチャッピー』は、アニメ『タコピーの原罪』のオープニングテーマ。アニメの世界とリンクする、ダークで生きづらさを描いた歌詞が特徴です。
そこにはano自身の経験も織り込まれています。
しかし、絶望だけでなく、かすかな希望も感じられます。
『ハッピーラッキーチャッピー』は、生きづらさを抱える人に寄り添う楽曲ではないでしょうか。