愛しているよ。大好きだよ。いつもありがとう。
身近な人に愛情や感謝の気持ちをアナタは日頃から伝えているだろうか?日本人はこういったコミュニケーションが下手だと言われるが、実際に感謝の言葉を人から言われてみると嬉しいものだったりする。
生きているとそんなにイベントなんて起こらない。決まった時間に起きて身支度を済ませて朝食をとったら、お出かけ前の星占いに一喜一憂するぐらいで、いつもと同じ時間に家を出る。代わり映えのしない仕事を片付けて家路につくと寝るまでも大したイベントなんてない。そんな1日を何度も繰り返していくのだ。
ただ、"いつもと変わらない"のがどれだけありがたいことか考えたことはあるだろうか。黙っていても出てくる朝食はもちろん、アナタを職場近くまで送り届ける電車もアナタ以外の誰かが動かしている。コンビニで買う昼食も誰かが作て誰かが運んで誰かが並べたもの。当たり前の日常が送れるのは、意外に贅沢だ。当たり前の日常を支えてくれる人に気持ちを伝えるシーンをStevie Wonderが『I Just Called to Say I Love You』という歌にした。
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No New Year's Day to celebrate
No chocolate covered candy hearts to give away
No first of spring
No song to sing
In fact here's just another ordinary day
No April rain
No flowers bloom
No wedding Saturday within the month of June
But what it is, is something true
Made up of these three words that I must say to you
I just called to say I love you
I just called to say how much I care
I just called to say I love you
And I mean it from the bottom of my heart
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年明けから始まって一年のイベントをなぞるように歌詞は進む。電話してきたにも関わらず、彼はどこか冷めた様子だ。わざわざ祝うような年明けでもないし、わざわざチョコレートでコーティングしたハート型の飴なんかも用意してない。春の訪れもこれといって感慨深くもなく、歌いたい歌もない。そこにあるのはいつもと変わらない日常だけだ。梅雨もない、花の芽吹きもない、ジューンブライドも関係ない。吉幾三もびっくりのないない状態だが、ただ3つだけ伝えたい言葉がある。
「愛してるよ」
「君のことをとても大切に思っている」
「これは心の底から言えることだ」。
わざわざ電話で言わなくてもいいのに。電話を受けている彼女はそう言いながらも嬉しそうにほくそ笑んでいそうだ。
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No summer's high
No warm July
No harvest moon to light one tender August night
No autumn breeze
No falling leaves
Not even time for birds to fly to southern skies
No Libra sun
No Halloween
No giving thanks to all the Christmas joy you bring
But what it is, though old so new
To fill your heart like no three words could ever do
I just called to say I love you
I just called to say how much I care, I do
I just called to say I love you
And I mean it from the bottom of my heart
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後半も日常の平凡さを彼は語る。夏の猛暑も、秋の満月も、ハロウィンもクリスマスも別に大したことはない。毎年やってきて、毎年去って行っているではないか。そんな何の変哲もない1日を過ごしているだけだけど、君にただ気持ちを伝えたくてなって電話したんだ。
最初の冷めた感じはただの照れ隠し。こんなツンデレな電話をされて喜ばない人はいない。等身大の歌詞が優しく、気持ちを伝えるサビ部分の力強さを助長している。落ち着いたメロディーラインも歌詞に合わせて徐々に盛り上がり、伝えたい気持ちの深さを表す。『心の愛』と日本語で訳されたこの曲はStevie Wonderの代表曲になった。
アナタには大切な人がいるだろうか?いつもアナタが何気ない毎日を送れているのはその人のおかげだ。ディナーに誘ったり、花束を渡したりするのは照れ臭いかもしれない。だったらStevie Wonderを見習って、電話の一本だけでもかけてあげてはいかがだろうか。
【TEXT】田中利知 https://twitter.com/toshichika8855
Stevie Wonder(スティービー・ワンダー)は、1950年5月13日生まれ、アメリカの歌手、キーボード奏者。22回のグラミー受賞歴を誇り、もはや説明不要なほど偉大な音楽界の巨匠。ほかにも作曲家、音楽プロデューサーなど音楽家としてマルチに活躍している。 1950年にミシガン州で生まれ、保育器内···