現代の世界に広がる悲惨な現実
TikTokを中心に活動する双子アーティスト・HALVES(ハーヴス)の代表曲のひとつである『嫌々』。
初投稿されたのは2023年8月で、その後TikTokで楽曲の一部を使用した動画が繰り返し投稿され、注目を集めるようになりました。
2024年1月にリリースされて以降ロングヒットしていましたが、2025年に入りさらに大きな話題となり、7月のオリコン週間ストリーミング急上昇ランキングで1位を獲得しました。
弟のりょうまが作るポップでありながらも無機質な世界観と兄のみらいが描くSTUPID SKULLをフューチャーしたMVがマッチし、再生回数は1,500万回を超えています。
無気力で感情をなくしたような歌唱は、まさにタイトル通り“嫌々”な雰囲気をかもし出しています。
どのような内容を歌っているのか、さっそく歌詞の意味を考察していきましょう。
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間違った罪悪感 残酷な心電図
最悪な夜に掛ける言葉もない
偏った人生観 鈍感な盲目夢
感情が夜に溶けることもないから
≪嫌々 歌詞より抜粋≫
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冒頭からネガティブなワードが登場します。
優しすぎる人たちは、抱く必要のない「間違った罪悪感」に苦しみながら生きているでしょう。
その痛みは心電図には映らず、死がいつもそばにあるように感じます。
そんな「最悪な夜に掛ける言葉もない」のは、心が疲弊して何も考えられないからかもしれません。
誰かの「偏った人生観」や世間知らずに抱く盲目な夢に呆れながらも、「夜に溶けることもない」自分の感情を持て余して憂鬱を味わっていることが伝わってきます。
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独善的感情論 結局は定型文
簡単な訳は何も知らないから
優劣は予想通り 偽った診断名
鈍感な日々に騒ぎ出す異常な世界
感染性共感症 必要ないエゴ死生学
正解が何か探し出す暇もない
望まれていない問題 存在は失敗作
感覚が既に狂いだす悲惨な世界
≪嫌々 歌詞より抜粋≫
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ある人は自分の感情こそが正しいと信じて訴えてきますが、それも結局はどこかで聞いたことのあるような定型文じみています。
そして優劣をつけてはいけないと言いながらも、世の中の多くのものに優劣がつけられているのが現状です。
人々は簡単に嘘を吐き、それを何とも思わない「鈍感な日々」を送っています。
少数派になるのは嫌だから、何でも多数派に共感する様子はまさに「感染性」の病気のよう。
「正解が何か探し出す暇もない」ため、デマやフェイクニュースに容易に踊らされてしまいます。
そうした世間の悲惨な雰囲気は心に伝染し、自分の存在が「失敗作」で無価値だと感じられ、自分で自分を追い込んでしまいます。
繰り返す最低なシナリオの中で生きている

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離れない散々な言われよう
あの夜に曖昧なステレオ
悲劇的感情に価値を
ありふれた狂気的ラジオ
繰り返す最低なシナリオ
あの罪に贅沢な罰を
吐き出した血迷うロザリオ
聞き飽きたその無駄な意味を
≪嫌々 歌詞より抜粋≫
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一人で夜を過ごしていると、考えたくもないのに「散々な言われよう」が頭の中をグルグルと回ってしまうという人は少なくないでしょう。
その「悲劇的感情に価値を」つけられたなら、きっと毎日を前向きに生きられるはずです。
それでも「繰り返す最低なシナリオ」とあるように、状況は一向に変わりません。
この状況が過去の些細な罪への罰だというのなら「贅沢」にも思えるほどの過酷さです。
信じられるものもなく「無駄な意味」を聞き続けるだけの毎日にうんざりしながらも、どうにもできない無気力さを感じさせます。
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被愛型未遂擁護 結局は利益重視
単純な訳は誰も言わないから
無意識の異常行動 期待度はもう最低値
全体の一部になりたがる異常な世界
先天性逃避願望 ご都合主義医学療法
絶望を理由にして隠す余裕もない
解釈は自分優位 偽善論の基準通り
病状がどうか知りたがる悲惨な世界
≪嫌々 歌詞より抜粋≫
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“好きだ” “ファンだ”と言いながら、相手の状況が悪くなると自分の「利益重視」で擁護せず離れていく人たち。
もっともらしく振る舞っている心の底には、単純な自分中心の考えを隠しています。
無意識にしていることが「異常行動」と揶揄される世界で、周囲への「期待度は最低値」まで落ちています。
だから面倒なことにぶつかると、すぐに逃げようとするのでしょう。
大抵のものが信念のない「ご都合主義」で回っていますが、「絶望を理由にして隠す余裕もない」ため仕方ないこととして受け入れられています。
「解釈は自分優位」で、自分の都合のいいようにしか考えていません。
しかし本当は、「全体の一部」になって安心したがる「異常な世界」が当たり前になっていることに疑問を抱くべきなのではないかと問題提起しているように思えます。
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叶わないどうせ自己嫌悪
この夜に重度拒否反応
知る由もない被害妄想
また僕は笑えないピエロ
≪嫌々 歌詞より抜粋≫
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何かを願ってもどうせ叶わないから無力な自分に「自己嫌悪」を感じ、真実の分からない「被害妄想」に悩んでばかりいます。
苦しむしかない夜に心が「重度拒否反応」を示している現状には絶望しかありません。
誰かを楽しませるためだけに生きているかのような自分を「笑えないピエロ」と表現しているところが、切なくも共感を与えます。
見方が変われば毎日が少し楽になる

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決定打に欠ける愛は いつまでも試作段階
鮮明に見えた正解に異論は無い
襲い掛かる不安なんか 脳機能の仕組みだった
特別な日々と勘違いしていたようだ
現実は不満ばっか 理想像とのスキル格差
最悪な夜に掛ける言葉もない
能無しの傍観者 罵るのが精一杯
感情が夜に溶けることもないから
≪嫌々 歌詞より抜粋≫
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人の心は見えないため、「決定打に欠ける愛」に人はいつも悩まされます。
だから「鮮明に見えた正解」が目の前にあれば、それを信じたくなるのでしょう。
しかし、考えてみれば「襲い掛かる不安なんか 脳機能の仕組み」のように毎日生じるものです。
それなのに「特別な日々と勘違い」しているから、より一層つらいことのように感じるのかもしれません。
もっと気楽に受け止められたら、生き方は変わるでしょう。
「現実は不満ばっか」で、「理想像とのスキル格差」に圧倒されそうな毎日を誰もが懸命に生きています。
希望はなく「最悪」としか言いようのない状況です。
そして、行動を起こせない自分を「罵るのが精一杯」の「能無しの傍観者」と卑下しています。
とはいえ「感情が夜に溶けることもない」とあるように、どれほど絶望的な状況の中でも感情が消えてなくなることはありません。
それは苦しみや悲しみだけでなく、希望や期待といった感情も含まれます。
感情が消えない限り、自分自身という存在が消えることもありません。
毎日直面する“嫌々”な出来事も特別なことではないと受け止めていれば、小さな幸せが特別なものに思えてくるのではないでしょうか。
すぐに現実を変えられないとしても、意識の変化がその第一歩になることを教えてくれている気がします。
嫌々の日々を音楽とともに乗り越えよう!

HALVESの『嫌々』は、毎日誰もが経験する嫌な出来事や世間の風潮を斬新な言葉で表現した楽曲です。
ネガティブなフレーズが満載ですが、明るい曲調のおかげで暗い気分にならず、現実を受け入れて前を向くための力になる楽曲として高く評価されています。
どうしようもない現実に苦しくなるとき、ぜひこの曲を聴きながら気分を変えて乗り越えていってくださいね。