「ピアフ」は「news zero」テーマ曲

RADWIMPSの『ピアフ』は2025年10月8日リリースのアルバム『あにゅー』に収録されている楽曲です。
『ピアフ』は、日本テレビ「news zero」のテーマ曲として9月29日から放送されています。
2025年4月から9月まではRADWIMPSの『命題』がテーマソングとして起用されており、1年間で2つのテーマ曲が放送されるのは初の試みです。
ヴォーカルの野田洋次郎は
「これから秋、冬を迎える中で『ピアフ』は、薪でとる暖のような曲にできないかなと思いました。身体の芯から、ほんのりとあったかくなるような。悲しみの強さも喜びの脆さも知った上で、それでも明日を迎えるのは悪くないかも、と少しでも感じてもらえたら幸せです。」
引用:https://news.ntv.co.jp/category/culture/c078aa43ca984a4cb6f8b0b827137b1e
とコメント。
1日の終わりにテレビから流れてくる『ピアフ』は、人々の心に寄りそう優しい楽曲です。
悲しいニュース、辛いニュースが流れても、それでも明日はやってくる。
明日への希望を感じられる『ピアフ』の歌詞の意味を考察していきます。
RADWIMPSが描く究極の愛情

----------------
夢にも 絶望にも あと一歩届かずに
無料で配布される今日を 致し方なく頬張る
「タダより怖いもんはこの世にない」と
誰かの声が聞こえる
≪ピアフ 歌詞より抜粋≫
----------------
冒頭で描かれるのは、中途半端で平凡な日常です。
輝くような人生ではなく、かといって絶望に苛まれているわけでもない。
そんな、誰もが過ごしているであろう淡々とした日常。
「タダより怖いもんはこの世にない」という歌詞は、タダのものほど手間がかかり使いづらいという意味。
無料で受け取った今日という日は自分で生きていくしかない。
もし、お金で買った1日、人生があるならば、もっと楽に生きられるのではと想像させます。
----------------
愛想で笑うたびに 私が私から
離れていくような気配に涙込み上げるけれど
愛想で笑える 優しさくらいは
残っていることを褒めたい
≪ピアフ 歌詞より抜粋≫
----------------
愛想笑いをしている自分は本当の自分でないと感じる。
そんな自分に対する自己嫌悪。
野田洋次郎は
『ピアフ』を制作するにあたり「つい愛想で笑ってしまうあの人に、そんな自分を嫌いにならないでほしいと思ったのです。そんな笑顔でさえ愛しいと伝えたかったんだと思います。」
引用:https://news.ntv.co.jp/category/culture/c078aa43ca984a4cb6f8b0b827137b1e
とコメント。
愛想は、きっと相手への優しさであり、自己防衛の意味もあるかも知れません。
偽善だとしても、相手への優しさを持っている自分を肯定したい。
自己嫌悪と自己肯定の間の感情を描いていると感じます。
----------------
この五体を今動かすのは
細胞や組織や内臓でもなく
あの時の君に言いそびれた
言葉に今も 残る火種
≪ピアフ 歌詞より抜粋≫
----------------
「あの時伝えられなかった言葉」があるから、それが自分を突き動かしている。
それが自分の生きる意味になっている。
誰かへの強い想いが情熱となり生きる希望となっているのではないでしょうか。

----------------
悲しみの強さも 喜びの脆さも
今はもう知っているけど
それでも生きたいの たゆたい歌う迷子
少しだけ明日を待って
君に出逢えたことと 引き換えにすりゃなにも
言えなくなるのをいいことに
明日が好きなのは 君を乗せてるから
今はそれだけでいい 今はそれ以外…
≪ピアフ 歌詞より抜粋≫
----------------
人生の経験値を表現しています。
悲しみや喜びなど、さまざまな感情がある人生を、それでも生きていきたい、と願う気持ち。
しかし、その人生はきっと誰もが迷いながら進んでいく。
「少しだけ明日を待って」と明日への希望を感じさせます。
「君に出逢えたこと」が、主人公の人生にとって最大の価値。
それを思えば、どんな事もいとわないと思えるほど。
自分の人生に君がいるから、明日を生きたいと思える。
それだけでいいと思えるほど大切な相手。
誰かへの愛が、人生を、心を明るくしてくれる。
そんな愛おしさが詰まった歌詞ではないでしょうか。
----------------
この世界を今動かすのは
観終わってないアニメや法律でもなく
いつか消えそうな小さな声で
灯すように交わした 君との約束
≪ピアフ 歌詞より抜粋≫
----------------
世界を動かしているのは、自分の心の中。
確かに、世界レベルで見れば世の中を動かしているのは、巨大な何かかもしれない。
しかし、大切なのは1人1人の心の中にある感情なのだと、伝えたいのではないでしょうか。
「君との約束」が、主人公の心を動かします。
----------------
憎しみは強くて 優しさは脆くて
消えちゃいそうな日もあるけれど
泣きそうだよ 壊れそうなの
明日の抱き締め方はどこ?
諦めちゃダメなの? その声の主はどこ
傷つき方さえ問われる時代
それでもあなたには 笑っててほしいの
これを超えるような願いが
どこにも見当たらない
≪ピアフ 歌詞より抜粋≫
----------------
傷ついた人に寄り添う歌詞です。
「明日をどう迎えたらいいの?」と悩む人に、手を差し伸べてくれる優しさを感じます。
諦めないことが美学とされることもある世の中。
でも、諦めてもいいのかもしれないと思わせてくれる。
「傷つき方さえ問われる時代」とは、ネット社会、SNSへの警鐘と捉えることができます。
自分の感情を吐露したことによって生まれる弊害。
たやすく自分の感情を伝えることが難しく、生きづらいと感じる人も多いかもしれません。
「あなたには笑っててほしい」これ以上に相手への愛情があるでしょうか。
見返りを求めるわけではなく、ただ笑っててほしい。
これ以上の願いが見当たらない、と締めくくります。
主人公の、相手への無償の愛、全てを越えた最大の愛が感じられるフレーズです。
そして『ピアフ』を聴く人の、弱さや辛さを全て受け止め「笑っててほしい」とメッセージを送ります。
人は誰もが毎日を精いっぱい生きている。
うれしい日も悲しい日も。
『ピアフ』は、そんな人たちへ、明日への灯となるような楽曲ではないでしょうか。
「ピアフ」の意味

RADWIMPSの『ピアフ』にはどんな意味があるのでしょうか。
歌詞の中にはピアフという言葉は出てきません。
ピアフという言葉でまず思い出されるのが、フランスの女性シャンソン歌手エディット・ピアフです。
代表曲は『愛の讃歌』や『ばら色の人生』。
特に『愛の讃歌』は日本で人気の高い曲で、多くの歌手がカバーしており、越路吹雪、美輪明宏、淡谷のり子の歌唱が有名。
ピアフは、波乱万丈で悲劇的だったエディット・ピアフの生涯や『愛の讃歌』で描かれる壮大な愛を指しているのかも知れません。
フランスでは「ピアフ」にはスズメや小鳥、という意味があります。
エディット・ピアフの本名はエディット・ジョヴァンナ・ガション。
ピアフを見出したナイトクラブのオーナー、ルイ・ルプレーが、身長142センチと小柄なピアフに「小さなスズメ」という意味のLa Môme Piaf(ラ・モーム・ピアフ)という愛称を与えます。
このことから後に、エディット・ピアフと改名することになりました。
この事を踏まえると、歌詞で描かれる君、あなたを愛らしくて守りたいもの、大切にしたいものの象徴として『ピアフ』というタイトルがつけられたのかもしれないと思いました。
タイトル『ピアフ』の意味は、エディット・ピアフそのもの、『愛の讃歌』の世界、大切にしたいものの象徴としてのピアフ(スズメ・小鳥)など、さまざまなものを想像させます。
いずれにしても、根底には「大きな愛」が溢れていることに変わりはないのだと感じます。
「ピアフ」は心に灯りをともす楽曲
RADWIMPSの『ピアフ』は、聴く人の心に寄りそい、灯りをともしてくれるような優しい楽曲です。どんなに辛くても悲しくても必ず明日はやってくる。
「あなたには笑っててほしい」というメッセージは、明日への希望を見出せます。
もし、心が辛くなった時には思いだしてほしい1曲です。
