「Swallowtail Butterfly~あいのうた~」は映画「スワロウテイル」主題歌
『Swallowtail Butterfly~あいのうた~』は、1996年9月公開の映画『スワロウテイル』の主題歌です。
『スワロウテイル』は、岩井俊二監督の出世作で、現在も人気の高い作品。
物語は、移民たちが集まる日本の架空の街を舞台に描かれます。
主演はアーティストのCharaが務め、彼女の存在が大きく世間に知られることとなりました。
あらすじ
一攫千金を求めて日本にやってきた外国人たちは、街を円都(イェンタウン)と呼び住み着きます。日本人たちはそのような外国人たちを、円盗(イェンタウン)と呼び蔑みました。
娼婦で歌手志望のグリコ(Chara)も、上海からやってきた円盗。
グリコは仲間と共に「YEN TOWN BAND」を結成すると、日本人と偽ってデビューし、歌手として成功を収めます。
しかし、夢を手に入れたはずの彼らに突きつけられたのは、過酷な現実。
暴力や裏切りなど、トラブルに巻き込まれていきます。
移民たちの希望と挫折を描き、生きることの意味を考えさせられる映画です。
Charaがボーカル「YEN TOWN BAND」

『スワロウテイル』に登場する架空のバンドでありながら、実際にデビューしたのが「YEN TOWN BAND」です。
1996年7月にシングル『Swallowtail Butterfly~あいのうた~』をリリース。
ボーカルを務めるのは、映画と同じくChara。
バンドのオリジナルメンバーは、Chara(ボーカル)、小林武史(キーボード・ギター)、名越由貴夫(ギター)、岩井俊二(作詞・コンセプト統括)の4人。
9月の映画公開に先駆けてデビューするという戦略が成功し、楽曲も映画もヒットすることとなりました。
オリコンチャート1位を獲得し「YEN TOWN BAND」の作品でありながら、Charaの代表曲とも言えます。
『Swallowtail Butterfly~あいのうた~』の歌詞の意味を考察します。
アゲハ目線で描かれる絶望の中の希望

Swallowtail Butterfly(スワロウテイルバタフライ)はアゲハ蝶の意味。
映画『スワロウテイル』の登場人物、伊藤歩演じるアゲハの目線で描かれた歌詞だと感じる部分が多くあります。
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止まった手のひら
ふるえてるの 躊躇して
この空の 青の青さに
心細くなる
信じるもの すべて
ポケットに
つめこんでから
夏草揺れる線路を
遠くまで歩いた
≪Swallowtail Butterfly ~あいのうた~ 歌詞より抜粋≫
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誰かと手を繋ごうとした瞬間のためらいを感じます。
アゲハは母親を殺害された後、大人たちの間をたらいまわしにされた末、グリコ(Chara)に引き取られます。
自分の心とは裏腹のきれいな青い空は、少女の不安な暗い気持ちとの対比だと考えられます。
幸せを求め、かすかな希望を抱き、一人歩き続けてきたアゲハの気持ちを考えると、いたたまれない気持ちになりますね。
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心に 心に傷みがあるの
遠くで蜃気楼 揺れて
≪Swallowtail Butterfly ~あいのうた~ 歌詞より抜粋≫
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『スワロウテイル』の登場人物はみんな痛みを抱えています。
映画に通ずる部分でもあり、映画を知らない人の多くが共感する部分でもあります。
蜃気楼は幸せの象徴ではないでしょうか。
掴みかけた幸せは幻で、触れると儚く消えていく蜃気楼のよう。
幸せを掴んだかのようで、また転落していく映画『スワロウテイル』の救いの無さとリンクします。
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あなたは雲の影に
明日の夢を追いかけてた
私はうわの空で
別れを想った
≪Swallowtail Butterfly ~あいのうた~ 歌詞より抜粋≫
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雲の影にあるのは、かすかな太陽の光。
それを希望とし、明日への夢を繋ぎます。
夢を追いかける、グリコを始めとするアゲハの周りの大人たち。
しかし、幼いころから絶望の中にいたアゲハは、希望は無いと悟っているのかもしれません。
やがて訪れる別れを予感します。
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汚れた世界に
悲しさは響いてない
どこかに通り過ぎてく
ただ それを待つだけ
≪Swallowtail Butterfly ~あいのうた~ 歌詞より抜粋≫
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暗く冷たいアゲハたちの暮らす街・円盗(イェンタウン)を象徴する歌詞です。
悲しみが日常ならば、当たり前のように通り過ぎていくだけ。
誰の心にも届かず、響かず、ただ流れていくことを待つだけの悲しい世界です。
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体は 体で素直になる
涙が止まらない だけど
≪Swallowtail Butterfly ~あいのうた~ 歌詞より抜粋≫
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しかし、心ではそう思っていても体は正直。
理性で抑えられない感情があふれ出し、涙が止まりません。
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ここから何処へいっても
世界は夜を
乗り越えていく
そして あいのうたが
心に響きはじめる
≪Swallowtail Butterfly ~あいのうた~ 歌詞より抜粋≫
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どんなに悲しく辛い出来事があったとしても、必ず明るい朝が来ると信じます。
そして「あいのうた」が心に響けば、前を向いて歩きだせる。
「あいのうた」は、大切な人からの言葉ではないでしょうか。
アゲハにとって、グリコの歌う歌とも捉えられます。
絶望を希望に変える瞬間です。

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(ha…) ママのくつで
速く走れなかった
泣かない 裸足に
なった日も
≪Swallowtail Butterfly ~あいのうた~ 歌詞より抜粋≫
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「ママ」という言葉に、アゲハが母親の愛情を求めていたと感じさせます。
幼くして母を亡くし、一人ぼっちで過酷な運命を生きてきたアゲハ。
何もかもを失った日を「裸足になった日」と表現し、一人で生きていく覚悟を決めたのではないでしょうか。
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逆さに見てた地図さえ
もう 捨ててしまった
心に 心に魔法があるの
嵐に翼ひろげ 飛ぶよ
≪Swallowtail Butterfly ~あいのうた~ 歌詞より抜粋≫
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「逆さに見てた地図」の表現は、きっと今いる世界ではない場所を求めていたことを暗示しているかのよう。
幸せがやってくることを願っていたけれど、そんなものは幻想だと地図を捨てます。
幸せは自分の手で掴むものなのだと、逆境の世界に自ら飛び立つ。
聴く人に、立ち上がる勇気をくれる歌詞です。
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私はうわの空で
あなたのことを
想い出したの
そして あいのうたが
響きだして
(Mm… yeah Ha…)
私は あいのうたで
あなたを探しはじめる
≪Swallowtail Butterfly ~あいのうた~ 歌詞より抜粋≫
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『Swallowtail Butterfly~あいのうた~』は、タイトルからわかるように、楽曲のテーマは「愛」です。
心に大切な人の愛が宿っていれば、人は希望を失わずに生きていけるのかもしれません。
どんなに絶望の中にいても、かすかな希望が人を奮い立たせることができる。
そして、心の中の愛が人を支えていく。
Swallowtail Butterfly=アゲハ蝶のように、大切な人の想いは、きっと自分の周りをふわふわと舞っている。
そんな風に思わせながら締めくくります。
「Swallowtail Butterfly~あいのうた~」絶望の中の希望を感じさせるCharaの歌声
『Swallowtail Butterfly~あいのうた~』は、映画『スワロウテイル』の主題歌です。架空の日本の街を舞台に、移民たちの挫折と希望を描いた重い映画でありながら、その重さを少し軽やかにするのが、Charaのアンニュイな歌声かもしれません。
絶望の中にある希望を描いた歌詞は、きっと聴く人の心に響き、前を向いて生きる勇気を与えてくれるのではないでしょうか。
リリースから30年経つ今も色褪せない楽曲は、絶望の中にある希望と、再生の物語です。
●YEN TOWN BAND HP http://yentownband.jp/ ●YEN TOWN BANDユニバーサル ミュージック HP http://www.universal-music.co.jp/yen-town-band/
