伝説の歌手・仲宗根美樹
仲宗根美樹は『川は流れる』のヒットで知られる沖縄県出身の歌手です。結婚を機に1971年、芸能界を引退。
1998年以降はテレビやイベントに出演したこともありますが、その数が少ないため、伝説の歌手と言われています。
仲宗根は1961年(昭和36年)5月にデビューし、同年『川は流れる』が大ヒット。
『川は流れる』は、元々『雨の花園』のB面(カップリング)でしたが、当時流行の歌声喫茶から火がつき、11月にA面とB面を入れ替えたシングル盤を発売した、というエピソードがあります。
仲宗根は2024年に、79歳で逝去。
『川は流れる』は、高橋真梨子、小林旭、原由子などがカバーし、今も歌い継がれています。
人生を川の流れに例えて描いた歌詞

『川は流れる』の歌詞は全部で3番と、シンプルな構成です。
川の流れを人生に例えて描いています。
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病葉を きょうも浮かべて
街の谷 川は流れる
ささやかな 望み破れて
哀しみに 染まる瞳に
たそがれの 水のまぶしさ
≪川は流れる 歌詞より抜粋≫
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病葉(わくらば)とは、痛んだ葉のこと。
病葉と言う言葉で、傷ついた自分、人生の苦しみや挫折を描きます。
街の谷に流れる川は、田舎ではなく都会を想像させ、そこに生きる人の悲哀を感じます。
夢を持って田舎から都会に出てきた人物でしょうか。
その夢が破れ、絶望を感じているのかもしれません。
夕暮れ時に見つめる川の、なんて眩しいこと。
心に落とす影と裏腹に、美しく輝く川面を見つめて、人は何を思うのでしょうか。
黄昏時は人生の終わりを想像させます。
このままあきらめてしまうのか、それとも再起を目指すのか。
傷ついた心を抱えながら、川のそばにたたずむ人の心情が思い浮かびます。
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思い出の 橋のたもとに
錆ついた 夢のかずかず
ある人は 心つめたく
ある人は 好きで別れて
吹き抜ける 風に泣いてる
≪川は流れる 歌詞より抜粋≫
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「橋のたもと」に人生の分岐点を想像させ、思い出の橋を起点に人生が描かれています。
「錆びついた夢のかずかず」に、錆びつくほど経過した時間の長さを感じます。
描くのは叶わなかった夢の挫折や、人生で起きるさまざまな別れ。
嫌いになって別れる、あるいは好きなのに別れる、と言う人生の喪失感は、多くの人が共感できるでしょう。
吹き抜ける風が、ぽっかりと空いた心の穴を通り過ぎていきます。
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ともしびも 薄い谷間を
一筋に 川は流れる
人の世の 塵にまみれて
なお生きる 水をみつめて
嘆くまい あすは明るく
≪川は流れる 歌詞より抜粋≫
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1番2番で描かれるのは絶望や挫折です。
3番では「ともしび」と言う言葉で、かすかな希望を描きます。
川は絶え間なく流れ続ける。
その川面に映る光はかすかなともしびのよう。
人生は苦しいことばかりだけれど、かすかな希望が見えることもある。
「塵にまみれて」と言う言葉で、この世の醜い部分を表現しています。
純粋だった自分には戻れないかもしれないけれど、それでも生きていくという決意。
今は暗がりの中にいる自分だけれど、明日こそは明るい光が届くように、と懸命に前を向きます。
川の流れのように人生は続いていく。
ただその川の流れを見つめて強く生きていけばよいのだと、優しく諭し、締めくくります。
映画「川は流れる」

『川は流れる』のヒットを受けて映画も制作されました。
1962年3月公開の同名タイトルの映画『川は流れる』で、仲宗根美樹は桑野みゆきと共に主演を務めます。
沖縄出身の亜紀(桑野)がまだ見ぬ父を尋ねて上京するが、その父には新しい家族、娘の理江(仲宗根)がおり・・・。
義理の姉妹となる2人の確執や夢を掴むまでの物語です。
戦後の日本に希望を与え大ヒット

『川は流れる』がリリースされた1961年(昭和36年)は、戦後復興から高度経済成長期への移行中です。
敗戦という暗い影が日本を包む中、新たな時代へと復興の歩みを進めます。
当時の沖縄は、まだ米軍の統治下に置かれていました。
沖縄出身の仲宗根の歌声が、人生の悲哀や希望の象徴となり、人々の心に響いたのではないでしょうか。
絶望や挫折から立ち上がり、見えてくるかすかな希望を描いた歌詞は、当時の時代背景と重なったと言えます。
どんなに苦しい事があっても、川の流れのように人生は続いていく。
明日こそは、と希望を持って生きるのだ、というメッセージが多くの人の心に届いたのでしょう。
それは今も変わらぬ普遍的なものだと感じます。
「川は流れる」が紡ぐ普遍的なメッセージ
仲宗根美樹の『川は流れる』は、人生の悲哀や希望を、川の流れに例えて歌った名曲です。戦後から復興していく日本の時代背景と重なり、多くの人の心に響き大ヒットしました。
どんなに困難でも前を向いて生きていく、と言う歌詞は、現代にも通ずる普遍的なメッセージです。
60年以上前の日本の大ヒット曲に、ぜひ耳を傾けてみてください。
