かつて犯した無邪気な罪に苦しむ毎日
数々の名曲を世に輩出し、国民的バンドとして長年愛され続けるMr.Childrenの楽曲の中でも、最大のヒット作でありトップクラスの人気を誇るのが『Tomorrow never knows』です。1994年に発売された6thシングルであり、木村拓哉主演ドラマ『若者のすべて』の主題歌に起用されたことで、276万枚もの売上を記録しました。
タイトルの「Tomorrow never knows」は、直訳すると「明日のことは決してわからない」という意味です。
そこにどのようなメッセージが込められているのか、さっそく歌詞の意味を考察していきましょう。
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とどまる事を知らない時間の中で
いくつもの移りゆく街並を眺めていた
幼な過ぎて消えた帰らぬ夢の面影を
すれ違う少年に重ねたりして
≪Tomorrow never knows 歌詞より抜粋≫
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主人公は「いくつもの移りゆく街並を眺め」ながら、時間の流れを感じています。
淀みなく流れ続ける時間の中で自分だけが立ち止まっていて、取り残されているように感じているのでしょう。
幼い頃に抱いた夢は大抵、非現実的です。
大人になった今、すれ違う少年の姿にあの頃の自分を思い出し、無謀な夢に目を輝かせていた純粋な気持ちがふと心を掠めます。
「すれ違う」という表現は正反対の方向に進んでいることを表し、過去には戻れないことが暗示されていて切ないですね。
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無邪気に人を裏切れる程
何もかもを欲しがっていた
分かり合えた友の愛した女でさえも
≪Tomorrow never knows 歌詞より抜粋≫
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若い頃の純粋さは、悪い方向へ向かってしまうこともあります。
主人公は自分の欲望に正直に行動し、結果や周囲への影響も考えず「無邪気に」人を裏切ってしまった過去があるようです。
それには「分かり合えた友の愛した女でさえも」奪った出来事が含まれます。
欲しかった女性は手に入っても、大切な友を失うことになったのでしょう。
時が経ち、悪気もなく人を傷つけた苦い記憶に自分の罪を自覚し、欲望に従って生きることの虚しさや後悔に襲われている様子が見て取れます。
冒頭で少年に目を止めたのも、失敗する前に戻りたいけれど戻れない苦悩があったからなのかもしれません。
人生は暗闇を駆け抜ける孤独なレース

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償う事さえ出来ずに今日も傷みを抱き
夢中で駆け抜けるけれども まだ明日は見えず
勝利も敗北もないまま孤独なレースは続いてく
≪Tomorrow never knows 歌詞より抜粋≫
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過去の罪を今更償うこともできず、毎日心に負った傷に痛みを感じています。
少なくとも真っ当に生きたいと日々を「夢中で駆け抜ける」ものの、「まだ明日は見えず」もがき続けています。
この楽曲でいう「明日」は、明るい未来と言い換えられるでしょう。
どんなにがむしゃらに進んでも、過去を忘れて生きることも自分自身を許すこともできず、明けない暗い夜を彷徨い続けているかのようです。
人生はまるで「孤独なレース」。
誰かと競っているように見えても、実際は「勝利も敗北もない」自分との闘いです。
誰にも代わってもらうことはできないため、決して止まらない時間の中で、つらくても走り続けるしかありません。
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人は悲しいぐらい忘れてゆく生きもの
愛される喜びも 寂しい過去も
今より前に進む為には
争いを避けて通れない
そんな風にして世界は今日も回り続けている
≪Tomorrow never knows 歌詞より抜粋≫
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ずっと記憶に留めておきたい「愛される喜び」も、すぐに忘れてしまいたい「寂しい過去」も、いつの間にか忘れてしまいます。
「人は悲しいぐらい忘れてゆく生きもの」という表現は誰もが共感するフレーズで、儚さを感じさせますね。
しかし忘れられるからこそ、リセットできない人生でもまた前に進めるのではないでしょうか。
もちろん、何かを変えようと思うと他者との争いや衝突を避けては通れません。
そうして傷を負う毎日の積み重ねによって、「世界は今日も回り続けている」のです。
苦しんでいるのは自分だけではない、全ての人がそれぞれの痛みを抱えながら懸命に走っているのだという気づきを得たことが窺えます。
傷と一緒にこの旅路を進んでいく

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果てしない闇の向こうに oh oh 手を伸ばそう
誰かの為に 生きてみても oh oh Tomorrow never knows
心のまま僕はゆくのさ 誰も知る事のない明日へ
≪Tomorrow never knows 歌詞より抜粋≫
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今いるのは「果てしない闇」の中で、光は見つかりそうにもありません。
それでも主人公は諦めず、「手を伸ばそう」と自分を奮い立たせています。
自分のことを考えると苦しいから「誰かの為に 生きてみても」、「Tomorrow never knows(明日のことは決してわからない)」。
保証される未来なんてないのだから「心のまま僕はゆくのさ」と、思いを新たにしています。
「誰も知る事のない明日」に恐れも期待もせず、ただ真っ直ぐに進んでみようとする覚悟が垣間見えます。
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優しさだけじゃ生きられない
別れを選んだ人もいる
再び僕らは出会うだろう
この長い旅路のどこかで
≪Tomorrow never knows 歌詞より抜粋≫
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優しさは心を癒しますが、傷ついてこそ得られるものもあるでしょう。
「優しさだけじゃ生きられない」から、身を切るような思いで「別れを選んだ人」もいます。
どのような生き方をしていても、自分や他の人を傷つけずに進むことはできません。
とはいえ、つらい別れをしても長い人生を歩み続けていれば、それぞれの人生が交差するタイミングがきっと来るはずです。
傷つけたまま別れた友に再会し、気持ちを伝えられる日が来るかもしれないと思うと、今の生き方にも影響を及ぼすでしょう。
ここで主人公の人生への見方は、孤独なレースから旅へと変化しています。
ただ駆け抜けるのではなく、一つひとつの出来事と向き合って歩んでいこうとしているところに、人としての成長が感じられます。
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果てしない闇の向こうに oh oh 手を伸ばそう
癒える事ない傷みなら いっそ引き連れて
少しぐらい はみだしたって いいさ oh oh 夢を描こう
誰かの為に 生きてみたって oh oh Tomorrow never knows
心のまま僕はゆくのさ 誰も知る事のない明日へ
≪Tomorrow never knows 歌詞より抜粋≫
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最後に、主人公は「癒える事ない傷み」を受け止め、背負ったまま人生を歩んでいくことを決めました。
そして、手に負えないほど大きな夢を描いていたあの頃のように、今の夢も「少しぐらい はみだしたって いいさ」と思えるようになったようです。
その後に続く「心のまま僕はゆくのさ」のフレーズは、1番のサビとは響き方が異なります。
自分の罪に傷つき苦しんでいた青年は今、傷も含めて自分自身と向き合ったことで「誰も知る事のない明日へ」進む勇気を手にしています。
不完全なままでも人は進んでいけるという真実により、リスナーを力づけてくれる歌詞です。
「Tomorrow never knows」は迷い悩む大人たちへのアンセム
Mr.Childrenの『Tomorrow never knows』は、人生の歩み方を考えさせられる楽曲です。誰も傷を負わずに生きていくことはできないから、傷を抱えながら自分を信じて生きる強さを持つ大切さが伝わってきます。
ぜひ言葉一つひとつに注目しながら、不朽の名曲をさらに深く味わってくださいね。
1992年ミニアルバム「EVERYTHING」でデビュー。 1994年シングル「innocent world」で第36回日本レコード大賞、2004年シングル「Sign」で第46回日本レコード大賞を受賞。 「Tomorrow never knows」「名もなき詩」「終わりなき旅」「しるし」「足音 〜Be Strong」など数々の大ヒット・シングル···
