裏社会で生きる若者たちを描く映画「愚か者の身分」

映画『愚か者の身分』は、西尾潤の小説を原作としたクライムサスペンスです。
舞台は、東京の新宿歌舞伎町。
きらびやかなネオン街ではなく、犯罪がはびこる裏側にスポットライトが当てられます。
主人公は、生まれた環境や不運により裏社会に転落してしまった二人の若者です。
彼らは身を寄せ合いながら、雇用売買という闇ビジネスで生計を立てている犯罪者。
しかし彼らに転機が訪れます。
所属している組織のボスの隠し持つ大金を盗み出し、組織、ひいては裏社会から逃げ出す計画を立てるのです。
しかしその思惑にはまた別の裏切りが絡み合っており……と、物語は緊迫した空気を帯びています。
内なる叫びを歌にする、若きアーティストtuki.

tuki.は日本の女性シンガーソングライターです。
顔や本名を隠して活動しており、深く芯のある伸びやかな歌声と抜群の作詞作曲センスで人気を博しています。
元々はTikTokを中心に弾き語りの「歌ってみた」動画で活動。
2023年公開「晩餐歌」で一躍大ヒットしました。
「晩餐歌」は異例の反響を呼び、以降も「ひゅるりらぱっぱ」「サクラキミワタシ」など名曲を生み出し続けるtuki.。
抜群のセンスからは想像もできない要素として、現役女子高生であるという意外性も、彼女というアーティストとしてのインパクトを強めています。
普通の正しさ、普通の人生とは?ひとつじゃない答え
----------------
正しさはひとつじゃないのに
答えもひとつじゃないのに
押し付けないでよ 君の価値観
≪人生讃歌 歌詞より抜粋≫
----------------
「人生讃歌」はそんな歌詞から始まります。
「愚か者の身分」は裏社会でしか生きられない若者を描いた作品です。
彼らは日々人を騙す犯罪者ですが、その身分に望んでなった訳ではありません。
騙された被害者は救われるべきですが、騙している側もまた救われるべきだった人間。
正しさも答えもひとつじゃない。
一つの視点から見える正義という価値観ですべてを測ることは、時に残酷なことです。
----------------
皆美しい 皆美しい
生きたいように生きたくて
人生美しい 人生美しい
そう思えればいいのに
≪人生讃歌 歌詞より抜粋≫
----------------
皆生きたいように生きられて、それが美しいのだと言える世界なら良かった。
自分たちがいる場所がどういうところで、どれだけ危うい存在であるかを理解している。
それを美しいと思えない。
愛することが出来ない。
----------------
画面の中の誰某に
石を投げる人もきっと
笑ってなんかない そう信じたい
≪人生讃歌 歌詞より抜粋≫
----------------
しかし、世界の汚さを知っていながら、誰かを非難する人も決してあざ笑ってそうしているのではない、という世界への期待があります。
これらの歌詞は、主人公たちの人生への切実な嘆きが込められています。
誇れない人生の中の一握りの善性と祈り

----------------
「愛されたい」の気持ちのために
誰かを傷つけたりしないように
明日は今日より素敵になるように
君がほんの少し笑えるように
変われますように
≪人生讃歌 歌詞より抜粋≫
----------------
主人公たちは、他者を騙し戸籍を売り飛ばす大悪党です。
しかしそんな彼らにも大切な相手がおり、絆が存在します。
薄暗い生活の中には一握りの暖かさがあり、彼らが受け取ることのできなかった「普通の愛情」が芽生えます。
そんな彼らだからこそ、生まれた絆のために「変わる」ことを目指すことができるのです。
誰かを傷付けずに生きること。
明日は今日よりいい日であること。
大切な人が笑えること。
大悪党の中にも、そんな些細で柔らかな祈りが存在します。
----------------
君が苦しまなくていいように
願い叶いますように
≪人生讃歌 歌詞より抜粋≫
----------------
そんなフレーズで歌は締めくくられます。
愛を求め一心不乱に生きる彼らの行く末がどうなったのか、それはご自分の目でご確認ください。
等身大の苦しさを歌い上げる「人生讃歌」
『人生讃歌』は映画『愚か者の身分』の人々の祈りを歌った名曲です。しかし、これらの歌詞は決して映画のためだけに当てて作られた曲ではありません。
「普通の価値観」を押し付けられ生き辛さを感じている人。
自分の人生に疲れ、納得がいっていない人。
大切な誰かが苦しんでいて、それを助けたいと思っている人。
『人生讃歌』はそんな、等身大の苦しみに寄り添うことの出来る曲です。
本楽曲を聞いて真っ直ぐな歌声や歌詞に惹かれたという方は、是非tuki.の他の楽曲もチェックしてみてください。
