歪みの先でファンの心をすくい上げる羊文学

羊文学は日本のロックバンドです。
ギター・ボーカルの塩塚モエカをはじめとした五人組のコピーバンドとして発足。
メンバーを入れ替えながら現在は二人組での活動を行っています。
シューゲイザーやオルタナロックの荒々しく歪んだサウンドと透明感のあるボーカル、それらに乗せられた鋭い歌詞が魅力です。
代表曲はアニメ「平家物語」主題歌である「光るとき」やバンド初期の名曲「1999」が挙げられるでしょう。
苦味たっぷりに正義の在り方を描く「九条の大罪」

「九条の大罪」は、前科者やヤクザなど世間から見て悪人とされる人間の弁護を得意とする弁護士・九条間人を主人公とするリーガルドラマです。
九条間人は決して人情家ではありません。
むしろ逆で、すべての事情を理解した上で淡々と現実的で実現可能な「処理」として仕事を行うような、そんな弁護士です。
法廷には様々な背景を持った人々がやって来ます。
一言では説明できないほどの悲劇、悪意、汚れた真実。
救われるべきだと感じる相手が法律という舞台の上では悪者になってしまうことも。
どこにも正義などない。
そんな感覚にさえ陥る現実の苦味を、決してヒーローではない九条間人が揺り動かしていきます。
本心を押さえ付けて生きる毎日、その叫び
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まともじゃないのは百も承知
やれてるフリしてる
バレてねぇ、バレてねぇ
≪Dogs 歌詞より抜粋≫
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この曲の主人公は、自分が普通から逸れた存在であることを深く自覚しています。
かつて誰かと歩幅が合わないと感じたことがあるのか、拒絶されたことがあるのか。
それでも足並みを揃えて同じ道を歩き、誰にもバレずうまくやれていると己を安心させています。
しかし、心を押さえ付け続けることはできません。
主人公は人々の営みの明かりを見つめながら、ようやく心から叫びます。
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叫んだ
太陽のないこの街でビルの灯りが目に滲んだ
ねえ、どうして、生きてるんだろう?
≪Dogs 歌詞より抜粋≫
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普通に迎合することだけを一心不乱に追う毎日は、生きる意義を失わせます。
自分は個性をもって生まれてきたのに、本心を隠し続けるなら自分が自分でいる意味とは何だろう。
すべてさらけ出すことは、社会で生きていく以上、難しいことです。
しかし動かなければ己の命を輝かせることはできない。
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どうせ犬ならその牙で命食い潰せ
≪Dogs 歌詞より抜粋≫
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しょうもない人生にも理由が
なんか欲しくなったから
≪Dogs 歌詞より抜粋≫
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吹っ切れた主人公は、己の命を食い潰すかのようにがむしゃらに生きることを決意します。
折角一つだけの命を「しょうもない人生」に使わないために。
確かな正義の存在しない現実への反抗と怒り

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正義って何?
≪Dogs 歌詞より抜粋≫
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四六時中戦争ばっか
実際どっか希望があんの?
≪Dogs 歌詞より抜粋≫
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世界を支配する暗い空気や普通・正義という規範に中指を立てる歌詞です。
これは自分たちを縛り付けようとする世界への反抗と怒りであり、「九条の大罪」で描かれた一筋縄ではいかない法律と現実の折り合いへ向けた話でもあります。
現実は変わらない。
どうせ世界は良くならない。
人々は争うしか道がないのだ。
そんな現実へ抗う鋭い目線がこれらの歌詞には滲んでいます。
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現状=停滞/生活を続行
うっせー
分かったふりすんな
≪Dogs 歌詞より抜粋≫
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現代はインターネットで自分の感想を手軽に発信することができ、それに対する同意や共感もまた安易に行えてしまいます。
しかし己の正義など己の中にしか存在しない。
簡単に自分を理解した気になるな。
この歌詞には、そんな力強いメッセージを感じます。
だとすれば、もしかしたらこの考察も「分かったふり」なのかもしれません。
生き辛さに寄り添わず、ただ己の道を歩く「dogs」

羊文学「Dogs」はドラマ「九条の大罪」主題歌として書き下ろされたオルタナティブロックです。
歌詞は時に突き放すようでありながら、聞く人に自ら立ち上がるための活力を与えてくれます。
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生ぬるい覚悟じゃ先はないね
やんのか、逃げるか、自分で決めな
≪Dogs 歌詞より抜粋≫
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「dogs」はこちらに寄り添ってくれるのではなく、覚悟を問い、己の道をただ歩く背中を私たちに見せてくれる楽曲です。
この曲が気になった方は是非、羊文学の他の楽曲やドラマ「九条の大罪」もチェックしてみてください。
