文学的表現とストーリー性で魅せるヨルシカ
ヨルシカは日本のロックバンドです。コンポーザーのn-bunaと、ボーカルのsuisの二人組として2017年に結成。
n-bunaは元々ボカロPとして活動しており、当時から魅力的だった美しい歌詞やロックサウンド、世界観を引き継ぎ、より洗練された音楽性でファンを虜にしています。
俳句や古典に影響を受けた楽曲も多く、どこか文学的な響きをもつ歌詞が人気を集めています。
音楽だけに留まらず、小説や朗読など様々な表現方法を用いて楽曲群の背景に存在するストーリーを表現。
代表曲は「ただ君に晴れ」「だから僕は音楽を辞めた」などがあります。
最近では、約一か月間でYouTube2000万再生を達成した「あぶく」も話題です。
美しいものはすべてあなたに似ている、壮絶な愛の歌
Devilishness
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孤独と、夏が去ったカーテンを見間違える
空っぽの魂が何となく野火に似てる
≪魔性 歌詞より抜粋≫
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「魔性」はそんな歌詞で始まります。
ヨルシカの世界観では、夏という季節はいつも特別な意味を持っています。
遠い昔の記憶や、もう訪れることのない未来、眩しい太陽の輝く美しい季節、叶うことのない切ない感情の象徴として夏は描かれてきました。
そんな夏が去ってしまった窓辺と孤独はよく似ていて、魂すらも空になってしまっている。
たったこれだけの歌詞で、この楽曲の主人公の心の空白がよく表現されています。

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唐紅に水くくれ
≪魔性 歌詞より抜粋≫
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続く歌詞。
一見意図の伝わりにくい歌詞ですが、これは在原業平の短歌「千早ぶる 神代も聞かず 竜田川 唐紅に 水くくるとは」が着想元だと思われます。
竜田川に紅葉が流れ真っ赤に染まる景色が、神のいる時代ですら類を見ないほど美しかった、という内容を詠んだ短歌です。
夏の過ぎ去り秋に差し掛かった「私」の人生に、まさに寒さと共に色づいた紅葉のような出会いが訪れたのです。
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この私をお前のようにくくれ
赤々、赤くあれ
≪魔性 歌詞より抜粋≫
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ここでいう「くくれ」とは、くくり染めという技法を意味します。
布を染めるかのように、あなたという存在の赤々とした魅力で私や世界すらも巻き込んで欲しい。
恋や執着を明言していないにも関わらず、これは壮絶なまでの愛の告白です。

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鬼才と、奇を衒うだけのお前を見間違える
魔性と、澄み渡った夕暮れはやけに似てる
オマージュと、文脈のない引用を見間違える
向日葵と、振り向いているあなたを見間違える
≪魔性 歌詞より抜粋≫
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「夏が去った」私の苦悩と、交互に、あなたの魔性を語る歌詞が繰り返されます。
前者はヨルシカの楽曲で繰り返し問われてきた、創作活動を行う者の生みの苦しみについて。
後者は夕暮れや向日葵など、あらゆる美しさにあなたの影を見るほど、私の心があなたの存在で赤く染まっていくさまが描かれています。
目を奪われる魔性と畏れ、そして独占欲

そもそも、「魔性」とはどういう意味でしょうか。
一般的に、「人を惑わし、たぶらかす性質」を指します。
「魔性の女」といった用いられ方をよく目にする方も多いでしょう。
こちらは計算や作為ではなく、自然な魅力のみで周囲を惹き付ける、まさに魔性としか形容できない魅力を持った女性のことを言います。
最近では似た意味合いの言葉として「ファム・ファタール」という言葉も浸透してきています。
「○○に似てる」「○○のように」といった比喩表現が多用される本楽曲において、「私」にとっての「あなた」はまさに魔性の女の如き魅力を持っていたのでしょう。
「あなた」はそこに居るだけで「私」の視線を引き付ける。
向日葵が太陽を見つめるのと同じくらい当然で、自然なことなのです。

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この私もお前のように変われ
赤々、赤くあれ
山も呑み込むピンスポット
やめろ、照らすな私の顔を
≪魔性 歌詞より抜粋≫
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自分を照らすのをやめてくれと声をあげる歌詞。
これは何故でしょうか。
美しい人と孤独な己の差異に耐えられなくなったのでしょうか、それとも今の孤独にこそ価値があると思っているのでしょうか。
もしくは、あなたという存在に狂うことが恐ろしくなったのかもしれません。
魔性の女とはあまりに圧倒的な存在で、その赤色に染まることは最早暴力的なまでの力なのです。
しかし、続く歌詞はこうです。
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この私をお前のようにくくれ
赤々、赤くあれ
人も呑み込むアッパーライト
やめろ、照らすな私以外を
≪魔性 歌詞より抜粋≫
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あなたが私以外を照らすことも許せない。
もうあなたしか見れなくなったのに、どこぞの馬の骨にまでその光を当てて、別の人間を狂わせないで欲しい。
そんな独占欲が生まれてしまうほどに、あなたは太陽のような魔性で、コントロールできっこないほど魅力的な人なのです。
憧れと愛と恋と焦燥を内包した「魔性」

ヨルシカ「魔性」は、過ぎ去った青春の季節と、魔性のあなたとの出会いに魂を焼かれた「私」の歌です。
軽快な音楽と表現力豊かなボーカル、そして狂おしいほど焦がれる感情の調和した楽曲。
本楽曲もまた、魔性の魅力を纏っていると言えるでしょう。
この曲が気になった方は是非、ヨルシカの他の楽曲もチェックしてみてください。
