若者の隠れた痛みを歌い上げるミセス
Mrs. GREEN APPLEは日本のポップロックバンドです。2013年に結成し、ギターボーカルの大森元貴を中心に三人組で活動中。
楽曲はポップスやロックに留まらず、バラードやクラシックなど多彩な要素を汲んでおり、どれもキャッチーでドラマチックなミセス特有の魅力を持っています。
特に、苦しみに真正面から対峙しながらも真っ直ぐ前を見据える歌詞は、若者を中心に共感を呼んでいます。
代表曲はTVアニメ・忘却バッテリー主題歌の「ライラック」や日本レコード大賞優秀作品賞に選出された「ダンスホール」など。
他にも非常にヒット曲が多く、ファンではなくともイントロを聞いたら自然と口ずさめてしまうという方は多いでしょう。
そこにある傷を知り、認め、癒す理解者の歌
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フリコに踊らされた街
いつ滅んでもいいと想う
中身ヘリウムガス風船
飛んで飛んで弾けていった
≪アウフヘーベン 歌詞より抜粋≫
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「アウフヘーベン」はそんな歌詞で始まります。
ニュースやSNS、知人友人や赤の他人の言葉や考え方が毎日大量に耳に入って来る現代。
私たちはそれらに影響を受け、振り子に揺られるようにして生きています。
自分とは何だろう?
強い自我を持てず、ヘリウムガスの詰まった風船のように空っぽな人々。
そんな自分と世界に希望を見出せず、日々燻ぶって不満と不安を抱えている若者は沢山います。
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「まだ生きたりないな」
「もう死にたいな」
≪アウフヘーベン 歌詞より抜粋≫
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そんな相反する思想が両立することは、珍しいことではありません。
決して人生のすべてに絶望している訳ではなく、生き足りないと感じる程度には己の生活を愛している。
しかし、もう終えてしまいたい程度には期待ができず、心も体も疲弊している。

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ならもう
間を取ってみましょうか
そうはいかないな
≪アウフヘーベン 歌詞より抜粋≫
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追い詰められた人間は、極端な方向に思考を働かせてしまうことが多くあります。
生きられないなら、死ぬしかない。
死にたくないなら、生きるしかない。
間を取りたくとも、様々なものが枷となってその選択肢を選べないことも多くあります。
例えば、自分が休んだら周りに迷惑をかけてしまうかもしれない。
例えば、自分が我慢を辞めたら次は誰かが傷つくかもしれない。
人は皆一人では生きていけない。そんな有名な言葉がありますが、その言葉が人を苦しめることがある。
しかし、ミセスはサビでこう歌います。

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なんだっていいんだって。直に嵐は過ぎる
安牌な回答で直に虹が架かる
大丈夫 心配無いよ。大勢が傷つくだけ
なんてことはないよ
≪アウフヘーベン 歌詞より抜粋≫
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深く傷ついた心も、それに伴う選択も、周りを傷つけることも、全ては些細なことなのだとミセスは歌い上げます。
いつか嵐は過ぎ去るし、気軽な選択が予想外な良い結果を連れてくるかもしれない。
貴方の回答は大勢を傷つけるかもしれないけれど、貴方が傷つくことに比べたら大したことではないのだと。
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直に朝日が差す、人を朝日が刺す
≪アウフヘーベン 歌詞より抜粋≫
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朝日が差し、また新しい一日が始まってしまうことがたまらなく苦しい。
そんな痛みを知っているからこそ、これらの歌詞に「無責任さ」は存在しません。
そこに存在する傷を確かに認め、その上で矮小化することなく「なんてことはないよ」と肩を叩くような歌詞です。
悩み続ける若者の、0か100ではない生き方

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ゆらりゆらり揺られている
私はどちらに流れればいい?
離陸に手こずって
ドン臭いのがバレちゃうよ
≪アウフヘーベン 歌詞より抜粋≫
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二番は「生き辛さ」を感じさせる歌詞で始まります。
振り子が揺れるように、波に流されるように、現代を生きる私たちは人の意見に操られて生きています。
「皆がこう言っているから。」
「皆は当たり前にこれができているから。」
仲間はずれにされないために己のドン臭さを隠して生きる人々は、日々心をすり減らしています。
そうする必要が本当にあるのかすら曖昧になっても、自分一人の力では生き方を変えられなくなってしまった人々。
世界と自分、そのどちらがおかしいのかも分からなくなってしまいます。

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歪んだ世界とはさ
修復はもう無理なのか
綺麗な世界とはさ
創るのはもう無理なのか
≪アウフヘーベン 歌詞より抜粋≫
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上手く生きられない自分。
そんな立場から見える世界はどうしようもなく歪んでいます。
歪んでいない世界に直したい。
綺麗な世界を創りたい。
そんなことは不可能なのかもしれないと思いながら、行き場のない生き辛さがそこにはあります。
簡単には答えを出せない苦しみですが、本楽曲でミセスは次の結論を出します。

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僕たちの住む世界は
「歪んでいて綺麗なもの」でした
≪アウフヘーベン 歌詞より抜粋≫
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歪んでいても綺麗。
どうしても生き辛い、ぐにゃぐにゃと歪んだ世界でも、美しさを見出すことはできます。
それは、人に迷惑をかけながら自分自身の芯を見つけ出すことかもしれません。
時に「真面目に生きること」を諦め、少しの間お休みすることかもしれません。
人生は生きるか死ぬかではない。
ならば、歪みがなく整っていることだけが美しさではない。
ミセスはそうして、曖昧さも許容して前へ進みます。

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なんだっていいんだっけ?
大丈夫なんだっけ?
≪アウフヘーベン 歌詞より抜粋≫
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そんな歌詞で締めくくられる「アウフヘーベン」。
ずっと聞き手に寄り添ってきた彼らもまた、迷っている最中なのです。
苦しみの中で藻掻き、同じように生き辛い私たちの隣で「このままで大丈夫なんだっけ?」と悩み続けている。
そんな等身大のミセスだからこそ、若者たちは己の弱さを彼らの歌に預けることができるのです。
傷に触れ、自由な生を肯定する「アウフヘーベン」
「アウフヘーベン」とは、ドイツ語で「持ち上げる」「取り上げる」「保存する」「廃止する」などの意味を持つ言葉です。しかし哲学の場でこの言葉は、「矛盾した概念を、それぞれの本質を見抜きながら包括し、より研ぎ澄ましていく」というような意味を持ちます。
生きることと死ぬこと。
歪んでいる世界と綺麗な世界。
そんな相反する二つの概念は思ったよりグレーなもので、それぞれの間を取って生きていくことは出来る。
「アウフヘーベン」は、そんな肯定的なメッセージが込められた楽曲です。
この曲が気になった方は是非、Mrs. GREEN APPLEの他の楽曲もチェックしてみてください。
【Mrs. GREEN APPLE PROFILE】 大森元貴 (Vo/Gt) 若井滉斗 (Gt) 藤澤涼架 (Key) 2013年結成。2015年EMI Recordsからミニアルバム「Variety」でメジャーデビュー。 以来、毎年1枚のオリジナルアルバムリリースと着実なライブ活動を続け、2019年12月から行われた初の全国アリーナツアー「エデ···