ギターのブリッジとナットで弦を固定する「フロイドローズ」は、エレキギター界で最も革新的な技術として知られています。
1970年代に誕生してから、独特の使い心地の虜になったギタリストは数知れません。
しかし、実際にどのような機構か理解していないという人も多いのではないでしょうか。
この記事のもくじ
フロイドローズとは
ギターには「フロイドローズ」という機構がありますが、実際どんなものなのでしょうか。
その歴史や特徴を1つずつ知れば、フロイドローズのギターに対する見方や次に買うギターの選び方も変わるかもしれませんよ。
まずは、フロイドローズのギターについて、歴史や特徴を紐解いていきましょう。
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フロイドローズの歴史
フロイドローズが誕生したのは1977年ごろです。
開発者はギタリスト兼エンジニアのフロイド・D・ローズ。
彼はアームを多用する演奏を好みながらも、当時のトレモロユニットの不安定なチューニングに不満を抱く日々を送っていました。
そんなある日、フロイドはアーミングした時に弦がナットの上を滑っていることに気づきます。
この「滑り」こそがチューニングの狂いを生み出す原因と考えた彼は、さっそく自宅のガレージにて弦をロックするシステムの開発をスタート。
そして、1976年~1977年ごろに第1号モデルを完成させ、2年後となる1979年には特許を取得。
1980年代初頭にはエドワード・ヴァン・ヘイレンをはじめとする有名プレーヤーたちの使用が話題となり、一気に知名度を上げました。
以降、多少の仕様変更などがありつつも、派手なアーミングやハードなサウンドを愛するプレーヤーから親しまれ続けています。
特徴
フロイドローズは「ギター界の最も革新的な技術」と呼ばれており、開発された当時ギタリストに大きな衝撃を与えました。
有名アーティストにも愛用されており、機能的にも優れていることがわかるでしょう。
では、フロイドローズは普通のギターとどこが違うのでしょうか。
ここからは、フロイドローズのギターの特徴について紹介していきます。
ナットとブリッジで弦を固定する
フロイドローズはナットとブリッジで弦を固定しており、普通のギターよりもチューニングが狂いづらいです。
通常、ギターのチューニングが崩れるのはストリングポスト、ナット、ブリッジの内部に原因があるのですが、弦を両側からロックすることで防いでいます。
フロイドローズのギターをチューニングするには、まず通常通りペグを回し、ナットを締めた後はブリッジにある「ファインチューナー」を使って合わせます。
音程を変化させる
フロイドローズのギターを使うと、通常のギターより大きく音程を変化させられます。
通常のチョーキングやベンドでは不可能なほど音程を上下させられたり、弦をダルダルになるまで緩めてもチューニングはあまり狂いません。
和音全ての音程を変化させたり、倍音を追加したりすることで、音楽的な表現の幅はとても広くなります。
金属のパーツが多い
フロイドローズには金属パーツが多いため、見た目が無骨で男らしい印象になります。
また、それぞれのパーツに重量があるため、弦振動がボディに伝わりづらく、サスティーンが長く硬い音質が特徴です。
重心がネック寄りになるため、指板の木材やネック自体の鳴りもギターの音に反映されやすくなります。
また、金属的な音を出すピッキングハーモニクスを多用するプレイスタイルの人にもおすすめです。
フロイドローズのギタートレモロの種類
一言で「フロイドローズ」と言っても、さまざまなトレモロユニットのバリエーションがあります。
「激しいアーミングが可能」「弦をロックする」といった基本的な特徴は共通していますが、種類ごとにルックスや機能性、価格などに微妙な違いがあります。
次は、フロイドローズのギタートレモロの種類を、現行品を中心に紹介します。
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Floyd Rose Original
ファイン・チューナー搭載型としてスタンダードな仕様のモデルが「Floyd Rose Original」です。
ドイツで生産されているタイプで、本体の表面、アームを装着する部分の反対側に「Floyd Rose」、裏面に「Made in Germay」の刻印が入っています。
素材に関してはサドル部分にスチール、ブロックにブラスを採用。
金属加工の精度や仕上げのクオリティが特に高いのが特徴で、現行品のなかでは上位モデルという位置付けになっています。
Floyd Rose 1000 Series・Floyd Rose Special
「Floyd Rose 1000 Series」と「Floyd Rose Special」は「Floyd Rose Original」の廉価版モデルです。
どちらも韓国製で同じ素材・規格を採用したものが「1000 Series」、やや安価な素材・亜鉛合金を使用したものが「Special」となっています。
こちらは、主にエントリーモデル~ミドルクラスのギターに搭載されている種類です。
Floyd Rose II
「Floyd Rose II」は「Floyd Rose Original」の廉価版として発売されたモデルです。
基本的な設計は「Original」と同じですが、ベースプレートの材質が若干異なるのが特徴。
フロイドローズ社名義での生産は終了していますが、有名パーツメーカー・SCHALLERが「S・FRT-II」という商品名で同タイプの製造を続けています。
Floyd Rose Non-Fine Tuner
ファインチューナーを搭載していない初期型モデル、もしくはこのモデルを復刻したものが「Floyd Rose Non-Fine Tune」です。
ガスリー・ゴーヴァンやブラッド・ギルスの使用で有名なタイプで、モダンなストラトに搭載される2点支持トレモロのようなスッキリとしたルックスが印象的。
国内では流通していないため、他の種類と比べると見かけることも少ないです。
Floyd Rose FRX
「Floyd Rose FRX」はレスポールやSGといった、チューン・O・マチック仕様のモデルにも搭載できるフロイドローズです。
ビグスビーのコンパクトなモデル「B5」と似た形状ながらも、本家フロイドローズのような可変幅の大きなアーミングが楽しめるようになっています。
ボディをえぐる加工が不要、もとのナットもそのまま使えるなど、最小限の加工で装着できるのもポイントです。
Floyd Rose Licensed
「Floyd Rose Licensed」はフロイドローズ社に特許使用料を払ったうえで作られる、他社製ロック式トレモロの総称です。
メーカーによる調整が施されたモデルや独自技術を導入したモデルが中心で、どれも本家フロイドローズとは一味違った作りになっています。
MUSIC MANのAxisに搭載されるブリッジやIbanezのEdge、GOTOHのGE1996Tなどが有名で、ほかにも数多くの商品があります。
フロイドローズギターのメリット・デメリット
フロイドローズは多くの有名アーティストやギタリストに愛されており、機能や音質でも優れている点がたくさんあります。
しかし、メリットもあればもちろんデメリットもあるため「フロイドローズであればよい」というものではありません。
ここでは、フロイドローズのギターのメリットとデメリットを紹介していきます。
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デメリット
弦の交換が面倒くさい
第一のデメリットは、弦交換がとても面倒くさいことです。
ロック式トレモロは、ナットとブリッジの両側から弦をロックし、チューニングの安定感を増しています。
そのため、弦交換の際はナットとブリッジの2か所のロックを外し、交換後にまたロックし直さなければいけません。
これによりチューニングの手間は省けますが、弦交換の手軽さという点では通常のギターが優れているでしょう。
六角レンチが必須
ナットとブリッジをロックしたり、ロックを解除するためには六角レンチが必要です。
そのため、弦交換はもちろん、レギュラーチューニングからダウンチューニングや変則チューニングに変更する時も六角レンチが必要になります。
その他何かあった際は六角レンチを使用して調整しなければいけないため、六角レンチを常に持ち歩かなければいけません。
メリット
チューニングがずれにくい
フロイドローズではナットとブリッジの両端から弦をロックするため、きちんとセットするとチューニングが非常に安定します。
そのため、チューニングの手間が省けるのはもちろん、演奏中にチューニングが狂うのを気にする必要はありません。
弦交換の手間はかかりますが、演奏前や演奏中に細かくチューニングを確認する煩わしさがなくなるのは大きなメリットでしょう。
派手にアーミングができる
大きく音程を上下させる派手なアーミングや、チョーキングやビブラートなどの派手な演奏ができるのもフロイドローズのメリットです。
特にアームは可動域が広いため、レスポールなどトレモロ非搭載のギターでは真似できないほど派手に音程を上下できます。
演奏できるテクニックが増えるので、ギターを演奏する時の表現の幅が大きく広がるでしょう。
細かいチューニングができる
フロイドローズのギターには「ファインチューナー」という機構が搭載されており、より細かいチューニングが可能です。
まずはペグで大まかな音程を決め、そこからファインチューナーを使って弦の微調整をします。
通常のギターでは少し回しただけで音程が大きく上下するものもあるので、チューニングが苦手な人にとってはフロイドローズのギターがおすすめです。
フロイドローズ搭載のおすすめギター【10万円以下】
フロイドローズについて紹介してきましたが、実際に搭載したギターの中にもさまざまな種類があります。
トレモロの種類による違いはもちろん、それ以外の個性もさまざまです。
フロイドローズのギターを選ぶ際は、単にその機構の有無だけでなく、トレモロのタイプや他の機能にも注目して自分に最適なものを選びましょう。
次は、初心者や中級者でも気軽に購入できる、お手頃価格のフロイドローズ搭載ギターを紹介します。
Jackson / JS32 KING V
メタル好きから支持を集めるブランド・Jacksonが販売している、高コスパなキングVタイプのモデルです。
ハムバッカー2基とフロイドローズを搭載した、メタルにピッタリの仕様になっているのが特徴。
加えて24フレット仕様も採用しているので、高音を多用するソロも快適に弾けます。
Jacksonならではの攻撃的なルックスも魅力の、メタル好き要チェックのギターです。
KRAMER / pacer Classic
KRAMER(クレイマー)の「pacer Classic」は、マホガニーのボディにメープルのネックとフレットボード、そしてフロイドローズを搭載したモデルです。
1980年代のストラトを彷彿とさせるボディですが、ストラトとは全く違う構造で、派手なアーミングを用いた激しい演奏に向いています。
哀愁を感じる渋い見た目なので、見た目にこだわりたい人にもおすすめですよ。
Squier / Contemporary Stratocaster HH FR
ストラトキャスターの伝統的なシェイプを採用しつつも、モダンな要素が各所に盛り込まれたモデルが「Contemporary Stratocaster HH FR」です。
ツーハム仕様にフロイドローズと、良い意味でFender・Squierらしくない仕様を採用しているのが特徴。
さらに、ネック材にはこなれたサウンドが特徴のローステッドメイプルを採用するなど、まさにContemporary(現代的)な1本に仕上げられています。
EVH / Wolfgang WG Standard
「Wolfgang WG Standard」は、エディ・ヴァン・ヘイレンとのコラボにより生まれたブランド・EVHの人気モデルです。
指板表面のカーブが徐々に緩やかになる「コンパウンドラディアス」やベイクドメイプル指板を採用することで、モダンな弾き心地とサウンドを実現しています。
ネックにグラファイトで補強されたロッドを組み込むことで、耐久性を高めているのもポイント。
ヴァン・ヘイレン好きはもちろん、弾きやすいフロイドローズ搭載モデルが欲しい人にもおすすめの1本です。
フロイドローズ搭載のおすすめギター【10万円~20万円】
ある程度上達してきて、次はワンランク上のギターが欲しいという人には、10万円~20万円程度のフロイドローズ搭載モデルがおすすめです。
サウンドのクオリティが高いのはもちろん、演奏性にも優れたモデルが揃っているのでテクニカルなプレイも快適に演奏できます。
また、高級感を感じられるモデルも登場する価格帯なので、見た目にこだわりたい人もぜひチェックしてみてください。
Killer / KG-Exploder SE
「KG-Exploder SE」は個性的なルックスと、確かな加工技術が世界的に評価される日本のメーカー・Killerが製造する高コスパモデルです。
こちらはコストを削減するため海外で製造されていますが、上位モデルのスペックをしっかりと継承することで優れた演奏性と品質を実現しています。
メイプルのネック・指板、アルダーボディーによるエレキらしいサウンドが楽しめるのもポイント。
攻撃的なルックスのフロイドローズ搭載モデルが欲しい人、サウンドと見た目の両方を重視したい人におすすめの高コスパなギターです。
CHARVEL / Pro-Mod DK24 HSS FR E
コンポーネントギターの先駆け的なブランド・CHARVELが手掛ける、演奏性とコスパを追求したモデルが「Pro-Mod DK24 HSS FR E」です。
サテン仕上げのサラサラ手触りのネックと、コンパウンドラディアスにより優れた演奏性を実現しているのが特徴。
ボディも小ぶりなディンキーシェイプになっているほか、ネックとの接合部や身体と触れる部分にも加工が施されているので、どんなスタイルでも快適にプレイできるでしょう。
HSS配列のSeymour Duncan製ピックアップとフロイドローズによる、多彩なサウンドが楽しめるのもポイントです。
Ibanez / RGT1270PB
トップ材のポプラバールによる、独特な木目が目を引くモデルがIbanezの「RGT1270PB」です。
こちらは、海外製造ラインの最上位シリーズ・Premiumのモデルで、名機とも呼ばれるフロイドローズのライセンス品「Edge bridge」を搭載していますよ。
ピックアップは全て高品質なDiMarzio社製、配列は幅広いサウンドを演出できるHSH配列を採用。
さらに、Ibanezならではの極薄ネックを採用することで、どんなジャンルでもストレスなく演奏できる、汎用性の高さを実現しています。
見た目のカッコよさはもちろん、演奏性や汎用性の高さも兼ね備えた使いやすいモデルです。
フロイドローズのギターは独特な音が鳴る!ロック式トレモロでサウンドにこだわろう
フロイドローズのギターは、メンテナンスの難しさから敬遠されがちですが、使いこなせば大きな武器になります。
チューニングなどの機能性はもちろん、フロイドローズ特有の硬い音質は、1度試すと病みつきになるでしょう。
ロック式のトレモロで表現方法の幅を広げ、自分だけのサウンドを手に入れましょう。
この記事のまとめ!
- フロイドローズは1977年に生まれ、特にHR/HMのギタリストに好まれている
- ナットとブリッジで弦を固定することで、チューニングが狂いづらい
- アームを派手に使えるため、表現方法の幅が広がる
- トレモロの種類は多数あり、それぞれに長所や短所がある
- 弦交換が面倒で、調整に六角レンチが必要というデメリットもある