よみ：やくそく
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その日ひ、僕ぼくが石蹴いしけりしてると パパが家いえから 出でてきて云いった
坊ぼうや 急いそいで帰かえって来くるんだ ママがおまえに 会あいたいそうだよ
僕ぼくはパパに小声こごえで尋たずねた 「そいじゃ。ママはもう死しんじゃうの」
するとパパは静しずかに云いった 「そうだ 坊ぼうや ママは死しぬんだ」
「だけど 坊ぼうや 泣なくんじゃないぞ みんな誰だれでもいつかは死しぬんだ
坊ぼうや 判わかるな お前まえは男おとこだ 歯はを喰くいしばり耐たえて行いくんだ
どんな時ときでも 弱音よわねをはくな 男おとこらしくやるんだ 頼たのむぞ
いいか 坊ぼうや 約束やくそくしてくれ」 ぼくはパパに約束やくそくをした
僕ぼくが走はしって帰かえると ママは白しろい顔かおして ベッドに寝ねてたが
僕ぼくにやさしく笑わらってみせた 「坊ぼうや 元気げんきで 大おおきくなるのよ」
僕ぼくも ママに笑わらって見みせた だけど僕ぼくは見みたんだ その時とき
ママの瞳ひとみに浮うかんだ涙なみだを ママは ママは 泣ないているんだ
そうさ ママは考かんがえてるんだ 僕ぼくの事ことを心配しんぱいしてんだ
自分じぶんが死しぬということよりも 僕ぼくの事ことだけを考かんがえてるんだ
僕ぼくは思おもわず神かみに祈いのった どうかママを助たすけておくれよ
ママが死しんだら 僕ぼくも死しんじゃう どうかママを殺ころさないでよ
どうか神かみさま お願ねがい神かみさま どんな事ことでも 僕ぼくはするから
夜よる 寝ねる前まえに 歯はを磨みがくから 御飯ごはんの前まえに 手てを洗あらうから
だけど ママは その夜よるおそく そっと淋さびしく この世よを去さった
ずっと 僕ぼくの手てを握にぎりしめ 涙なみだ 浮うかべて この世よを去さった
無理むりサ 無理むりだよ パパ
泣なくなって云いったって
だめサ そんなの そんなの絶対ぜったいだめだよ
だって…だって…
ママが死しんだんだ…
僕ぼくは泣ないた やっぱり泣ないた!
だけど僕ぼくは 僕ぼくは男おとこさ その明あくる年としあの戦争せんそうで
パパが死しんだと 聞きいた時ときは
僕ぼくは その時とき 涙なみだを堪こたえた
僕ぼくは その時とき 約束やくそく守まもった…………
坊ぼうや 急いそいで帰かえって来くるんだ ママがおまえに 会あいたいそうだよ
僕ぼくはパパに小声こごえで尋たずねた 「そいじゃ。ママはもう死しんじゃうの」
するとパパは静しずかに云いった 「そうだ 坊ぼうや ママは死しぬんだ」
「だけど 坊ぼうや 泣なくんじゃないぞ みんな誰だれでもいつかは死しぬんだ
坊ぼうや 判わかるな お前まえは男おとこだ 歯はを喰くいしばり耐たえて行いくんだ
どんな時ときでも 弱音よわねをはくな 男おとこらしくやるんだ 頼たのむぞ
いいか 坊ぼうや 約束やくそくしてくれ」 ぼくはパパに約束やくそくをした
僕ぼくが走はしって帰かえると ママは白しろい顔かおして ベッドに寝ねてたが
僕ぼくにやさしく笑わらってみせた 「坊ぼうや 元気げんきで 大おおきくなるのよ」
僕ぼくも ママに笑わらって見みせた だけど僕ぼくは見みたんだ その時とき
ママの瞳ひとみに浮うかんだ涙なみだを ママは ママは 泣ないているんだ
そうさ ママは考かんがえてるんだ 僕ぼくの事ことを心配しんぱいしてんだ
自分じぶんが死しぬということよりも 僕ぼくの事ことだけを考かんがえてるんだ
僕ぼくは思おもわず神かみに祈いのった どうかママを助たすけておくれよ
ママが死しんだら 僕ぼくも死しんじゃう どうかママを殺ころさないでよ
どうか神かみさま お願ねがい神かみさま どんな事ことでも 僕ぼくはするから
夜よる 寝ねる前まえに 歯はを磨みがくから 御飯ごはんの前まえに 手てを洗あらうから
だけど ママは その夜よるおそく そっと淋さびしく この世よを去さった
ずっと 僕ぼくの手てを握にぎりしめ 涙なみだ 浮うかべて この世よを去さった
無理むりサ 無理むりだよ パパ
泣なくなって云いったって
だめサ そんなの そんなの絶対ぜったいだめだよ
だって…だって…
ママが死しんだんだ…
僕ぼくは泣ないた やっぱり泣ないた!
だけど僕ぼくは 僕ぼくは男おとこさ その明あくる年としあの戦争せんそうで
パパが死しんだと 聞きいた時ときは
僕ぼくは その時とき 涙なみだを堪こたえた
僕ぼくは その時とき 約束やくそく守まもった…………
