聖者の行進 When the Saints Go Marchin' In 歌詞 森山良子 ふりがな付

■森山良子ライナーノーツ
私の父は、サンフランシスコで生まれ育ち、ジャズ・トランペッターを夢見た日系二世です。世界恐慌の折、日本にやって来た父は、ビッグバンドの一員となり、 我が家にはレコードが高く積まれていました。それらを聴きながら育った私は、幼い頃からジャズ･シンガーになりたいと思っていました。 30年程前のことだったと思います。全国津々浦々コンサートに出かけているうちに、どこに行っても老若男女の皆様方誰もが知っているナンバーをめちゃく ちゃ面白いアレンジメントで歌いたい!とアレンジャー前田憲男さんに相談しました。沢山の曲の候補がありましたが、一番面白く出来そうなのは「聖者の行 進」をモチーフにということが決まり、「ではよろしくお願い致します」と待つこと1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月…本番の初日は近づいているがまだ煮詰まらない、まだ思 案中、もう少し…もう少し…と待つうちに初日は1週間後に迫っていた。やっと届いた譜面はザーっと伸ばすと7～8mはあった。往年のジャズの名プレイヤー の特長あるフレーズを声で表現するという手法でした。夜も昼も眠りながらも暗記をしても全てを覚え切ってステージに上るには時間もなく自信がなかった。 スキャットの口がまわらない、焦って前田先生に少しだけカットしたいのですがと言ったら「ダメダメ、カットしたら意味がなくなる」とケンモホロロ。胃がキリキリ 痛む初日ではあったが、歌い終えた時、それまで聞いたことのない大きな熱い拍手を頂き、帰りにそのことを告げるため前田先生にお礼方々電話をしたら 「あ、そう、お互い良い仕事をしたってことだね」とあっさりとした一言。とにかく嬉しかった。マエストロ、ミシェル・ルグランもこのアレンジを聴いた時「これは誰 のアレンジだ?僕も一緒に歌いたい」とノリノリになった、世界に誇れるアレンジメントです。今回初めてのスタジオ・レコーディングとなりました。 アメリカの音楽史を彩った往年のジャズの名プレイヤーの聖者たち、そしてビッグバンドを愛し、トランペッターとして生き、サッチモをこよなく愛した父、森山 久に捧げます。