大正毛断嬢 歌詞 真壁寂室 ふりがな付

嗚呼ああ、もっと自分じぶんを愛あいしたゐと
浅あさき夢見ゆめみしハヰカラ嬢がある

今日きょうは帝劇ていげき 明日あすは三越みつこし
街角まちかど揺ゆれるポスタア
噂うわさの珈琲屋かふぇてりや
都会とかい病びょうでさゑ羨うらやましかった
迷まよい込こんだ銀座ぎんざ裏通うらどおり
出で遇あったモダン嬢がある

古この慣例しきたりと
個この自愛じあいの殺ころし合あい
主義しゅぎで溢あふれ返かえる此この時代じだい
断髪だんぱつのモダン
乱みだれ咲さく浪漫ろまん
其その主義しゅぎは幸こうか不幸ふこうか
すれ違ちがい様ざまの甘あまい残のこり香が
私わたしも何時いつかそう成なれるの?
交差点こうさてん 流行りゅうこうのオン・パレヰド

もっと自分じぶんを愛あいしたゐと
胸むねの中小なかちいさなデモクラシヰ
脱ぬぎ捨すてたいわ海老茶えびちゃ色いろの春はる
夢見ゆめみるハヰカラ嬢がある

都会とかいの風かぜに揺ゆれる
洋装ようそうは花はなの如ごとし
軽薄けいはくと謂いわれようと
其その人ひとは綺麗きれいでした

質素しっそな思想しそう 真相しんそうは失踪しっそう
理想りそうは新装しんそう 心臓しんぞうの唸音びいと
西洋せいよう被かぶれだってまた冷笑れいしょう
其それが怖こわくてマガレヰト
命いのち短みじかし、すゝめよ乙女おとめ
モダン嬢があるに未いまだに物ものの哀あわれよ

もっと自分じぶんを愛あいしたゐの
素敵すてきで散文的さんぶんてきな此この暮くらし
嫌きらいじゃ無ないわ海老茶えびちゃ色いろの春はる
憧あこがれ相変あいかわらず
一体いったい、何なにが私わたしをそうさせるの?
世間せけんの戯言たわごとにも耳隠みみかくし
簡単かんたんな決意けついで髪かみは切きれないわ
悩なやめるハヰカラ嬢がある

嗚呼ああ、東京とうきょうに憧あこがる夜よもすがら
あの美人びじんは凛々りりしかった。
其それがきっと一筋ひとすじの希望きぼう
明日あすを変かゑて行いくの

もっと自分じぶんを愛あいするのよ
仮令たとえ、深ふかい傷きずを負おうとしても
鏡かがみの中なかの私わたしに問とい掛かける
「貴方あなたは如何どう在ありたい?」

真赤まっかなルウジュに頬ほほも染そまる
髪飾かみかざりも此処ここに置おいて行ゆくわ
然様さようなら告つげる海老茶えびちゃ色いろの春はる
ハヰカラ嬢があるよ未来みらいへ舞まい上あがれ

花嵐はなあらしの様ように