『――一方いっぽうの心中しんちゅうは』
振ふり放さけ見みては
嫋たおやぐ背中せなに
杜鵑花とけんか散ちる
心こころを挵せせる様ような
黙しじまに泣なき沈しずんでいる
背そむき果はつ際ぎわの儚はかなさは
避さらぬ別わかれに似にた悲かなしび
往昔おうじゃくに視みた様ような恐おそれを
思おもい出ださない様ようにしていた筈はずなのに
打うち明あけた心こころの中なかに潜ひそんだ宿命さだめに
倖しあわせを浮うかべては恋路こいじに降ふり積つもる
胸痛むねいたし言葉ことば
『――一方いっぽうの心中しんちゅうは』
寂寞じゃくまくとした
この夜深よるふかし覚おぼえ浮うかぶ
短みじかし髪かみに仄紅ほのあかい頬ほほ か細ぼそき声こえ
仇あだを心こころに抱かかえ生いきるあなたを
傷きずつけることしか出来できなかった
零こぼるる愛あいを刃やいばに変かえてしまう
この手てをいっそ切きり落おとしてしまいたい
愛忘あいわすれ 恋こいだけ 我われか人ひとかと身辿みたどる
囁つつやく 慈悲心鳥じひしんちょうは
素知そしらぬ顔かおをして 雲海うんかいへと飛とぶ
『――二人ふたりは』
孰いずれこうなると
どこかでは分わかっていた
せめてもの愛情あいじょうを遺のこして
別わかれ道みちへと歩あるき始はじめる
『――別わかれ際ぎわに一方いっぽうが』
このまま生いきたとしても
倖しあわせになれないだなんて言いわないで
大丈夫だいじょうぶだから
『――餞はなむけとして』
一ひとつの人生じんせいともう一ひとつの人生じんせいが重かさなった
この季節きせつに
恋忘こいわすれ草ぐさを
『――一方ippouのno心中shinchuuはha』
振fuりri放saけke見miてはteha
嫋taoやぐyagu背中senaにni
杜鵑花tokenka散chiるru
心kokoroをwo挵seseるru様youなna
黙shijimaにni泣naきki沈shizuんでいるndeiru
背somuきki果haつtsu際giwaのno儚hakanaさはsaha
避saらぬranu別wakaれにreni似niたta悲kanaしびshibi
往昔oujakuにni視miたta様youなna恐osoれをrewo
思omoいi出daさないsanai様youにしていたnishiteita筈hazuなのにnanoni
打uちchi明aけたketa心kokoroのno中nakaにni潜hisoんだnda宿命sadameにni
倖shiawaせをsewo浮uかべてはkabeteha恋路koijiにni降fuりri積tsuもるmoru
胸痛muneitaしshi言葉kotoba
『――一方ippouのno心中shinchuuはha』
寂寞jakumakuとしたtoshita
このkono夜深yorufukaしshi覚oboえe浮uかぶkabu
短mijikaしshi髪kamiにni仄紅honoakaいi頬hoho かka細bosoきki声koe
仇adaをwo心kokoroにni抱kakaえe生iきるあなたをkiruanatawo
傷kizuつけることしかtsukerukotoshika出来dekiなかったnakatta
零koboるるruru愛aiをwo刃yaibaにni変kaえてしまうeteshimau
このkono手teをいっそwoisso切kiりri落oとしてしまいたいtoshiteshimaitai
愛忘aiwasuれre 恋koiだけdake 我wareかka人hitoかとkato身辿mitadoるru
囁tsutsuyaくku 慈悲心鳥jihishinchouはha
素知soshiらぬranu顔kaoをしてwoshite 雲海unkaiへとheto飛toぶbu
『――二人futariはha』
孰izuれこうなるとrekounaruto
どこかではdokokadeha分waかっていたkatteita
せめてものsemetemono愛情aijouをwo遺nokoしてshite
別wakaれre道michiへとheto歩aruきki始hajiめるmeru
『――別wakaれre際giwaにni一方ippouがga』
このままkonomama生iきたとしてもkitatoshitemo
倖shiawaせになれないだなんてseninarenaidanante言iわないでwanaide
大丈夫daijoubuだからdakara
『――餞hanamukeとしてtoshite』
一hitoつのtsuno人生jinseiともうtomou一hitoつのtsuno人生jinseiがga重kasaなったnatta
このkono季節kisetsuにni
恋忘koiwasuれre草gusaをwo