軒下のきした三寸さんずん 借かりうけまして
申もうし上あげます おっ母かさん
たった一言ひとこと 忠太郎ちゅうたろうと 呼よんでくだせぇ
呼よんでくだせぇ たのみやぁす
「おかみさん 今いま何なんとか言いいなすったね
親子おやこの名なのりがしたかったら
堅気かたぎの姿すがたで尋たずねて来こいと言いいなすったね
笑わらわしちゃいけねぇぜ
親おやにはぐれた子こ雀すずめが ぐれたを叱しかるは無理むりな話はなしよ
愚痴ぐちじゃねぇ 未練みれんじゃねぇ
おかみさん 俺おれらの言いうことを よく聞ききなせぇ
尋たずね 尋たずねた母親ははおやに 倅せがれと呼よんでもらえぬような
こんな こんなやくざに 誰だれがしたんでぇ」
世間せけんのうわさが 気きになるならば
こんなやくざに なぜ生うんだ
つれのうござんす おっ母かさん 月つきも雲間くもまで
月つきも雲間くもまで もらい泣なき
「何なに言いってやがんでぇ 何なにが今更いまさら 忠太郎ちゅうたろうでぇ
何なにが倅せがれでぇ 俺おれらにゃおっ母かあはいねぇんでぇ おっ母かさんは
俺おれの心こころの底そこに居いるんだ 上うえと下したの瞼まぶたを合あわせりゃ
逢あわねぇ昔むかしのやさしいおっ母かさんの面影おもかげが浮うかんでくらぁ
逢あいたくなったら 逢あいたくなったら
俺おれぁ 瞼めをつむるんでぇ」
逢あわなきゃよかった 泣なかずにすんだ
これが浮世うきよと いうものか
水みず熊くま横丁よこちょうは 遠とお灯あかり 縞しまの合羽かっぱに
縞しまの合羽かっぱに 雪ゆきが散ちる
軒下nokishita三寸sanzun 借kaりうけましてriukemashite
申mouしshi上aげますgemasu おっoxtu母kaさんsan
たったtatta一言hitokoto 忠太郎chuutarouとto 呼yoんでくだせぇndekudasee
呼yoんでくだせぇndekudasee たのみやぁすtanomiyaasu
「おかみさんokamisan 今ima何nanとかtoka言iいなすったねinasuttane
親子oyakoのno名naのりがしたかったらnorigashitakattara
堅気katagiのno姿sugataでde尋tazuねてnete来koいとito言iいなすったねinasuttane
笑waraわしちゃいけねぇぜwashichaikeneeze
親oyaにはぐれたnihagureta子ko雀suzumeがga ぐれたをguretawo叱shikaるはruha無理muriなna話hanashiよyo
愚痴guchiじゃねぇjanee 未練mirenじゃねぇjanee
おかみさんokamisan 俺oreらのrano言iうことをukotowo よくyoku聞kiきなせぇkinasee
尋tazuねne 尋tazuねたneta母親hahaoyaにni 倅segareとto呼yoんでもらえぬようなndemoraenuyouna
こんなkonna こんなやくざにkonnayakuzani 誰dareがしたんでぇgashitandhe」
世間sekenのうわさがnouwasaga 気kiになるならばninarunaraba
こんなやくざにkonnayakuzani なぜnaze生uんだnda
つれのうござんすtsurenougozansu おっoxtu母kaさんsan 月tsukiもmo雲間kumomaでde
月tsukiもmo雲間kumomaでde もらいmorai泣naきki
「何nani言iってやがんでぇtteyagandhe 何naniがga今更imasara 忠太郎chuutarouでぇdhe
何naniがga倅segareでぇdhe 俺oreらにゃおっranyaoxtu母kaaはいねぇんでぇhaineendhe おっoxtu母kaさんはsanha
俺oreのno心kokoroのno底sokoにni居iるんだrunda 上ueとto下shitaのno瞼mabutaをwo合aわせりゃwaserya
逢aわねぇwanee昔mukashiのやさしいおっnoyasashiioxtu母kaさんのsanno面影omokageがga浮uかんでくらぁkandekuraa
逢aいたくなったらitakunattara 逢aいたくなったらitakunattara
俺oreぁa 瞼meをつむるんでぇwotsumurundhe」
逢aわなきゃよかったwanakyayokatta 泣naかずにすんだkazunisunda
これがkorega浮世ukiyoとto いうものかiumonoka
水mizu熊kuma横丁yokochouはha 遠too灯akaりri 縞shimaのno合羽kappaにni
縞shimaのno合羽kappaにni 雪yukiがga散chiるru