恋こいの病やまいは かかればつらい
薬効くすりきかない 流行風邪はやりかぜ
父ちちから盗ぬすむ 絵図面えずめんは
本所ほんじょ松坂まつざか 吉良きら屋敷やしき
惚ほれたお方かたに 役立やくだつならと
娘むすめごころは 命懸いのちがけ
「九きゅう十郎じゅうろうさま。どうしても欲ほしいと言いわれた
これが吉良きら様さまの絵図面えずめんにございます。
棟梁とうりょうの父ちち・藤兵衛とうべえが命いのちより大切たいせつな品しな。父ちちを裏切うらぎったこの想おもい、
お艶つやをどうぞ見捨みすてないでください、九きゅう十郎じゅうろうさま……。」
浮うかぶ面影おもかげ 現うつつか夢ゆめか
娘むすめ島田しまだの 箱枕はこまくら
赤穂あこうの方ほうが 討入うちいりと
声こえが耳みみ打うつ 雨戸あまど越ごし
虫むしの知しらせか 女おんなの勘かんか
押おさえ切きれない 胸むなさわぎ
「赤穂あこうお武家ぶけさまの中なかに、あっ、あれは九きゅう十郎じゅうろうさま。
羽織はおりのお名前なまえは、えゝ岡野おかの金きん右衛門うえもん様さま。私わたしを騙だましてあの絵図面えずめんを。
いいえ、私わたしを見みつめるあの目めに曇くもりはない。
あの恋こいはいつわりではなかった。お艶つやはそう信しんじております。」
嘘うそか誠まことか その目めを見みれば
惚ほれた女子おなごにゃ 判わかるもの
知しらずに出来できた お手伝てつだい
うれし涙なみだが 先さきに立たつ
江戸えどの雪道ゆきみち 並ならんで進すすむ
赤穂あこう浪士ろうしは 四十七しじゅうしち
恋koiのno病yamaiはha かかればつらいkakarebatsurai
薬効kusurikiかないkanai 流行風邪hayarikaze
父chichiからkara盗nusuむmu 絵図面ezumenはha
本所honjo松坂matsuzaka 吉良kira屋敷yashiki
惚hoれたおretao方kataにni 役立yakudaつならとtsunarato
娘musumeごころはgokoroha 命懸inochigaけke
「九kyuu十郎juurouさまsama。どうしてもdoushitemo欲hoしいとshiito言iわれたwareta
これがkorega吉良kira様samaのno絵図面ezumenにございますnigozaimasu。
棟梁touryouのno父chichi・藤兵衛toubeeがga命inochiよりyori大切taisetsuなna品shina。父chichiをwo裏切uragiったこのttakono想omoいi、
おo艶tsuyaをどうぞwodouzo見捨misuてないでくださいtenaidekudasai、九kyuu十郎juurouさまsama……。」
浮uかぶkabu面影omokage 現utsutsuかka夢yumeかka
娘musume島田shimadaのno 箱枕hakomakura
赤穂akouのno方houがga 討入uchiiりとrito
声koeがga耳mimi打uつtsu 雨戸amado越goしshi
虫mushiのno知shiらせかraseka 女onnaのno勘kanかka
押oさえsae切kiれないrenai 胸munaさわぎsawagi
「赤穂akouおo武家bukeさまのsamano中nakaにni、あっaxtu、あれはareha九kyuu十郎juurouさまsama。
羽織haoriのおnoo名前namaeはha、えeゝ岡野okano金kin右衛門uemon様sama。私watashiをwo騙damaしてあのshiteano絵図面ezumenをwo。
いいえiie、私watashiをwo見miつめるあのtsumeruano目meにni曇kumoりはないrihanai。
あのano恋koiはいつわりではなかったhaitsuwaridehanakatta。おo艶tsuyaはそうhasou信shinじておりますjiteorimasu。」
嘘usoかka誠makotoかka そのsono目meをwo見miればreba
惚hoれたreta女子onagoにゃnya 判wakaるものrumono
知shiらずにrazuni出来dekiたta おo手伝tetsudaいi
うれしureshi涙namidaがga 先sakiにni立taつtsu
江戸edoのno雪道yukimichi 並naraんでnde進susuむmu
赤穂akou浪士roushiはha 四十七shijuushichi