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KREVA ドリームチームで臨んだ「908 FESTIVAL 2021+1」レポート!

Photo by 田中聖太郎

自身主催「908 FESTIVAL 2021+1」3DAYS+α完走!

2021年内の開催を一時見送りにし、2022年2月に満を辞して開催される運びとなった「908 FESTIVAL 2021+1」。



■2/17 DAY1 @東京国際フォーラム ホールA

Photo by 田中聖太郎

入念な感染症対策を講じて臨むDAY 1の舞台は、東京国際フォーラム ホールAだ。立ち上るCO2の中に姿を見せたKREVAは、オーディエンスに向けて「本当によく来てくれました、ありがとうー!!」と告げながら久々の開催の喜びを溢れ出させていた。

お馴染みKREBandのメンバーは、バンマス・白根佳尚(Dr)、柿崎洋一郎(Key)、田中義人(G)、大神田智彦(B)、熊井吾郎(MPC+DJ)、SONOMI(Cho+Key)という顔ぶれ。

KREVAは演奏の中に“Finally”を切り出す。そのクライマックスには、サングラスを外してひときわ熱を込めた《やっとあえたな…》のフレーズだ。

続いて、この日のもう一人のメインアクトであるZORNがステージに加わり、バンドアレンジで届けられるのは直近のコラボ曲“クラフト feat. ZORN”。

奔放さを増して広がるリリックとフローの交錯が、2人のクリエイティビティの高まりを伝えていた。

Photo by 田中聖太郎

ステージはZORNのパフォーマンスへとバトンが手渡され、DJ TATSUKIが繰り出すドープなトラックとともに、まずは地元に根付いたストリートスピリット全開の“REP”から“Keep It Real”へと繋いでいった。

歯に衣着せぬラップを見せつける“Shinkoiwa”や“Have A Good Time”の後には、情緒的な名曲“Walk This Way”の生活感が沁みる。

ZORN一流のリリシズムが、触れる者の胸元ど真ん中に放り込まれるのだった。“Don’t Look Back”や“Life Story”は、まるで感情の濁流だ。

あらためて感謝の思いを伝え、KICK THE CAN CREW時代に出会ったKREVAの表現を回想しながら、「やっぱりあの人がキングだな。でも、次はお前だって言ってくれた日から、早く引退してくれないかなとも思っています」と不敵な笑みを浮かべるZORN。

憂いたギターサウンドが鳴り響く“家庭の事情”では、その濃密なリアリティに身震いさせられ、“Stay Gold”や“All My Homies”では、つぶさに描き出された友愛が胸を打つ。

まるでラップのオペラを観るかのようにシアトリカルなパフォーマンスだ。“Lost”や“My Life”、“Rewind”へと連なり、深紅の衣装に着替えたKREVAが姿を見せたところで、バンドアレンジの“One Mic feat. KREVA”である。

2人と共にオーディエンスが人差し指をかざして、熱気冷めやらぬままフィニッシュするのだった。


Photo by 田中聖太郎

続いてはKREVAのターン。情緒豊かなバンドアレンジの“In the House”から“変えられるのは未来だけ”にかけて、最新アルバム『LOOP END / LOOP START』のモードに生身の熱を込めていった。

「楽しいのは保証済みだから。日本のラッパーの1、2がここに来ちゃってるんだもん」と冗談めかす(あながち冗談とも思えないが)MCを挟み、今度は“基準 〜2019 Ver.〜”からの“Paradigm”と、ロックなバンド演奏のアタック感に後押しされて猛烈なラップをまくしたててゆく。

ライブ中に突如MCUから電話がかかってくる、という小芝居では、翌日に控えたKICK THE CAN CREWの練習もせずレトロゲームに夢中なMCUを指して、「余裕だね!」と告げながら“よ ゆ う”へと向かう。

声を上げさせることなく、オーディエンスの掌の動きでコール&レスポンスを求める“人生”の後、“って feat. SONOMI”ではもちろん、磐石のハーモニーを響かせていた。

Photo by 田中聖太郎

本来ならば、昨年9月に10周年を迎えていた「908 FES」。

しかしここで“All Right”に綴ったリリックを引用しながら、いつかまた大勢のオーディエンスが大合唱できる日が来ると信じている、と熱弁するKREVA。

“All Right”から“C’mon, Let’s go”、さらには“今夜はブギーバック”へと、メドレーでメッセージを繋いでゆく。

“アグレッシ部 〜2019 Ver.〜”や“音色 2019 Ver.”と名曲を連打した後には、「この曲はストレートに、俺のファンに届けるぜ」とメロウなサウンドの“LOOP END / LOOP START”へ。

そして、「今日の俺のパートナー」とあらためてZORNをステージに迎え入れ、この日のフィナーレを飾るナンバーは“タンポポ feat. ZORN”である。

ふたつの不屈の魂が、困難な時代を突き破って花を咲かせるのだった。

■2/18 DAY2 @日本武道館

Photo by 田中聖太郎

「908 FESTIVAL 2021+1」の2日目は、久々の日本武道館に帰還する形で開催を迎えた。

グレーとブラックのモザイク模様が印象的なスーツを纏うKREVAは、「震えるなあ。いろんなことがあったし、いろんなことがあるからな」と告げて、思いを噛み締めるように“Finally”からパフォーマンスを切り出す。

セットリストは基本的に前日と同じだが、次第に高速回転し、生々しい感情の奔流と化すラップが強烈だ。

「武道館、マイ・スウィート・ホーム!」と呼びかけながら“In the House”を放ち、押韻とメッセージが渾然一体となった楽曲を次々と放つ。

花火や紙吹雪といった盛りだくさんの特効が華やかさを増幅させる一方、オーディエンスの声なき拍手喝采に対しては笑顔で「泣かそうとしてるの?」と応え、「今日は声を出せないかもしれないけど、その拍手が力になりますので」と告げるのだった。

またこの日は“よ ゆ う”へと向かうとき、最終日に出演を控えた三浦大知からライブ中に電話がかかってくる、という小芝居も披露される。

Photo by 田中聖太郎

「みんなの前でやると、音楽の力を信じられる。“人生”が終わった後の拍手、沁みたなあ。後ろを振り返ると、かっこいいバンドがいるしね」と、何度でも「908 FES」開催の喜びを溢れ出させるのだが、より良いライブ環境を取り戻す未来を見据えながら披露された“All Right”〜“C’mon Let’s Go”〜“今夜はブギーバック”というメドレーは、この日も滑らかに楽曲のキーを上方向シフトさせるバンド演奏によって、まさに階段を上るように、状況が少しずつ変化してゆく過程を音楽的に表現していた。

さて、KREVAがステージから離れる僅かな時間に、バンドがスロウなBPMで奏で始めるのは、KICK THE CAN CREW“千%”のイントロだ。

演奏がひときわ力強く鳴り響くと、それぞれに色と柄はお揃いだが形状の異なる衣装で、KICK THE CAN CREWが躍り出てマイクリレーを繰り広げる。

これこそ、天下無双のキャラ立ち3本マイクである。

Photo by 田中聖太郎

LITTLE曰く、メジャーデビューアルバム『VITALIZER』リリースから20年と4日を数えるこの日、3人は変わらず“スーパーオリジナル”なコンビネーションと存在感を見せつけるのだった。

“sayonara sayonara”の湿り気を帯びた情緒深さや、 わちゃわちゃと相変わらず楽しそうな“地球ブルース〜337〜”、さらに「手を消毒して《握手交わす》!」の“マルシェ”と、ライブ定番曲の披露はもちろん嬉しいのだけれど、原曲のテイストを大切にしながら生演奏で再現してしまうKREBandの力量にも舌を巻く思いだ。

3人がステージに腰掛け、光と映像の幻想的な光景の中で披露される“ユートピア”の後、LITTLEはちょうどこの日、還暦を越えて勤め続けていたお母さんが長年の仕事納めを迎えたということで、ステージ上から「おつかれさまでした!!」と言葉を投げかける。

オーディエンスは、温かな拍手を贈っていた。一方、MCUはファミコン世代だけが爆笑するネタを飛ばしまくる。

Photo by 田中聖太郎

そして、先頃デジタルシングルとミュージックビデオが届けられたばかりの“Boots”については、そもそも“イツナロウバ”の冬版をイメージして生み出した楽曲であることを明かし、「まだ何も終わっちゃいないぜ」と“イツナロウバ”のフックを歌って“Boots”に繋ぐ。

新曲なのに、グッと親密な距離感で伝うナンバーだ。キラキラとした曲調の中から、KTCCの進化し続ける表現力が伝わる。

“アンバランス”で一面のハンドウェーブを巻き起こすと、「今日は武道館を“住所”にしようぜ」とそれぞれの愛情をだだ漏れにし、KREVAはプリセットの岡村靖幸パートに歌声を重ねるのだった。

3月30日リリースのニューアルバム『THE CAN』も楽しみだ。

■2/19 DAY3 @日本武道館

Photo by 田中聖太郎

いよいよの「908 FESTIVAL 2021+1」最終日も、日本武道館で開催を迎えた。

「皆さん、この状況の中、そして雨の中、本当に、本当によく来てくれました。どうもありがとう」と告げ、ストリーミング映像で見つめるオーディエンスや、それぞれの事情で現地参加を諦めた人にも気を配りながら、“Finally”を繰り出すKREVA。続けざまに、ミュージックビデオの映像を背負って“クラフト feat. ZORN”のショートバージョンを披露すると、きらびやかなシンセフレーズの中に姿を見せるのは三浦大知。

そう、“全速力 feat. 三浦大知”だ。目から耳から、逃れがたい高揚感と躍動感が注ぎ込まれるコラボ曲である。

Photo by 渡邊玲奈(田中聖太郎写真事務所)

KREVAからステージを預かった三浦大知は、自身と同じく全身白の衣装を纏うダンサー陣とともに、先鋭的にして芸術性の高い“Le Penseur(ル・パンスール)”で会場のムードを一変させる。

狂おしい歌と緊迫感に満ちたダンスを繰り広げ、“Yours”へと繋いでいった。まさに全身がアートと化し、オーディエンスと対峙する時間だ。

曲間では、KREVAとの共闘で過ごしてきたコロナ禍を回想しつつ、実に2年ぶりとなった有観客ライブに感慨を溢れ出させる。

「音楽の中で、宇宙遊泳を楽しんでいってください」と呼びかける“Spacewalk”以降は、KREBandが楽曲演奏を担う形でパフォーマンスを進めるのだった。

Photo by 田中聖太郎

コズミックなファンクグルーヴになびく、ソウルフルで甘い歌声はどうだろうか。

そしてゼブラ柄衣装のKREVAを呼び込み、2人の初のコラボ曲となった“Your Love feat. 三浦大知”へ。

「908 FES」にとっても、クラシックと呼ぶべき1曲だろう。「見えない未来というのは、間違いなく、今を積み重ねていった先にあるものだと思います」と語り、“I’m Here”では再びダンサー陣とともにエネルギーを放射する。

ファイアーボールが吹き上がる中で豪快な“Blizazard”を披露し、オーディエンスと一緒に拳を突き上げると、汗にまみれた笑顔で最後に届けるのはなんと、“居場所 〜三浦大知 Ver.〜”。

思いのこもった美声で「908 FES」をセレブレイトするような、KREVA曲のカバーだ。

「KREVAさんが守ってくれた908 FES、そして皆さんと作るこの場所が、俺の居場所!!」と高らかに告げて、ステージを後にするのだった。

Photo by 田中聖太郎

色とりどりの花がデザインされた衣装でステージに帰還したKREVAは、この日も“In the House”を皮切りに、最新アルバム『LOOP END / LOOP START』の収録曲を中心としたパフォーマンスを繰り広げてゆく。

エモーショナルな曲調に、思い悩んだ末のタフな発想をリリックに忍ばせ、KREBandの躍動感の中から生身のメッセージとして放つこと。それが「908 FESTIVAL 2021+1」の3日間に通底する大きなテーマになっていた。

「ずるい男だねえ、三浦大知。居場所!って言わないって言ってたのに。ほとんど泣きながら出てきたからね、俺」。

そんなふうに笑いを振りまきながらも、真剣勝負の熱量がまったく損なわれないステージになっている。

ロックなサウンドの“Paradigm”で《戦場で開催 自分博》とラップする次の瞬間、バンドが『愛・自分博』に収録された“H.A.P.P.Y”を挿し込む遊び心が楽しい。

“人生”では「手で歌って!」と呼びかけて一体感を生み出す光景も、この3日間ですっかりお馴染みになった。あの手この手で、どうにか音楽の喜びを導き出す知性。それが今回の「908 FES」をガッチリと支えている。

Photo by 田中聖太郎

そして「908 FES」に欠かせない同志・三浦大知のこれまでの活躍を振り返り、フェス全体のことを考えてくれる姿勢を賞賛する。

三浦大知“FEVER”の一節をカバーし、そこから“All Right”〜“C’mon,Let’s go”〜“今夜はブギーバック”というミックスで、一歩ずつ一段ずつ、明るい未来を目指すパフォーマンスはこの日も素晴らしかった。

そして、《かまわず目指すぜ だって俺のループエンド/それは君のスマイルでしょ》という“LOOP END / LOOP START”が、約束のように響き渡る。

最後には三浦大知を呼び込み、「絶対にあえると信じてたぜ!」と告げながら、“Fall in Love Again feat. 三浦大知”を届けるのだった。

Text by 小池宏和

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