印象的なフレーズが耳から離れない
フレデリックは兵庫出身のバンド。双子の弟、三原康司が作詞作曲を担当し、兄の三原健司がボーカルをつとめます。ギターの赤頭隆児を加えた3人組。ドラムもいましたが、2015年9月に脱退しています。
2014年に発表した楽曲、印象的なフレーズを繰り返す『オドループ』で脚光を浴びたフレデリック。
2016年6月発売の1stシングル『オンリーワンダー』も一度聴いたら耳に残る楽曲です。印象に残るフレーズをループさせています。
オンリーワンダー
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何言ってんだ みんな違ってんだ
バカにしてんな シャットアウト
スポットライト あたってんのに パッパッパッとせん
まるで誰かのアンサーアンサー気取ってんだ
しっしっしっぽふってんなよ
どうなったってさ 最後まで君は君のもの
≪オンリーワンダー 歌詞より抜粋≫
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歌いだしから、かなりリズミカルな言葉運び。「なにいってんだ」「みんな」「ちがってんだ」と語尾で「a」の音でリズムを作ります。
この曲はサビのメロディとリズムが印象に残る曲ですが、冒頭から核となる「a」のリズムを仕込んでいるんですね。そして「ばか」「にしてんな」ときて、「シャットアウト」で一瞬切ります。
皆が皆違っているのだからバカにする声はシャットアウトしていい!というメッセージをここまでのフレーズで端的に伝える構成。
さらに「シャットアウト」からの流れで「スポット」「ライト」と「と」のリズムを刻みます。「あたってんのに」からの流れも見事。
「ぱっぱっぱっとせんまるでだれかの」と、「ぱっとせん」から次のフレーズを立て続けに歌っています。
こうすることで、余計な間ができずに自然と曲が先に行く仕組み。「あんさーあんさー」「きどってんだ」と再び「a」のリズムを刻み、「しっしっしっぽふってんなよ」。「ぱっぱっぱっと」のリズムに対応する「しっしっしっぽ」。
スポットライトが当たってもパッとしないのは、誰かが求めている答えを言おうとし過ぎて、周囲に気を使って尻尾を振っているだけだからだ。
普通に言ってしまうと説教くさくなりそうなことを、リズムにのせてさらりと聴かせています。
そして「どうなったってさ 最後まで君は君のもの」とサビ直前のフレーズ。ここまでを流れるように歌います。このフレーズが自分は自分、君は君である、というタイトルにもある「オンリーワン」の言い換え。
"ワンダーテンダー"ってなに?
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だからワンダーテンダー歌ってんだ 歌ってんだずっとずっと
ほっとけほっとけほっとけないほど大切なんです
悲しみがなんだってんだ歌ってんだ 歌ってんだずっとずっと
ほっとけないほっとけないひとりとさ歌って
1番なんかならなくたって君が笑ったんだ
扉を開くのはワンダーテンダーオンリーワンなんだ
ラブミーテンダー みんな歌ってんだ
≪オンリーワンダー 歌詞より抜粋≫
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「だからワンダーテンダー歌ってんだ」「悲しみがなんだってんだ 歌ってんだ」というサビのフレーズ。耳に残りやすいリズム感の良さ。
「ワンダー」は驚きの意味。では「テンダー」とは何でしょうか。
2番の歌詞に「ラブミーテンダー みんな歌ってんだ」とあります。エルヴィス・プレスリーの名曲『ラブ・ミー・テンダー』からの引用。「ラブ・ミー・テンダー」は「優しく愛して」の意味。
1956年にリリースされたこの曲は、多くのカバーが存在するスタンダードナンバー。歌詞どおりに「みんな歌って」いる曲です。この「ラブミーテンダー」が示すように、テンダーは優しく、愛情がこもっている様。「ワンダーテンダー」で驚きと優しさを歌っています。
「ほっとけほっとけほっとけないほど」と「ほっとけないほっとけないひとりとさ」で絶妙にリズムを変えているのもうまいですね。これで飽きがこないようにしています。
「扉を開くのは ワンダーテンダーオンリーワンなんだ」サビ終わりで結論が出てきました。タイトル「オンリーワンダー」が、「オンリーワンだ」と「オンリーのワンダー」をかけていることが分かりますね。
「ワンダーテンダー」をタイトルにしてもいいはずなのに「オンリーワンダー」をタイトルにしています。それはやはり、「オンリーワン」という主張を大切にしたいからなんですね。1番にならなくてもオンリーワンの感性を大切にしてほしい、と歌います。
ともすれば、ありがちな曲、ありがちなメッセージとも受け取られかねないこの曲。しかし、このグループはそれを恐れません。それほど、何度もループするほど「オンリーワン」であることを真剣に追及しているからなんですね。
TEXT 改訂木魚(じゃぶけん東京本部)