布袋寅泰は、ギタリストであり、ボーカリスト。様々な曲を発表していますが、2000年代以降で有名なのは、『新・仁義なき戦い』のテーマ曲。クエンティン・タランティーノ監督の映画>『キル・ビル』のテーマ曲に使用され、世界的に有名な曲となりました。現在はイギリスで活動している布袋寅泰。
そんな布袋寅泰の『バンビーナ』は、1999年に発売された17枚目のシングル。ノリの良いロデオロックで、一度聴いたら印象に残るでしょう。タイトル「バンビーナ」は、「女の子」の意味。
作詞はベテラン作詞家の森雪之丞。数々のヒット曲の作詞を担当しており、布袋寅泰の楽曲も多数作詞しています。江頭2:50がやってくる曲として有名な『スリル』も森雪之丞の作詞。
“容姿は幼稚で 陽気な様でも
酔うと異様に 妖艶なヤツ”
「容姿は幼稚で陽気な様でも酔うと異様に妖艶なヤツ」という韻の踏み方、良いですね。このちょっとやり過ぎなほどの「よ」の音の畳み掛けで、曲の勢いが増しています。きちんと意味も通っているのが作詞家の腕の見せ所。
“ヌードになったら 天使だったね
魅惑の BAMBINA”
こういうフレーズを歌っても嫌味でないのが、このアーティストのすごさでしょう。ある種の男のカッコつけ感を歌っている曲。
“世紀末だって 過ぎれば昨日さ
恋も出来ないで 死ねるわけないだろう”
そしてサビ以上に、この曲の要なのがこのあたりの一連のフレーズ。まず、「世紀末だって 過ぎれば昨日さ」というフレーズが出てきます。この曲がリリースされたのが、ちょうど世紀末の時期だったので、タイムリーだったんですね。今の時代は、まさに世紀末が昨日になった時代。「恋も出来ないで 死ねるわけないだろう」というフレーズも良いです。ここのつながりは、やはりこの当時だから出てきたフレーズだと言えるでしょう。
1999年ごろは20世紀の終盤で、2000年になるタイミングで世界が終わってしまうのではないか?と考えた人が結構な数でいたのです。2000年問題という言葉があったぐらいで、ある種の不安があった時代。だから、どうせ死ぬなら恋をしてからだというフレーズが出てきます。
世紀末をとっくに過ぎた今の時代だと、ともするとこのフレーズは聞き流してしまうかもしれません。しかし、今の時代だからこそ、こういう心意気が重要。どんな不安なことでも過ぎ去れば過去のこと。現代という時代に不安を抱える人は多いですが、「過ぎれば昨日」。布袋寅泰は、諸々の不安を乗り越えろと暗に示しているんですね。
“低気圧だって 青空の破片
キッスばら撒いて 未来へ行こう”
そして、同じくここも良いポイントです。低気圧は雨をもたらすもの。けれど、それすら青空の欠片、良き兆候。明確に「未来へ行こう」というフレーズが出てきます。この曲がずっと好かれているのは、未来へ行くことを肯定しているから。今の時代こそ、こういう歌が響くのです。
布袋寅泰のコンサートは、開演前から男性ファンの「布袋ー!」という声であふれています。もちろん女性ファンも多いですが、布袋寅泰は、同性から憧れるところがあります。それはギタリストとしてアーティストとして、独自のスタイルがあり、実績があるから。布袋寅泰だからこそ、この曲は輝くんですね。
TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)