「ビバリウム」の意味とは?
『ビバリウム』は2026年2月に発売された自伝小説『ビバリウム Adoと私』を元に作られた楽曲です。Ado自身が作詞作曲を手がけており、これまでの歩みを思わせる言葉が随所に登場します。
曲名の「ビバリウム」とは、生き物が本来暮らす自然環境を、人工的に再現した空間のことです。
歌詞には「仄暗い 箱庭」という言葉が登場します。
この「箱庭」は、Adoがデビュー前に歌を録音していたクローゼットと重ねて読めそうです。
外の世界から隔てられたクローゼットは、自分の世界に閉じこもれる場所だったのと同時に、歌と向き合い夢を育てる場所でもあったのかもしれません。
冒頭から自分自身について悩んでいるように描かれています。
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あれからどれくらい経ったことだろう
くぐもった物言いは相も変わらずで
鏡が写すは隔たる理想像
不器用な指先に今日も手をかけた
≪ビバリウム 歌詞より抜粋≫
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自分を変えたいと思っても、思うようには変われない苦しさから、自分自身を責めている様子から始まっていくのです。
繰り返される自己否定と後悔

箱庭にいる「私」は、周囲との関係にも苦しんでいるよう。
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誰かの言葉で 1人、爪弾き
しょうがないね 望まれたことなんてないし
こびりつく赤色 罵声の裏で問答
≪ビバリウム 歌詞より抜粋≫
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周囲から向けられた言葉をきっかけに、「自分は周りと違うのかもしれない」と感じるようになったと読み取れそうです。
その違いを意識するうちに周囲との距離が広がり、「自分は必要とされていない」と思い込むようになったのかもしれません。
さらに印象的なのが、この後の問いでしょう。
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「欠陥は特別?」
なら、初めから紛いもの
≪ビバリウム 歌詞より抜粋≫
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ここでは、自分と周囲との違いを「欠陥」と捉え、自己否定を強めていく展開に。
「欠陥があるからこそ特別」と捉えるのではなく、「欠陥があるなら自分は最初から紛い物だ」と結論づけているのでしょう。
自身の欠点を受け入れられないまま、自己否定の泥沼にハマっていく心の葛藤が伝わってきます。

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叶えたいものとは引き換えに
大切なものを壊してきて
後悔ばかりで息ができないから
≪ビバリウム 歌詞より抜粋≫
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ここでは夢を追う中で何かを失い、その結果として後悔を抱えてしまった心の動きが描かれています。
そしてその後悔が苦しいからこそ、
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感情を棄てて楽になって
≪ビバリウム 歌詞より抜粋≫
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「苦しむくらいなら、感情を棄てて楽になりたい」と考えてしまう。
しかし、感情を捨てれば傷つかないで済む一方で、後悔から何かを学ぶことも難しくなります。
だからこそ、
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大人になるの?
≪ビバリウム 歌詞より抜粋≫
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「傷つくことも失敗することも、そこから立ち直る方法も知らないまま大人になっていいのか」という戸惑いがあるのではないでしょうか。
"光"は何を意味する?

そんな「私」の前に「遠くで揺れた光」が表れます。
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仄暗い 箱庭で
とめどなく私が私の夢を見ていた
遠くで揺れた光は 私を呼ぶ気がした
≪ビバリウム 歌詞より抜粋≫
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閉ざされた箱庭の中にいる「私」にとって、この「光」は希望や未来を示すもの。
しかしその直後に再び孤独や焦りが描かれます。
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気付けば 振り向くと此処に、1人
散らかった部屋の中 迷い込む蜃気楼
どうして 溢れだす涙と焦燥
深爪の指先また赤く染まった
≪ビバリウム 歌詞より抜粋≫
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光を見つけたからこそ、今の自分との差を痛感したとも読めるでしょう。
続く歌詞には、自分を責める声が繰り返されます。
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「どうして何もできないの」
「どうして何も知らないの」
「わからない」
≪ビバリウム 歌詞より抜粋≫
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頭の中で自分を責める声と、自分自身がぶつかっているようにも感じられる一節です。

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「大人になってしまったみたいだ」
≪ビバリウム 歌詞より抜粋≫
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そして、「このまま大人になるの?」と不安を抱えていたのが、やがて「大人になってしまった」と振り返ります。
「このままで大人になっていいのか」という迷いを抱えたまま、答えを見つけられないうちに時間が過ぎてしまった、そんな心情にも読めそうです。
そんな「君」に必要だったものとして続くのが「名声よりも先に大丈夫の一言が必要だった」という言葉。
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「君に必要だったのは名声よりも先に」
「大丈夫の一言だったね」
≪ビバリウム 歌詞より抜粋≫
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「自分を肯定してくれる言葉が必要だった」そんな過去の自分への理解が生まれた場面とも考えられそうです。
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「揺れる都の奥
その光の中で 機械少女の歌が聴こえた」
「私も、そこに行きたい」
≪ビバリウム 歌詞より抜粋≫
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さらに「機械少女の歌」が聞こえ、「私も、そこに行きたい」と続きます。
ボカロ文化をきっかけに歌い手として活動を始めたAdoにとって、この「光」は歌の世界を指しているようにも考えられます。
遠くに見えていた光が、ここでは自分から向かいたい場所へ変わったのではないでしょうか。
「私は歌わなくちゃ」と未来へ

終盤では、最初は遠かった光が「触れられる距離」まで近づきます。
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仄暗い 箱庭で
とめどなく私が私の夢を見ていて
触れられる距離のまま 離れないで 変わらないで
≪ビバリウム 歌詞より抜粋≫
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ここでは、夢や未来が少しずつ現実に近づいているようにも感じられます。
一方で、「離れないで 変わらないで」という言葉からは、やっと近づいた夢や希望が消えてしまうことへの不安や、「このまま続いてほしい」という切実な願いにもみえます。
それでも、
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さよなら まだ 私は
歌わなくちゃ
≪ビバリウム 歌詞より抜粋≫
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と歌われます。
Ado自身が作詞作曲を手がけたことを踏まえると、この「歌わなくちゃ」には歌うことへの強い意志も重なってみえます。
そして最後に登場するのが「クローゼットの君」です。
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クローゼットの君はまだ
泣いてる
≪ビバリウム 歌詞より抜粋≫
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現在のAdoは歌を通して外の世界へ進んでいるが、過去のAdoはまだクローゼットの中で泣いている。
過去の自分を消して今を生きているのではなく、「傷ついた自分を抱えたまま、それでも歌い続ける」そんな姿が描かれているように読み取れます。
Ado「ビバリウム」が描くのは
Ado自身が作詞作曲を手がけた『ビバリウム』は、過去のAdoと現在をつなぐ一曲として読み取れそうです。「箱庭」や「光」「歌わなくちゃ」という言葉に注目すると、歌詞に込められた心情がより見えてくるかもしれません。
最後の「クローゼットの君」にも注目しながら、Ado自身の歩みに思いを重ねるように、ぜひ歌詞と照らし合わせて聴いてみてください。
