岡野昭仁の歌声が爽やかに明るくする
2016年発表の43枚目のシングル『THE DAY』は、アニメ『僕のヒーローアカデミア』通称ヒロアカの主題歌。
ボンズ、ポルノ、1期主題歌という、かつての『鋼の錬金術師』と同じ組み合わせです。
さらにアニメのストーリーにやや暗い展開、重いテーマがある点まで共通。
ポルノグラフィティは、なぜアニメ1期主題歌に選ばれるのでしょう。
岡野昭仁の歌声が、作品イメージを爽やかに明るくしているという点があります。
前向きに進めるよう背中を押してくれる
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けして明けない夜も 降り続けてやまない雨も
このろくでもない世界にはあるんだよ
少しも変ではないの まどろみに足を取られてる
あなたを責めているわけじゃないんだよ
≪THE DAY 歌詞より抜粋≫
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たとえばAメロの歌いだしの歌詞。
「けして明けない夜も 降り続けてやまない雨も このろくでもない世界にはあるんだよ」という結構ハードな歌詞。
ですが、ポルノが歌うと前向きな要素が加わります。「あけない」「やまない」「ろくでもない」と、マイナスイメージの単語がリズミカルに続くフレーズ。
ボーカルのハッキリと発音する明るい歌声が、歌詞のマイナスイメージを中和しています。
そして「あるんだよ」を「よー」と高く歌うメロディ。
このフレーズをこの「よー」でしめることで、ろくでもない世界をそれでも前向きに走っていくイメージが加わります。
もし、この「よー」が低く暗い音だとしたら、ろくでもない世界だししょうがない、とあきらめの雰囲気が加わってしまう。
それを避けて、あえて上げているのです。
続く「少しも変ではないの まどろみに足を取られてる」という歌詞もヒロアカの主人公が抱えている悩みの表れ。
「あなたを責めてるわけじゃないんだよ」という歌詞で、なかなか前に進めない人を励まします。
ここも「よー」の効果。「よー」で音が上がるから気分も上がる。
極端な話、ラップの「YO!」という掛け声のような役割を担っています。
自分を信じて進むことの大切さ
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独り空想に遊ぶ そこで思い描いたことまで恥じるのかい?
絡み合う迷宮 迷宮 それでも行くというの?
小さき旅人が奏でる 始まりの鐘の音
行く当ても DON'T KNOW DON'T KNOW 本当は怖いんじゃないの?
踏み出すその一歩一歩が変えていけるさ THE DAY HAS COME
≪THE DAY 歌詞より抜粋≫
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「独り空想に遊ぶ」それを恥じるのか?というサビへとつなげる箇所。
「恥じるのかい?」=恥じる必要はない!ということ。
ヒロアカの主人公デクが「個性」と呼ばれる特殊能力がないけれど、それでもヒーローになりたい!と空想する思いを的確に歌詞にしています。
「絡み合う迷宮 迷宮 それでも行くというの?」サビです。
自分の空想を恥じる必要はない!と言っておきながら、直後に迷宮のように複雑な世を行くの?と再び問いかける歌詞。
次のフレーズで答えは出ています。「始まりの鐘の音」とあるように、それでも行く!始めるのです。
「鐘の音」というフレーズがチャイムを連想させ、「ヒーローアカデミア」という「学校」のストーリーであることが、このフレーズで分かる仕組み。
続く歌詞も、行くあても分からず「本当は怖いんじゃないの?」と問いかける歌詞。
なぜ続けて3回も問いかける歌詞なのか?それは考えてもらいたいからです。
こういうアニメを観るであろう少年少女達も、大人が言うことをそのまま受け取らずに、一旦自分の頭で考えて欲しい。だから問いかける。
そしてサビの最後でスタートを後押しする歌詞を持ってきます。
「踏み出すその一歩一歩が変えていけるさ THE DAY HAS COME」というサビ終わり。
タイトルが入る「THE DAY HAS COME」は歌っている本人も言うように、かなり高い音。
「THE DAY」=「その日」とは、デクの台詞に沿うなら「デクが真のヒーローになる日」のことでしょう。
そして、この「その日」というのは、聴き手がそれぞれの「その日」を当てはめることができるようになっている。
この声で歌われたら「その日」が来ると信じることができるのです。
岡野昭仁は41歳、新藤晴一も41歳。
ともに少年と呼べる歳ではありません。
それでも少年漫画の主題歌を歌う。
それは、劇中でトップヒーローのオールマイトがデクを励ますように、ポルノが歌で少年少女を励ましているから。
その励ましに説得力を感じさせるほど、歌唱力とそれを活かす楽曲の力があるから。
まさに物語のスタートの後押しをする、全ての人の「THE DAY」を応援するアーティストなんですね。
TEXT 改訂木魚(じゃぶけん東京本部)