Mrs. GREEN APPLE「シンデレラ」は、おとぎ話の扉を開くような一曲
Mrs. GREEN APPLEの「シンデレラ」は、2026年9月30日発売の6thアルバム『POPS』に収められた書き下ろしの新曲です。『POPS』は『ANTENNA』以来3年ぶりのフルアルバムで、既発表曲7曲と新曲9曲の全16曲で構成されています。
ところで、「シンデレラ」と聞いて、どんな姿を思い浮かべるでしょうか。
物語の主人公。みんなの憧れ。ガラスの靴やドレスがきらめく世界。
最初は継母や姉たちにこき使われる不遇な日々を送りながら、最後には王子様と結ばれて幸せをつかむ女の子。
多くの人が、そんなイメージを持っているはずです。
この曲のサウンドは、まさにそのイメージどおりです。
イントロや間奏、アウトロには、シンデレラの物語の中で流れていそうな心躍る音がちりばめられています。
舞踏会の幕が上がるようなきらびやかな響きに、思わず胸が高鳴るでしょう。
ところが、歌詞に描かれる「私」は、おとぎ話のヒロインのように清らかではありません。
嘘をつき、誰かを妬み、それでもシンデレラに憧れてしまう。
華やかなサウンドと相対するような本音。
そのギャップこそがこの曲の大きな魅力です。
ここから歌詞を詳しく考察していきます。
「こんな私」でも、シンデレラに憧れていいの?

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こんな処まで
なにをしにきたんだっけ?
既に涙は流れてる模様です
こんな私だって 必要とされてるんです
ねぇ そうだよね?
答えて お願い
≪シンデレラ 歌詞より抜粋≫
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曲は、どうしてこんなところまで来てしまったのだろう、という戸惑いから始まります。
気づけばもう涙が流れている。
その様子を、主人公はまるでニュースの実況のような、どこか他人事のような語り口で伝えます。
自分の感情を正面から受け止めきれず、一歩引いた場所から眺めることで、かろうじて平静を保とうとしているのかもしれません。
そしてこんな自分でも誰かに必要とされている、と言い聞かせます。
けれどすぐに、そうだよね?答えてほしい、と誰かにすがってしまう。
自信のなさと、認めてほしい気持ちが生々しく表れています。
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憧れは
いつだって 私がシンデレラ
いつだって 私がシンデレラ
いいの いいの
いいの いいの
叶うはずないもの
いつだって 私は嘘つきで
いつだって 誰かを妬むけど
いいの いいの
いいの いいの
これが私だもん
≪シンデレラ 歌詞より抜粋≫
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ここで、タイトルの「シンデレラ」が登場します。
この歌詞の主人公の憧れは、いつだって自分がシンデレラになることです。
けれど、すぐに「いいの」を何度も繰り返し、どうせ叶うはずがないと自分から夢を手放してしまいます。
この「いいの」は、本当に納得している言葉ではないでしょう。
傷つく前に、自分で自分をなだめているように聞こえます。
続く歌詞では、自分はいつも嘘つきで誰かを妬んでばかりいる、と打ち明けます。
それでも最後には、これが私なのだと開き直ってみせる。
シンデレラは、継母や姉たちにいじめられても、心の清らかさを失わなかったヒロインです。
そんな理想像とかけ離れた自分を認めてしまうところに、この曲の正直さがあります。
ヒビ割れた器のまま、愛を求めてしまう私

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こんなことしてまで
愛されたいんだっけ?
既に器はヒビ割れてる模様です
こんな私だって 本当は優しい子なんです
ねぇ そうだよね?
教えて お願い
お願い
≪シンデレラ 歌詞より抜粋≫
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1番では何をしにここまで来たのかと自問していましたが、ここでは「ここまでしてでも愛されたいのか」と問いが一段深くなります。
さらに、心の器はもうヒビ割れている、と歌われます。
涙が流れているだけだった1番に比べて、傷はより深刻になっています。
それでも主人公は、本当は自分は優しい子なのだと訴えます。
また「答えて」と求めていた言葉は、ここでは「教えて」に変わっています。
自分が何者なのかさえ、もう自分ではわからなくなっている、そんな変化がたった一語の違いに込められているように感じます。
最後に重ねられるお願いの言葉からは、苦悶や切実さがいっそう伝わってきます。
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憧れは いつだって
私が死ぬまでは
せめて 私が死ぬまでは
一歩 一歩を
いっそ美しく描いてほしいのよ
いつだって 私は欲張りで
いつだって あなたを妬むけど
いいの いいの
いいの?
もうどうすればいいかが
わからない
≪シンデレラ 歌詞より抜粋≫
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自分の人生も、シンデレラの物語のように美しく描いてほしい、という願いが歌われます。
誰もが自分の人生の主人公でありたい。
その気持ちは、多くの人が胸の奥に持っているものではないでしょうか。
続く歌詞も1番と似た告白が繰り返されます。
「嘘つき」は「欲張り」に。
妬む相手は、漠然とした「誰か」から、はっきりとした「あなた」に。
そして、開き直りの言葉だった「いいの」の最後に、疑問符がつきます。
1番で「これが私」と言い切れていた主人公は、ここでは、どうすればいいのかわからないと立ち尽くしてしまいます。
自分を肯定しようとする気持ちが、ここで一度揺らぐのです。
叶わない憧れの先で、「唯一のシンデレラ」になる

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憧れは
いつだって 愛されるあの子で
純粋なあの子で
裕福なあの子で
いいな
敵うはずないもの
≪シンデレラ 歌詞より抜粋≫
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ここでは、主人公が憧れる相手の姿が具体的に描かれます。
みんなに愛されるあの子、純粋なあの子、裕福なあの子。
いいな、と素直にうらやみます。
注目したいのは、1番の歌詞との言葉の違いです。
1番では、夢は「叶うはずない」と歌われていましたものが、ここでは、あの子には「敵うはずない」と歌われます。
同じ「かなう」という音でも、意味は大きく変わります。
自分の夢の話だったものが、ここでは他人との比較の話になっているのです。
愛され、純粋で、裕福な「あの子」は、主人公が思い描く理想のシンデレラそのものなのかもしれません。
自分とは違う誰かをシンデレラだと思い込んでいる。
そこに、この主人公の苦しさがあるように感じます。
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今だって 私は弱虫で
いつだって 誰かを妬むけど
いいの いいの
この痛みこそが
とても私だもん
私はシンデレラ
唯一のシンデレラ
世界と死ぬまでは
私がシンデレラ
≪シンデレラ 歌詞より抜粋≫
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これまでの歌詞で繰り返された「いつだって」が「今だって」に変わります。
自分の弱さを、過去からの性分としてではなく、今この瞬間の自分として見つめ直しているのです。
そして主人公は、この痛みこそがまさに私なのだと言い切ります。
嘘をつき、誰かを妬み、弱くて欲張りな自分。
そのすべてから生まれる痛みを、否定するのではなく、自分らしさとして抱きしめるのです。
ラストで、主人公はついに自分こそがシンデレラだと宣言します。
それも、ただのシンデレラではなく「唯一の」シンデレラです。
誰かに選ばれて物語の主人公になるのではありません。
醜さも痛みも抱えた自分のまま、自分の物語の主人公になる。
ガラスの靴も魔法もないけれど、この世界で生きている限り、私が私のシンデレラなのだ。
そんな力強い決意で、曲は締めくくられます。
Mrs. GREEN APPLE「シンデレラ」が描く、痛みを抱きしめる私だけの物語
Mrs. GREEN APPLE「シンデレラ」は、清らかなヒロインにはなれない「私」が、嘘も嫉妬も弱さも抱えたまま、自分だけのシンデレラになる一曲。華やかなサウンドの奥にある本音に、きっと自分を重ねる人も多いはず。
誰かと比べて落ち込む日があっても大丈夫。
最後に自分こそがシンデレラだと胸を張った主人公のように、ありのままの自分で、あなただけの物語を歩んでいきましょう!
【Mrs. GREEN APPLE PROFILE】 大森元貴 (Vo/Gt) 若井滉斗 (Gt) 藤澤涼架 (Key) 2013年結成。2015年EMI Recordsからミニアルバム「Variety」でメジャーデビュー。 以来、毎年1枚のオリジナルアルバムリリースと着実なライブ活動を続け、2019年12月から行われた初の全国アリーナツアー「エデ···
