「森のくまさん」大人になって気づく歌詞の不可解さ

『森のくまさん』は、誰もが一度は口ずさんだことがある童謡ではないでしょうか。
森の中で出会ったくまさんとのエピソードを、明るいメロディーに乗せて描いています。
しかし、大人になって歌詞を改めて読み返してみると、とても不思議な感覚を覚えます。
「お逃げなさい」と、くまさんが言ったのに、後からついてくるのです。
そもそも怖い熊と森の中で出会うなんて、今の日本ではとても危険です。
『森のくまさん』の歌詞を「怖い」「歌詞が変」「意味不明」と感じる人が多いのも頷けます。
なぜ、このように歌詞が不可思議なのでしょうか。
実は『森のくまさん』には原曲があり、翻訳の段階で、歌詞の内容に相違があるからです。
まずは、一つ一つの歌詞の意味から深く紐解いていきます。
「森のくまさん」なぜ追いかけてくる?

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あるひ もりの なか
くまさんに であった
はな さく もりの みち
くまさんに であった
≪森のくまさん 歌詞より抜粋≫
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森の中、くまさんとの出会いのシーンです。
ほのぼのとしたメロディーに乗せて歌われる歌詞は、子どもの頃の記憶を蘇らせてくれます。
「くまさん」という言葉から、まったく熊を怖いものとは感じていない様子が窺えます。
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くまさんの いうことにゃ
おじょうさん おにげなさい
スタコラ サッサッサのサ
スタコラ サッサッサのサ
≪森のくまさん 歌詞より抜粋≫
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くまさんは、なぜお嬢さんに「お逃げなさい」と言ったのでしょうか。
それは、この森の中は危険だから逃げなさい、と警告するためだと考えられます。
森の中にはたくさんの動物がいて、お嬢さんが襲われるかもしれないと、くまさんは思ったのでしょう。
そして、その危険な動物の中に自分も入ると、くまさんは自覚しているのかもしれません。
その他にも崖やデコボコした道など、森の中には危険がいっぱい。
だから、くまさんは「お逃げなさい」と言ったのではないでしょうか。
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ところが くまさんが
あとから ついてくる
トコトコ トッコトッコト
トコトコ トッコトッコト
≪森のくまさん 歌詞より抜粋≫
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くまさんが「お逃げなさい」と言うとおりに、「スタコラサッサッサッのサ」と逃げたお嬢さん。
それなのに、くまさんが「トコトコトコ」とついてくるではありませんか。
この3番の歌詞が、怖いと言われるポイントです。
なぜ、くまさんはついてくる?もしかして、お嬢さんを襲おうとしている?と、怖く感じる歌詞です。
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おじょうさん おまちなさい
ちょっと おとしもの
しろい かいがらの
ちいさな イヤリング
≪森のくまさん 歌詞より抜粋≫
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くまさんがお嬢さんの後をついてきた理由が、4番の歌詞でわかります。
お嬢さんが落とし物をしたからです。
お嬢さんは、くまさんの「お逃げなさい」という言葉を聞いて、慌てたのかもしれませんね。
逃げる時にイヤリングを落としました。
くまさんは、それを拾ってお嬢さんに渡そうとしてついてきていたのです。
くまさん、やさしいですね?
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あら くまさん ありがとう
おれいに うたいましょう
ラララ ラララララ
ラララ ラララララ
ラララ ラララララ
≪森のくまさん 歌詞より抜粋≫
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お嬢さんは、落とし物を拾ってくれたくまさんに、お礼として歌をプレゼントします。
なぜ歌うの?「ありがとう」の言葉だけでもいいのでは?と、思いますよね。
歌詞を遡ると、くまさんは、この森から「お逃げなさい」と言っているのだから、早く逃げればいいのに歌うお嬢さん。
その矛盾も『森のくまさん』を変な歌、歌詞が意味不明すぎると感じる理由の一つだと思います。
『森のくまさん』の歌詞は、森の中でくまさんと出会い、落とし物を拾ってくれたくまさんに、お嬢さんがお礼に歌を歌うという、ハートウォーミングな物語です。
子どもたちにとっては、やさしいくまさんとの出会いの歌、というイメージが根付いていることでしょう。
しかし、大人になって歌詞をよく聴いてみると、とても違和感を抱くことが多い楽曲です。
「森のくまさん」の歌詞が怖い理由は原曲にあった

『森のくまさん』の歌詞を怖い、変、意味不明、と感じるには理由があります。
それは前述のとおり、原曲との相違です。
原曲は、アメリカで『The Other Day, I Met a Bear』『I Met a Bear』といったタイトルで、ボーイスカウトなどで歌い継がれてきたエコーソング(リーダーが歌ったフレーズを皆で繰り返す形式)です。
歌詞の内容は『森のくまさん』とは展開が少し違います。
森の中で主人公が熊と出会う
→お互い見つめ合う
→熊が「お前は銃を持ってないようだな?なぜ逃げないんだ?」と問う
→主人公は急いで逃げた
→しかし熊が追いかけてきた
→木を見つけた主人公は登って難を逃れる
→教訓「テニスシューズを履いた熊には気をつけろ」
→「これでおしまい」しかし、なんのために歌ってるんだ?
原曲では、熊とのサバイバルがコメディーとして描かれているのです。
森の中で銃を持たずに熊と遭遇するのは、とても危険なこと。
もし主人公が銃を持っていたら、熊の方が逃げ出していたのかもしれません。
熊の足の速さは時速40〜60㎞と言われ、人間の倍ほどです。
その足の速さを素足ではなく、シューズを履いた熊として例えて、脅威を伝えています。
間一髪、熊から逃れた主人公、俺はなんで歌ってるんだ?というオチです。
このように原曲では、コメディーをからめて熊の怖さを伝え、銃を持たずに森へ入らないようにと警告していることが分かります。
熊から逃げる理由がはっきりと存在していますよね。
しかし、『森のくまさん』では、熊から逃げる理由が明確になっていません。
ですから、歌詞を怖い、意味不明、変、と不思議に感じてしまうのでしょう。
アメリカの原曲を元に『森のくまさん』には日本語詞がつけられました。
日本はアメリカのように銃社会ではないので、銃を用いた展開は説得力がない。
だから、なんとなく熊から逃げる、というあやふやな歌詞になってしまったのかもしれません。
本来、追いかけてくる熊=怖い、といった解釈が、落とし物を届ける親切なくまさんといった展開の『森のくまさん』。
原曲では熊の怖さを描いた歌詞。
翻訳する際に、子どもたちが怖がらないようにと配慮した結果、逆に意味不明の怖さを醸し出してしまったのかもしれませんね。
摩訶不思議な童謡「森のくまさん」が描く熊への警告

『森のくまさん』は、誰もが知る童謡ですが、歌詞の内容を深く紐解くと、展開が変だと感じるところが多々あります。
くまさんが「お逃げなさい」と言ったのにもかかわらず、ついてくるなど意味不明な歌詞が並び、解釈に困難を極める楽曲です。
しかし、それには理由がありました。
原曲との解釈の相違です。
アメリカの原曲『The Other Day, I Met a Bear』『I Met a Bear』は、熊の驚異をコメディーチックに描いており、翻訳されたのが『森のくまさん』です。
『森のくまさん』では、日本では禁止されている銃の話を描かなかったため、展開があやふやになっています。
子どもたちを怖がらせないようにと描いた歌詞は、親切なくまさん、優しいくまさんといったイメージを植え付けました。
しかし、その結果、お嬢さんがくまさんから逃げる明確な理由が明かされず、歌詞が怖い、変、意味不明といった摩訶不思議なものになっています。
大人になるにつれ、かわいらしい歌の中にある、隠された事実に気づいていくものなのかもしれません。
近年、熊の被害が多発している日本。
原曲での警告どおり、そして『森のくまさん』での「お逃げなさい」という歌詞のとおり、熊と遭遇したらまずは逃げることを肝に銘じておきたいですね。
